軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

357話 再教育

枝に飛び乗る競争はシエルが優勝で終わった。

ソラとフレムはちょっと不服そうだけど、楽しめたのか機嫌は良い。

「そろそろ帰るか」

「そうだね」

「なんだか、今日1日でいろいろ考えが変わりました」

アシュリさんの言葉に首を傾げる。

どういう意味だろう?

「罠を仕掛ける時に来てたけど、アイビーとソラたちが遊ぶのを見たのは初めてだったか」

「はい」

そうだったかな?

でも、罠を仕掛けている時もソラやフレムたちは自由に遊んでいたけどな。

あっ、アシュリさんはシエルに必死だったか。

「テイマーってすごかったんですね。いや、アイビーさんがすごいのか」

「アイビーがすごいんだろう」

2人を見ると本心みたいだけど、私の何がすごいのか全く分からない。

「ぷ?」

「どうしたの?」

ソラの声に視線を向けるとソラはアシュリさんをじっと見ている。

これは、何かするな?

アシュリさんを見るとドルイドさんと話をしていて気づいていない。

これは注意をした方がいいかな?

どうしよう。

「ぷ~!」

あっ、行っちゃった。

ソラは一気にアシュリさんに近づくと頭を目がけて飛び跳ねる。

それに驚いたアシュリさんが後ろに下がろうとして、転んだ。

「あ~」

「おっと、ソラ。それは彼にはまだ早いよ」

「ぷ~」

「な、なんですか?」

アシュリさんが慌てているのに、のんびり話をするドルイドさんとソラ。

そう言えばドルイドさんもソラの遊びに付き合えるようになったな。

「アシュリさん、大丈夫ですか? ソラがちょっと……懐いただけです」

からかったとかおもちゃにしたと言ったら失礼だよね。

「はぁ、そうなんですか?」

ものすごく楽しそうにしているソラを見て首を傾げるアシュリさん。

ドルイドさんは私の言葉に苦笑した。

「さて、本当に戻るか。ソラも遊ばないの」

「ぷ~」

足元に来たソラを抱き上げる。

そう言えば、ソルはどうしたんだろう?

周りを見てドルイドさんの頭を見る。

髪に埋もれているソルがいる。

ずっとそこにいたのか。

「ん? ソルか?」

「うん。寝てるね」

「そうなんだよ。髪に絡まっていて取れない」

髪に絡まる?

ドルイドさんに頭を下げてもらってソルを見る。

本当だ、なぜかソルの体から突起のような物が出て、それに髪が絡まってる。

「ソル、バッグへ戻ろうか。村へ戻るから」

「ぺふっ?」

「村へ戻るからバッグへ入ってほしいな」

「ぺふっ」

そう鳴くと突起がすっと無くなり髪から出てくる。

ソルを抱き上げて、バッグへ入れる。

「突起が出て絡まってた」

「やっぱりそうか。触った時に何か小さいものが飛び出しているのは分かったんだが」

「ソルにはまだいろいろと秘密があるね」

「そうだな」

どこまで知ることが出来るかな。

楽しみだな。

村に戻ると既に祭りの余韻も消えて日常に戻っている。

まだ少し冒険者や貴族っぽい人がいるが、それも日々減っている。

「今日は、楽しかったです。ありがとうございます」

アシュリさんの言葉に私もお礼を言う。

彼はこれから知り合いのテイマーに会いに行くと言っていた。

うまくことが運べばいいけど、どうなるかな。

手を振ってアシュリさんを見送る。

「うまくいけばいいですね」

「そうだな。テイマーとして矜持があるなら話を聞くだろう。無かったら無理だろうな」

テイマーとしての矜持を持っていない人と契約している魔物は可哀そうだな。

「あっ、フォロンダ領主だ」

「ん? 本当だ」

視線の先にフォロンダ領主と数人の男性がいた。

フォロンダ領主以外の男性たちは楽しそうだが、彼はどこか憮然としている。

何かあったのだろうか?

