軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

399話 不憫な人です!

行動は迅速に、が調査員の決まりなんだろうか?

ナルガスさんと話をして2時間後。

ベッドの上に睡眠薬で眠らされているナルガスさんの仲間の3人。

何だろう、右端の人の額が少し赤いような……気のせいだよね、きっと。

「アイビーさん、お願いしていいかな? でも決して無理だけはしないで欲しい。無理なら無理でいいんだ。こうなったのは俺たちの失敗だから」

ナルガスさんが、仲間の1人の手をギュッと握る。

苦楽を共にした仲間の全員を助けたいはずなのに。

「分かりました。でも、ソルとソラが大丈夫だと言ったので、私はそれを信じます。ソル、ソラ、頑張ってね!」

「ぷっぷぷ~」

「ぺふっ」

ソルがぴょんと、ベッドで寝ている1人に近付く。

それを縦に揺れながら見送るソラ。

心配そうに見ているナルガスさんにはとても言いづらいのだが、2匹はとっても楽しそうなんだよね。

お父さんもそれに気付いているようで、2匹を不思議そうに見ている。

ジナルさんたちは村の情報を集める為に、この場を離れている。

魔法陣による術に再度かかるのではと不安だけど、ソラとソルは心配ないと言っていた。

「お父さん、ソラもソルも魔法陣の事を知ってそうですよね」

「そうなんだよな」

「俺もそう思いました。スライムは皆知っているんでしょうか?」

「「…………」」

ナルガスさんの質問にお父さんと黙り込む。

正直、ソラもソルも普通のスライムからは逸脱していると思う。

一般的なスライムと同じところを探すと、ゴミの処理ぐらいしか思い浮かばない。

まぁ、そのゴミの処理も有機物と無機物を一緒に処理するので、同じと言っていいのかは分からないが。

「どうだろうな? ソラもソルも特別だから」

「レアスライムって事ですか?」

「それ以上だと言っていいだろう」

お父さんの言葉に頷く。

「レアスライム以上、だからアイビーさんとこんなに仲がいいんですかね? この村でも何度かスライムを見ましたが、テイマーに懐いている子は見たことがありません」

「それはテイマーとの関係が出来ていないからですよ」

私の言葉に驚くナルガスさん。

「えっ? そうなんですか?」

「はい」

「そう言えば、小さいころに父が紹介してくれたテイマーとこの村で知り合ったテイマーって雰囲気が違ったな」

そっとナルガスさんを窺う。

ジナルさんの話をしているけど、嫌悪感は無いみたい。

やっぱりさっきのジナルさんを見て、ちょっと心境が変わったのかな?

「あの……」

「はい?」

ナルガスさんが眉間に皺を寄せて自分の手を見つめている。

何か訊きたい事があるみたい。

「どうした?」

お父さんの言葉に、ぐっと唇に力が入るのが分かった。

そして視線をお父さんと私に向ける。

「父はその……どんな人に見えますか?」

真剣な顔をしているから、何事かと思っちゃった。

ジナルさんか……。

「そうですね。掴みどころが無く、考えが読みにくくて、人で遊ぶところがあって、弱みを見せたら追い詰めてきそうですよね。あと……残酷だと思われる事も出来る人」

「アイビー、それはどうなんだ?」

「えっ? でも、そんな感じがするけど」

「まぁな」

きっと調査員という仕事は想像以上に過酷だと思う。

その人のこれからの人生を左右するんだから。

「やっぱり」

ナルガスさんの表情が少し曇る。

「それでもって、仲間思いで、家族思いで、ナルガスさんが大好きです」

「えっ?」

「でも仕事との板挟みになって身動きが取れなくなってますね。あと父親としての矜持が邪魔をして、素直になれない不器用な人って感じでしょうか」

「「…………」」

「あと、仕事においても家族においても完璧を目指しているような、ちょっと理想が高すぎるというか。その事で自分の首を絞めまくっている状態というのか……なんだろう、ちょっと不憫な人?」

