軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 ドルイドさんの決断2

「よかった。これが無駄にならずに済んだようだ」

フォロンダ領主が持っていたバッグから書類を取り出し渡された。

確認すると、親子になるための書類が調えられていた。

用意していたのか、しかも……。

「あの、証人欄の名前なんですが、多すぎませんか?」

証人は2人でいいはずなんだが、なんで8名も書かれているんだ?

しかも一番最初はフォロンダ領主だし。

「これでも賭けで勝った者だけに絞ったんだぞ」

だったら、もう少し絞ってくれてもいいはずだが。

いや、名前を見る限り諦めそうにない者たちばかりだな。

しかも、これ全員英雄というすごさ。

「アイビーの周りはすごい人物の集まりですね」

「そうだな。その証人欄を見ていると実感するな」

「フォロンダ領主も含まれてますから」

俺の言葉に笑って酒を飲むフォロンダ領主。

「そうだ。未来のアイビーのお父さん、娘さんの婿候補に俺の息子はどうだろう?」

「お断りします! アイビーにはまだまだ、まだまだ早いです」

「っち。駄目か」

「舌打ちって……」

って、まだ父親になれると決まってはいないが。

……まだ決まっていないんだよな。

明日、アイビーと話してお互い同じ気持ちなら親子に……やばい、緊張してきた。

「あははは、今から緊張してどうするんだ?」

「分かっているんですが、話すのだと思うと……やばい」

あ~、本当に緊張してきた。

断られたら、絶対に微妙な空気になるよな。

それで旅なんて続けられるか?

いや、断られると決まったわけではないし。

アイビーとはいい関係を築けていると思う。

築けているから大丈夫のはず、たぶん。

きっと。

「ぷっ、大丈夫だ。そんな心配そうな顔を…ふふっ、するな。くくくっ」

フォロンダ領主が笑いながら酒を飲む。

ついでに空になっていた俺のコップにも酒を注いでくれる。

軽く頭を下げて酒を煽る。

「さて、そろそろお開きにするか。アイビーにも飲み過ぎるなと注意されてるからな」

「十分飲んでいる気もしますが」

机の上には空になった酒瓶が4本。

1本増えている。

「そうか? まだまだ飲めるぞ」

「強いんですね」

「そうだな。あ~そろそろ戻らないと……面倒くさいな」

なんだ?

何が面倒なんだ?

