軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

354話 ゴミの山

「うわ~、すごい事になってるよ」

久々に来た捨て場。

祭りに来た冒険者の数がすごかったからなのか、整理されていた捨て場が今はゴミで溢れかえっている。

「すごい量のゴミだな。まぁ、あれだけの人が集まれば、こうなるか」

「うん。ゴミの山だね」

「ぷっぷぷ~」

ゴミを見て喜ぶソラ。

ちょっと複雑な気持ちになるけど、ソラにしたらご飯の山になるのかな?

だったら、この反応も当たり前か。

「にゃうん」

「ん? どうしたの?」

シエルが森の奥を見て私を見る。

これは食事に行く合図だね。

「行ってらっしゃい。冒険者は少なくなったけど、気を付けてね」

「にゃうん」

一声鳴くと、颯爽と走り去るシエル。

手を振って見送ると、じっとこちらを見ているソラたちに視線を向ける。

3匹ともちょっとソワソワしている。

可愛いな。

「ソラ、フレム、ソル。今まで我慢させてごめんね。思いっきり食べていいからね」

捨て場に勢いよく飛び込んでいく3匹を見る。

「よかった。皆元気みたいだね」

「そうだな」

前祭が始まる前から、皆には随分と我慢をさせてしまった。

そのせいか、どんどん元気がなくなっていくような気がして心配だったのだ。

でも、今日の様子を見る限りは大丈夫そうだ。

「この後はどうする?」

「皆が思いっきり体を動かせるように、森の奥に行こうかと思うけどいいかな?」

「もちろん。思いっきり遊ばせてあげよう」

「うん」

シエルが帰ってきたら、どっちの方向へ行こうかな?

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ、ぺふっ」

3匹の楽しそうな声に視線を向けると、ゴミの山の上で飛び跳ねている。

「楽しそうだな」

「そうだね」

しばらくするとゴミの山が少し崩れる。

それもまた楽しいのか、崩れたゴミと一緒にゴミの上を転がる3匹。

「あれ? ソルは?」

見えていたソルが一瞬で消える。

もしかしてゴミに埋もれたのかな?

捨て場に入り、ソルがいた場所まで行くと、ゴミの中にソルが埋まっていた。

「ソル~、埋もれてどうするの」

「ぺふっ?」

埋もれたゴミからソルを出すと、そっとゴミの上に置く。

「食事しないの? 用意していた食事は3日前に無くなっていたから、お腹が空いているでしょう?」

マジックバッグに用意していたソルの食事は3日前に無くなってしまったので、この3日ソルは食事をとれていない。

小さくなるまで我慢させることは無かったが、もう少し用意しておけばよかったと後悔していた。

じっと私を見たソルは「ぺふっ」と鳴くと、少し離れて黒いモヤモヤしたモノを浮かべ食事を始めてくれた。

ソラとフレムを探すと、ドルイドさんの傍ですごい勢いでポーションを食べていた。

2匹もある程度遊んで満足したのか、食事を始めてくれたようだ。

「それにしてもすごかったですね。あの大移動」

ソルの食事を見ながら、祭りが終わった翌日の早朝からその翌日のお昼ごろまで続いた冒険者たちや旅人たちの長蛇の列を思い出して少し笑ってしまう。

「確かにすごかったな。今までは本祭が終わった日に移動をしていたから、あんな光景を見たのは初めてだったよ」

祭りで集まった冒険者たちや旅人たちが一斉に村を発ったため、本通りから門、門からハタダ村へ続く村道とハタカ村へ続く村道に冒険者たちと旅人たちの長い長い列が出来上がったのだ。

