軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

390話 呪われた過去の遺産

「お父さん、どうしよう?」

操られているなら解いた方がいいだろうけど、どうやって?

「ん~、とりあえず、テントから出て話をしようか」

「うん」

テントから出るとジナルさんしかいない。

それに首を傾げる。

「他の2人はまだ調べている最中か、もしくは飲みに行ったな」

「そうですか」

やはり危機意識が薄いな。

「ところでどんな用事でここに?」

「あ~、不快な思いをアイビーとドルイドにさせてしまったのに、昼間はしっかりと謝れていなかったと思ってな。悪かった」

ジナルさんが私とお父さんに向かって頭を下げる。

お昼もしっかり謝ってもらった気がするけど。

「気持ちはしっかり受け取っているのでもういいですよ。私も心配してくれているのに気付かなくてごめんなさい」

「いやいや。アイビーが頭を下げる事じゃないから」

お父さんが椅子を勧めるのでお茶を用意しようとするが、ジナルさんが首を横に振る。

遅いからもう帰るそうだ。

ん~、1人で行動している今がいい機会のような気がするな。

テントに引っ張りこんで、ソルを頭にかぶせちゃおうかな?

「アイビー、何かよからぬ事を考えてないか?」

お父さんの眉間に深いしわが刻まれる。

そっと視線を外す。

そんな事ないと思うけどな。

「ここは思い切って」

「はぁ~。アイビーが何を考えたか何となくわかるが」

「またとない、いい機会だと思うよ?」

だってジナルさんが1人で目の前にいるんだから。

機会はそうそうめぐってくるわけでは無い。

だったら、その機会を逃すのはもったいない。

「どうしたんだ?」

「あ~、ジナル。今、森で問題が起こっているよな?」

「あぁ、そうだな」

「それを踏まえて、周りを見て違和感を覚えないか?」

ジナルさんがお父さんの言葉に首を傾げながら周りを見渡す。

じっとその様子を見るが、何かに気付いた様子は無く不思議そうな表情をする。

やはり切っ掛けだけでは術は解けないようだ。

「何もないが?」

「そうか。仕方ないか」

お父さんが小さくため息を吐く。

ジナルさんは困惑した表情でお父さんと私を見比べている。

「ジナルさん、ちょっと待っててください。大切なお願いがあるので」

とりあえず、仲間を増やさない事には身動きが取れないからね。

ソルとお父さんに頑張ってもらおう。

不意打ちだったら何とかなるはず、きっと。

テントに戻りソルの傍によって、小声で話す。

「ソル、お願いがあるの。術を解いて欲しい人が入ってくるから、解いてくれる?」

私の言葉に小さく「ぺふっ」と鳴くソル。

あれ?

そう言えば、テントの中で鳴かないようにお願いしていたのに、鳴いてる。

いつからだっけ?

あっ、今はそれどころじゃないな。

「えっと、いきなり覆いかぶさったら暴れるよね? どうしよう」

お父さんが押さえてくれるかな?

きっとそのつもりだよね?

作戦について話せないのがつらいな。

「にゃうん」

ん?

シエル?

「シエルもお手伝いしてくれるの?」

「にゃうん」

お父さんとシエルで、抑え込むのなら何とかなるかな。

私も出来る事があれば参加すればいいしね。

「シエル、ソル。頑張ろうね」

私の言葉に、プルプルと揺れる2匹の頭を順番にやさしく撫でてから、気合を入れてジナルさんを呼びに行く。

「ジナルさん」

テントから顔だけを出す。

ジナルさんが不思議そうに私を見ている。

「少し込み入った話になるので、テントの中にどうぞ」

私の言葉にお父さんが小さく苦笑をした。

ジナルさんは少し戸惑ったが、テントの入り口をお父さんが開けて待つと、おそるおそる中に入ってきた。

さて、ここからどうしよう。

「見た目以上に広いな」

「てっりゅりゅ~」

「ぷっぷぷ~」

「へっ? えっ! この子たちってレアスライム?」

ジナルさんは、急に目の前に飛び出してきたソラとフレムに驚き、そして両膝をついて2匹をじっと見つめる。

ソラとフレムもジナルさんをじっと見上げている。

「ジナル、悪いな。悪い事にはならないから。あとで謝罪するし」

さっと縄をジナルさんに巻き付けるお父さん。

すごい手慣れてる。

「はっ? おい! ぐふっ」

いつの間にかジナルさんの近くにいたソル。

お父さんが縄をかけ終わると、ジナルさんの頭全体を包み込んだ。

少しバタバタと暴れたが、ガクッと力なく倒れるジナルさん。

慌ててお父さんが抱き留め、ゆっくりと横にする。

「ものすごく悪い事をしている気分になるね」

私の言葉にお父さんが苦笑を浮かべた。

あれ?