コンコン。

「すみません。フォロンダ領主様に迎えが来ているのですが」

「はい、すみません。すぐ行くと伝えてください」

うわっ、話し方が戻った。

「わかりました」

フォロンダ領主が俺を見て肩を竦める。

「貴族の世界は面倒くさい世界なので。話し方1つでグチグチと」

「関わり合いになりたくない世界ですね。今日はありがとうございました」

フォロンダ領主に頭を下げる。

彼のおかげで覚悟が決まった。

「いい報告をお待ちしています」

「そうなればいいですが」

こればかりはアイビーの気持ちの問題があるからな。

「きっと大丈夫ですよ」

宿の出入り口まで見送り、借りていた部屋をチッカルさんと一緒に片付ける。

「場所を提供していただきありがとうございます」

「いやいや、フォロンダ領主様ならいつだって何度だっていいです」

本当に彼を尊敬しているんだな。

まぁ、ほとんどの貴族は俺たちのような村人や町人に態度が悪いからな。

昔よりは随分ましになったそうだが。

片付け終わると、アイビーが寝ている部屋に戻る。

そっと開けると、シエルとソラが起きてこちらを見た。

「ただいま、起こして悪かったな。寝ていてくれていいぞ」

俺の言葉にプルっと震えてすぐに寝る2匹。

椅子に座り、フォロンダ領主から貰った書類を見る。

マジックアイテムの紙に書かれた親子申請書類。

空欄なのは俺とアイビーが名前を書く場所のみ。

他のすべての欄は埋まっている。

これに俺たちが名前を書いて、自警団の国民登録所に提出して認証されれば国に認められた親子になれる。

証人欄に貴族の名前があるので、すぐに認証されるだろう。

「はぁ~、緊張して寝られない……」

…………

「ん? あれ? 寝てたのか?」

朝方まで寝られなかったのだが、少し寝ていたみたいだ。

うっ、椅子に座ったまま寝てしまったから、体がギシギシいってる。

「はぁ~」

「ドルイドさん? えっ! 朝まで飲んでたの?」

欠伸をしながらベッドに座るアイビー。

俺がすでに起きていたので、朝まで飲んでいたと思われたらしい。

確かに以前1回、そんな事があったな。

「いや、昨日は夜中に解散になったよ」

「そうなの? だったら……大丈夫? 随分疲れた表情をしてるけど」

そんなにひどい表情をしてるのか?

「大丈夫だ」

「そう?」

「少し話があるんだ、良いか?」

あっ、朝食後の方がよかったか?

「どうしたの?」

目の前の椅子に座ったアイビーの顔を見る。

「昨日、フォロンダ領主に聞いたんだ。アイビーの両親の事」

「えっ」

「村人を殺したことなどが認められて、死ぬまで解放される事はないそうだ」

「そっか」

アイビーは1回頷くと、うつむいてしまった。

親が人を殺したというのは衝撃だろうな。

親子になりたいという話は、今日は止めた方がいいか?

いや、でもこれはいい切っ掛けになるし……。

ふ~、落ち着け。

「それで、これは俺からの提案なんだが」

あれ?

今、アイビーの体が揺れた?

怯えている?

いや、怯える要素は何もないよな?

「えっと、俺と本当の家族にならないか? 国に認めて貰って」

違うだろう。

国に認めてもらって本当の親子って言いたかったのに……。

緊張で無茶苦茶だ。

落ち込んだ気持ちでアイビーを見ると、涙をため唖然とした表情で俺を見ていた。

泣いてる?

その表情を見て頭が真っ白になる。

もしかして嫌だった?

「もちろん嫌だったらいいんだ」

どうしよう。

俺も泣きそう。

「ちがう嫌だなんて。本当に?」

「もちろんだ」

「だって……」

なんだかいつものアイビーと違う。

「アイビー?」

なんでそんなに不安そうなんだ?

親子になる事を嫌がっているわけではないみたいだけど。

「私……犯罪者、人殺しの娘だよ? だから迷惑になるかもしれない」

えっ!

なっ、何を言っているんだ。

「アイビー、それは違う。確かにアイビーの両親は罪を犯した。でもそれはアイビーには関係のない事だ。それに奴らにとってアイビーは死んだことになっている」

そもそも親が犯罪者だからといって、子供がその罪を背負うことは無い。

アイビーだって、奴らに命を狙われたのだから被害者だ。

確かに、何かを言う人間はいるだろうが、そんな屑は無視すればいいし何かしてくるなら俺が守る。

「えっ? 死んだことに?」

「オグト隊長がそういう事にしたらしい」

「……そうなんだ。知らなかった」

座っているアイビーの傍に近づき頭を撫でる。

もしかしてずっと犯罪者の娘であることで苦しんでいたのか?

「ごめんな、気付いてやれなかった」

首を横に振ったアイビーは、そっと俺を窺うように見てくる。

そして何度か口を開ける。

「どうした?」

「さっきの話は本気?」

「もちろんだ。本物の親子になろう?」

俺の言葉にふわりと笑みを浮かべるアイビー。

その顔は初めて見る、本当にきれいな笑顔だ。

「へへっ、嬉しい」

「よかった~」

「えっ! ドルイドさん?」

力が抜けたように、アイビーの傍で力なく床に座り込む。

それに驚いたアイビーが椅子から降りて、顔を覗き込んでくる。

「断られたらどうしようかと、ずっと緊張してたんだ。はぁ~、よかった」