あっ、こっちに気付いた。

「失礼、用事がありますので私はこれで」

「えっ! しかし」

「何か?」

あっ、フォロンダ領主の怖い笑顔が出た。

迫力あるな。

「人の上に立つ人の笑顔だよな。周りを一瞬で黙らせる」

「そうだね」

男性たちと別れたフォロンダ領主が、こちらに向かって手を挙げる。

「こんにちは」

「こんにちは、何か大変ですね」

ドルイドさんの言葉にフォロンダ領主が大きなため息をつく。

本当に何か疲れているみたいだ。

「えぇ、1時間ほど奴らの自慢話に付き合わされたもので」

「あはははっ、それは」

ドルイドさんが苦笑を浮かべる。

「しかも、絶対にあいつ等の手柄じゃないだろうと思うような話なんですよね。まったく冒険者の手柄を横取りして自慢するなど、馬鹿なのか屑なのか」

今日のフォロンダ領主は黒い。

「話の途中で止めるとめんどくさい事になると思い聞いていたんですが、どんどん調子に乗りやがって……調子に乗ってしまい大変でした。途中何度息の根を……ふふっ黙らせようかと思った事か」

今の言い直す意味があったのかな?

「フォロンダ領主、いろいろ駄々洩れです」

私の言葉に肩を竦めるフォロンダ領主。

まぁ、私たちで息抜きが出来たならいいか。

「失礼、アイビーさんには町にいた時にいろいろ見せてしまっているので気が抜けて」

「いいですよ。フォロンダ領主は頑張りすぎなんです。息抜きも大切です」

「そう言ってくれるから、甘えてしまうんですよね」

あれ?

護衛の人はどうしたんだろう?

犯罪組織を追っている時からずっとフォロンダ領主を守っていた人がいたんだけど。

彼と一緒の時は、ここまで黒くならなかったのに。

「今回は一緒ではないんですよ」

私が周りを見回したので、護衛の人を探している事に気付いたみたいだ。

「そうなんですか?」

「えぇ、結婚しまして。今は奥方と旅行中なんです」

結婚!

そうだったのか。

「『おめでとうございます』と言っておいてください」

「わかりました。いろいろ問題を抱えていた私の護衛をしていたため、彼の結婚が遅れてしまっていたので、今はほっとしています。奥方には随分と待たせてしまった」

フォロンダ領主は、1人で戦っていたから大変だったんだろうな。

そんな人を護衛する人も、やっぱり大変だったんだろうな。

「あっ、少し訊きたいことがあるんですが、いいですか?」

ドルイドさんの言葉にフォロンダ領主が頷く。

「フォロンダ領主の町では、ゴミの処理能力が落ちているなんてことはありますか?」

「あぁ、その問題ですか。ずっと悩みの種だったんですが、少し改善しましたね」

「えっ! そうなんですか?」

すごい、もう解決策を知ってるのか。

ドルイドさんは信頼関係が重要だというけど、それ以外の可能性もある。

話を聞いてアシュリさんに伝えないと。

「ラットルアと団長が、テイマーたちの再教育をしています」

ん?

ラットルアさんがどうして?

それにテイマーたちの再教育?

「あの、再教育って何ですか? それにラットルアさんがどうして?」

「なんでもラットルアには、すごいテイマーの知り合いがいるそうです。そのテイマーと魔物との関係性を見た時にゴミの問題の解決策を思いついたそうです」

「なるほど」

ドルイドさんが私をちらりと見る。

ん?

私?

「再教育ですが、解決するにはテイマーと魔物との信頼関係が重要だそうです。そこでテイマーがまずテイムしている魔物の事を知ることから始めているそうです」

やっぱり信頼関係?

「最初はテイマースキルのないラットルアに反発があったのですが、熟練のテイマーたちがラットルアを支持しましてね。それで徐々にテイマーたちに変化があり、それに伴い少しずつ改善されてきたんです」

「やはり信頼関係が重要なんですね」

「そうみたいですね。次の領主会でこのことを報告するつもりです。どこまで改善するかは分かりませんが、何もしないよりはいいですからね。どの村や町でも、王都でさえこの問題で頭を抱えていましたから」

本当に信頼関係が重要なんだ。

ソラたちが入っている、バッグをそっと上から撫でる。

再教育か……あれ?

どこかで再教育って言葉を見たような。

あっ、ラットルアさんのファックスで確か「テイマーの再教育でアイビーとソラとの関係性の話をしたい。名前は出さないと約束する、許可を貰えないか」と訊かれたっけ。

名前を出さないならいいかと深く考えずに許可を出したな。

すっかり忘れてた。