ジナルさんの太ももを見ると、シエルが巻き付いている。

すごい連携だなっと思わず手をパチパチ叩いてしまった。

「あっ、ソラとフレムもありがとう。ばっちりだったね」

ソラとフレムが嬉しそうにプルプルと揺れる。

シエルはジナルさんの太ももからそっと離れると、ぐっと体を伸ばした。

「アイビーは思い切りがいいな」

「いや、だっていつも3人だし。この機会逃したら駄目! って思って」

「まぁ、そうなんだが」

「それにお父さんだって同じこと考えたくせに」

お父さんを見ると、にこりと笑い肩を竦めた。

「確かに、手段を選んでいる時間は無いと思ったよ。ただ、彼らが調査員という立場だから迷った。調査員は王家とも関わりがあるらしいからな。アイビーの事を知られる可能性が高くなる」

なるほど、その心配があるのか。

私の事が知られたら、ソラたちの事も知られる可能性が高いもんね。

「でも、ここで死んだら心配も意味がないから」

「まぁな。魔物はすぐそこまで来ているからな。魔物の正体もいまだにわかっていないしな」

やはりお父さんは、私より色々考えているな。

私は目先の事ばかりに必死になりすぎる。

気を付けよう。

ぴょんとソルが跳ねる。

「ぺふっ」

鳴き声に視線を向けると、ジナルさんの頭から離れたソル。

もう術が解けたようだ。

「早いな」

「だね。ソル、お疲れ様」

ジナルさんの縄を解いて、お父さんと様子を見る。

じっと見ているとパチッと目があき、ガバリと体を起こして体勢を整えると同時に腰にある剣に手を掛けた。

動きが素早い。

「何をした?」

ジナルさんから、殺気が襲い掛かる。

さすがにちょっと怖い。

「もう一度、質問するな?」

すっとお父さんが私の前に来る。

「こちらの質問に答えろ!」

「森で問題が起きているが、それを踏まえて先ほど見た広場の様子に違和感を覚えないか?」

お父さんがジナルさんの質問を無視して問いかける。

それに殺気が増す。

うわ~、失敗したかな?

「ジナル。これは重要な事だ。少しでいいから考えてくれ」

「ちっ」

少しの間、沈黙が続く。

「あっ? 何だ? なんであいつら……いや、俺も一緒か?」

ジナルさんの戸惑った声が聞こえる。

そっとお父さんの背から顔を出す。

じっと見ていると、視線が合う。

その視線には混乱と困惑が見られる。

「どういうことだ?」

「とりあえず、落ち着いて座ってくれ」

お父さんの言葉に剣を握っていた手を放し、その場所に座る。

私はお茶の用意をするためにテントから出る。

準備を整えてテントに戻ると、青い顔色のジナルさんがいた。

お茶を目の前に置く。

「どうぞ、落ち着きますよ」

「あぁ、ありがとう」

ゆっくりお茶を飲むジナルさん。

温かいお茶が少し気持ちを落ち着かせたのか、大きく深呼吸をしてお父さんを見た。

「話は分かった。今、俺たちがどれほど危険な状態なのかも」

「あぁ、それで聞きたい。『風』は魔法陣についてどれくらい知っている?」

「悪いが、あまり知らないんだ。数十年前、王の命令で、魔法陣を研究していた者たちが居たらしいが、関わった者たちがことごとく不幸な死を迎えたから、研究は途中で頓挫したらしい。今では、王族やその周辺では、魔法陣は呪われた過去の遺産と言われている」

呪われた過去の遺産なんだ。

「村や町で時々発見されるが、関連するすべての書類は極秘裏に回収されているはずだ」

という事はサーペントさんを捕らえていた魔法陣を描いた紙も回収されたのかな?

呪われているなら、とっとと回収された方が安心だよね。

「ただ、魔法陣が発見されたという報告が無い限り、分からないんだけどな」

ジナルさんが、お茶を飲んで神妙な表情を見せる。

そしてテントの中を見渡す。

ソル、ソラ、フレム、シエルをじっと見つめて、お父さんを見る。

「レアスライムか?」

「あぁ、アイビーがテイマーなんだ」

ジナルさんが私を見ると、頭をぐっと下げた。

「ありがとう。助かった」