「えっと、不憫?」

「そうですね。私がジナルさんを一言で言うなら不器用より、不憫な人ですね」

うん、この言葉がぴったりだと思う。

仕事に対して責任感がかなりあるのは、なんとなく感じた。

それがナルガスさんとの係わり方に影響を及ぼしている事も。

それをどうにかしたいのに、父として、調査員としての矜持が邪魔をする。

もっと気軽に考えたらいいのにな。

でも、それがジナルさんなんだろうな。

「アイビーは人を良く見ているよな」

生き残るために必要だったからね。

揉め事に巻き込まれないために、不穏な人には近づかない。

何より大切な事だったから。

なのに、色々関わっているよね。

最近は、逃れられない何かがあるような気さえしている。

そう言えば、ナルガスさんが静かだな。

「ナルガスさん?」

仲間のベッドの近くに座っていたナルガスさんを見る。

なぜか、肩が揺れている。

何か不味い事でも言ったかな?

「ぷっ、くくくくっ」

笑ってる?

「父が不憫って……あはははっ」

どうやらツボに嵌ってしまったみたい。

椅子の上でお腹を抱えている。

そんなに笑えるかな?

「父にそんな事を言う人を初めてみたよ」

「そうですか? お父さんはどう思った?」

「ん~、似たような感想だな」

やっぱり。

お父さんと私って似たような感覚持っているもんね。

「そうなんですか?」

「あぁ」

「たぶんガリットさんとフィーシェさんもそう感じていると思うよ。もっと辛辣かも」

あの2人だからね。

ナルガスさんがふ~っとため息を吐く。

ソルが、1人目の術を解き、2人目の頭を包み込んだ。

ソラも1人目を包み込むと、傷を癒し始めた。

順調みたい。

よかった。

「昔、仲良くしてくれた上位冒険者がいたんです。俺にとって、理想の冒険者で。でも、なぜか資格が剥奪されてしまって。あの人、それからどんどん荒れていきました。父にお願いしたんです「助けてあげて欲しい」と。でも、父はけして手を貸すことは無くて、それどころか突き放した。それがどうしても許せなくて。あの人が町から消えて、しばらくしたら父が資格の剥奪に関わっていたと噂を聞いてしまって、確かめたら「そうだ」と。それからすぐに町を飛び出しました」

「ジナルの仕事は知ってるのか?」

「その時は知りませんでした。でも、今は何となくそうなのかなと」

「そうか」

微妙な静寂が部屋に広がる。

「ぺふっ」

ソルの鳴き声に視線を向けると3人目の頭と顔を包み込むところだった。

順調に術を解放していっているみたい。

ソラはまだ1人目だ。

やはり時間が掛かってる。

「治癒に掛かる時間が長いな。ナルガスさんの時も思ったが」

お父さんの言葉に頷く。

「そうだ、お父さん」

「どうした?」

「この次はギルマスさんで、その次が団長さんかな?」

とりあえずこの村のトップを仲間にしないと、ジナルさんたちも動けないだろう。

ギルマスさんは話を聞く限り術に嵌っている可能性が高いから、こっちが先だよね。

問題は、病気だという団長さん。

「病気?」

あれ?

それはフレムの専門じゃなかった?

フレムの赤いポーションは病気を癒してくれる。

「フレムポーションで治るかな? 試す価値はあるよね」

「アイビーさん?」

「ん? どうしました?」

ナルガスさんが、心配そうに私の様子を窺っている。

もしかしてソラたちに何かあったのかと、視線を向ける。

「あっ。2人目に入りましたね」

ソラが2人目の癒しに入っていた。

1人目の様子をお父さんが見ている。

「お父さん。どう? 大丈夫そう?」

「見た目はな。あとは起きないと分からないな。睡眠薬はどれくらい仕込んだんだ?」

お父さんの言葉にとりあえずホッとする。

あとは睡眠薬が切れてからか。

「あまり長い時間は眠らせる必要がないと聞いたので、3時間で切れるようにしました」

「そうか」

という事はあと2時間後には皆の状態が確認できるって事だね。

「ただ、最初に術を解いてもらったピアルは薬の切れが早いので予測が難しいです」

ピアルさんはいつ起きてもおかしくないって事か。

なんだかちょっと緊張するな。