そのあまりの長い列に、初めて見た私はすごく驚いた。

隣でドルイドさんが驚いているのにも驚いたが。

「あの長蛇の列を見たら、改めて祭りに来ていた人の多さを実感したな」

「そうだね。人が多いとは思ったけど、あれほどだとは思わなかったもんね」

周りの気配を探りながらソルの食事風景を見る。

こちらに来る人の気配はないので、まだゆっくり食事を楽しませてあげられそうだ。

「あっ」

人の気配に少し緊張するが、知っている気配だと気付く。

門から出た瞬間に気配が濃くなったので、私に知らせてくれたようだ。

「アシュリさんが来たよ」

「わかった」

しばらくすると、捨て場の入り口にアシュリさんの姿が見えた。

「おはようございます」

冒険者たちが旅立って、落ち着いたので捨て場に行っても大丈夫と教えてくれたのはアシュリさんだった。

ソルの事を説明していたので、心配してくれていたのだ。

「おはようございます。昨日は伝言をありがとうございました」

「いえ、お役に立ててよかったです」

アシュリさんがソラ、フレム、ソルを確認して周りを見る。

恐らくシエルを探しているんだろう。

「アシュリさん、ごめんなさい。シエルは今、食事に行っているんです」

「あっ、そうなんですか? 少し待っていてもいいですか?」

「もちろんです」

私の言葉に嬉しそうなアシュリさん。

「そう言えば、疲れていないか?」

ドルイドさんが、ソラとフレムにポーションを渡しながら視線をアシュリさんに向ける。

「大丈夫ですよ。まぁ、少し疲れは溜まってますが毎年の事なので」

アシュリさんの顔を見ると、確かにいつもより疲れが見える。

「俺たちはまだ時間が掛かるから座って待ってていいぞ」

「ありがとうございます。でも、しっかり寝たので大丈夫です」

「そうか? でも、無理はするなよ。そう言えば、予定より人が多かったんだろ? 村の人が言っていたよ」

「そうなんですよ。俺たちも集まってくる人の多さに驚かされました。けが人が予測されたので、それの対処で行事の内容を少し変更する事になったし。そのせいで本祭当日まで慌ただしくて。まぁ、今年も成功したので良かったですが……あっ……あの楽しかったですか?」

まだ、疲れているのかな?

途中、話し方がいつもと違った。

「もちろん、楽しませてもらったよ。ありがとう」

「私も、初めての祭りだったけどすごく楽しめました。ありがとう、アシュリさん。お疲れ様です」

ドルイドさんと私がお礼を言うと、すごく照れた表情を見せるアシュリさん。

ちゃんとお礼が言えてよかった。

「にゃうん」

「シエル?」

あれ?

まったく気配を感じなかった。

隠していたのかな?

「えっ?」

シエルの気配に気付けなかったことがショックでシエルを凝視していると、捨て場の外にいたアシュリさんも驚いた声を出した。

「どうしたんですか?」

「いや、あの……」

なんだか随分と戸惑っている?

「シエルの巨大な魔力を感じられなくて」

「にゃうん」

アシュリさんの言葉に、嬉しそうに鳴いて尻尾を振るシエル。

もしかして、スキルを持っている人の対策をシエルがしたのかな?

そんな事出来るの?

「シエル。もしかして魔力探知の対策が出来たのか?」

ドルイドさんが驚いた表情でシエルを唖然と見つめる。

アシュリさんもかなり驚いた表情をしている。

「にゃうん」

出来たんだ。

って、これってそうとうすごい事なんじゃないの?

「すごい、さすがアダンダラですね!」

アシュリさんが興奮していく。

あっ!

「皆、誰かこっちに来る。シエル、ちょっと姿を隠してくれる?」

しまった、シエルの事で少し気が緩んでしまった。

慌ただしくシエルが姿を隠す。

その間にドルイドさんがソラとフレムを、もしもの時のために用意しておいたバッグへ入れる。

私はソルをバッグへ入れて捨て場から出る。

「すごい反応ですね。それと近付いて来ているのは、自警団の俺の仲間たちのようです」

「見回りか?」

「おそらくそうだと思います」

しばらくすると、自警団の服を着た3人の男性が捨て場に姿を見せた。

「あれ? アシュリ?」

「お疲れ様です、ダッチ先輩。ここは異常なしです」

「そうか。ところで、こんな場所で何をしているんだ?」

アシュリさんが、3人の自警団の中で一番年配の男性をダッチ先輩と呼んだ。

彼はアシュリさんに頷くと、ちらりと私とドルイドさんを見る。

軽く頭を下げると、彼も頭を下げてくれたが少し警戒している様子。

「えっと……」

「アシュリ?」

「罠のための道具が欲しくて、ゴミを漁っていたんですよ」

ドルイドさんの言葉に少し思案顔をしたダッチさんは、すぐに何か思い出したのか私たちを見て笑顔を見せた。

「あなた方がそうだったんですか」

罠を使う狩りは珍しいから、ダッチさんにも知られているようだ。

ドルイドさんが苦笑を浮かべて頷いた。