軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

351話 本祭

「ありませんね」

お店の窓枠や柱の陰など細かいところまで調べていくが見つけられない。

「こうなると意地になりますよね」

フォロンダ領主の言葉に頷く私。

ドルイドさんは苦笑いだ。

あと10分で本祭が始まる、なんとしても見つけたい!

「あっ、見つけました!」

気合を入れ直していると、フォロンダ領主の嬉しそうな声が届いた。

ドルイドさんと見に行くと、小さな箱を手にしていた。

「何色でしたか?」

ドルイドさんの言葉に箱を開けて確かめるフォロンダ領主。

「残念、白ではなくこれは銀色ですね」

掌に乗せて見せてくれる色粉の団子。

確かに銀色。

「こんなきれいな色もあるんですね」

「えぇ、綺麗ですが、欲しいのは白です」

本気で残念がっているフォロンダ領主につい笑ってしまう。

つられてドルイドさんも我慢が出来ず笑いだす。

恨めしそうな表情をされたが、私もドルイドさんも笑いが抑えられない。

「すみません」

「ごめんなさい」

「いえ、いいのです。友人にも言われるんですよ。『君は何かに集中すると童心に返るよね。いい歳のくせに』と」

それは……。

ドルイドさんが口を手で押さえたのが見えた。

「さて、あと少し頑張りましょう」

フォロンダ領主の後に続こうとすると、視界に入った服屋の看板の後ろに箱が数個並んでいるのが見えた。

「あっ、あれ!」

私の声にフォロンダ領主とドルイドさんが振り返る。

「これじゃないですか?」

見つけた興奮で言葉がちょっと……まぁ大丈夫かな。

看板の後ろから箱を取り出す。

全部で5個。

どうして5個もあるのか不思議だけど、問題ないよね。

「5個ですか?」

「はい、大丈夫ですよね?」

「大丈夫だろう」

ドルイドさんが箱の中身を確認してくれる。

中身は白が2個、銀色が2個、金色が1個入っていた。

「白ですね。アイビーすごい」

「フォロンダ領主、1個どうぞ」

「えっ! いや、いいですよ」

「皆で見つけた物ですから。ドルイドさんと私は一緒に旅をしているので2人で1個。フォロンダ領主はまた別行動になるので1個です。いい事があるらしいので、旅の安全を祈って」

今回からの新しい行事なので、本当かどうかは分からないけど。

気持ちはきっと伝わるよね。

「ありがとうございます。では、確実に黒い服を着た者たちにぶつけないと駄目ですね」

ピッピッピー。

「宝探し終了です。では、只今より本祭が始まります。怪我の無いように、皆様の健康と幸せを祈り……始めます」

村中から歓声が響く。

「さて、始まりましたね。あれ? 団子をどこにやったかな?」

フォロンダ領主が肩から下げているバッグを覗いていると、後ろから声がかかる。

「はい?」

「よい1年を!」

という声とともに、私たち3人に色粉の団子がぶつけられる。

近くからなので痛くはないが、不意な事だったので驚いてしまった。

「うわっ!」

そして服にカラフルな色がつくと少し粉が舞う。

それが合図になったのか次々と団子が飛んでくる。

「これは、負けてられませんね」

勝ち負けは関係ないが、確かにやられっぱなしはちょっと嫌だ。

色粉の団子を取り出して、周りを見渡す。

確かついてない色を付けた方がいいんだよね。

……難しい!

「ごほっごほっ」

咳込む声に視線を向けると、ドルイドさんの顔に色粉が付いている。

「ドルイドさん、すごい顔になってるよ」

ドルイドさんの左の頬から首にかけて青い色粉が付いている。

「つい避けてしまったら、違う団子が顔にぶつかった」

「避けちゃダメじゃないですか」

「……とっさにな。冒険者の職業病だな」

話をしながら周りに団子をぶつけていく。

「アイビー、あれ!」

フォロンダ領主の声の指さす方を見れば黒い服!

「見つけた! 行きましょう。あっ、逃げました!」

そう言えば、黒い服の人は逃げ回るって書いてあったっけ。

フォロンダ領主とドルイドさんと私で後を追う。

数名が後を追っているのが見える。

人と人の間を抜けようとしたとき、頭に団子がぶつかる。

「わ~ごめん!」

「大丈夫です! すみません、邪魔しました!」

「黒か? 頑張れ! 行け~!」

大きな声で話しながら通り抜けると、なぜか応援された。

そうすると、気付いた人たちが道を空けてくれる。

しかも応援の声が次々聞こえてくる。

「すごいな、これは外せない」

ドルイドさんが周りからの応援に苦笑を浮かべる。

「あ゛~」

前から可笑しな声が聞こえる。

見ると、1人の男性が項垂れている。

どうしたんだろう?

様子を見ながら通りすぎる。

「白い団子は、割れにくくなってるぞ! 気をつけろ!」

割れにくい?

つまり粉になりにくいって事?

「手の中で潰して直接こすり付けましょう」

フォロンダ領主の言葉に頷く。

よし、頑張る。

「うわっ」

黒の服を着た人が立ち止まる。

どうやら反対側からも、人が来て挟み撃ちになったようだ。

追いつめた!

フォロンダ領主が手の中で白い団子を潰して、黒い服を着た人の肩に触れた。

「はい、成功。よい1年を」

「ドルイドさん、手を握って」

「ん?」

手の中で崩した白い団子をドルイドさんの手にも付ける。

それから一緒に、黒い服を着た人の腕に白い色粉を付けた。

「よい1年を」

「足、速いですね。よい1年を」

「はははっ、足の速い者がこの役に選ばれているので。よい1年を」

そうだったのか。

お礼を言ってから、残りの団子をぶつける相手を探しに行く。

走ったので疲れた。

「あっ、銀色!」

目の前の女性に銀色の団子をぶつけると、すごく喜ばれた。

「ありがとう。よい1年を」

「よい1年を」

袋の中を見ると団子が無くなっていた。

いつの間にか全てぶつけてしまったようだ。

ピッピッピー。

「本日は終了です。皆様の1年がよい年でありますように」

どこからともなく拍手が起こる。

「疲れた」

ドルイドさんの言葉に頷く。

「疲れました~」

フォロンダ領主がその場に座り込む。

「いい歳して本気で走るのは駄目ですね。足が震えてます」

フォロンダ領主の言葉に、私やドルイドさんだけでなく周りからも笑いが起こる。

周りを見ると、所々で座り込んでいる人が見られる。

「来年からはもう少し体力を付けねばな」

「おじいちゃん、来年も走りまわるつもり?」

少し離れたところから声が聞こえる。

見ると、白髪のちょっと小太りの年配の男性が座り込んでいる。

その前には、若い女性の姿。

顔付きが似ているので親子だろうか?

「当然じゃ。来年こそはあの黒い服の奴にぶつけてやる」

「もう、無理しないでよ! いい歳なのよ!」

「大丈夫、まだまだ若い」

「何を言っているんですか! いつもあちこち痛いから労われって言っているのに! 若いというなら、もう労わりませんからね!」

「ぐっ……」

笑い声がまた大きくなる。

「あはははっ、元気ですね。さて、私はそろそろ時間切れですね」

年配の男性と女性のやり取りを見て笑っていると、フォロンダ領主が立ち上がって付いた砂を落としていた。

「そうなんですか?」

残念だな。

「えぇ、これから集まりがありますからね。町を宣伝してきます」

貴族のお仕事かな?

だったら仕方ない。

「頑張ってくださいね。明日見に行きます」

「ありがとう。明日、頑張ります。ドルイドもお世話になりました」

「こちらこそ、ありがとうございます」

フォロンダ領主が自警団詰め所の方へ歩いていくのを見送る。

「さて、俺たちも宿に戻るか。この服を染めたいしな」

「うん」

体を見下ろすと、知らない間に随分と賑やかな服になっていた。

「すごいですね、あっ、この青色綺麗ですね」

脇腹辺りは、鮮やかな青が付いている。

背中は見れないが、背中にも結構当たった感触があったので、後ろもすごい事になっているだろうな。