軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334話 気にしすぎ

「なかなかぴったり合うカゴって見つからないんですね」

「まぁ、ゴミの中から探しているからな」

「そうだけど」

「俺は面白いと思うけどな。この膨大なゴミの中からぴったり合うカゴを見つけるのって」

面白いというか、かなり楽しんでいるのはわかる。

「あっ! ぴったり!」

まぁ、ぴったり重なったカゴを見つけると嬉しいから、私もついつい本気で探してしまうのだけど。

「アイビーも十分楽しんでいると思うけどな。素材探しも、罠を仕掛けるのも」

「それは否定しないけど。あっ、もうちょっと高さがあればぴったりだったのに。自分で作った罠で狩りが成功するとすごく楽しい。だからかな、素材選びも全く苦にならないのは」

失敗したら悔しいけど、その分成功したらものすごく嬉しいし楽しい。

それを知っているからなのか、捨て場で素材を探す時も何気に楽しいんだよね。

「あっ、誰かこっちに来ます。あれ?」

この気配知ってる人だ。

「アシュリさんとおそらく自警団員の仲間の方たちだと思う」

「あ~、見回りの仕事か」

こちらにまっすぐ、でもそれほど急ぐことなく歩み寄ってくる3人の気配。

しばらくすると、アシュリさん以外の人たちが私たちに気付いたのか少し早歩きで捨て場まで来た。

「あっ! この間の方たちですよね。もしかして罠の材料集めですか?」

「お疲れ様です。そうです」

自警団員の1人が面白そうに捨て場に入ってくる。

どうやら罠を使って行う狩りに興味があるみたい。

「何を集めているのですか?」

「罠を仕掛けたのですが、壊されたのでカゴの強度を上げようと思いまして。カゴを2重にして使おうかと」

「なるほど。狙いはオビツネですか?」

「そうですよ」

「魔法への対処はどうするんですか?」

「オビツネの魔法はそれほど強くないので、今は考えていません」

「確かに不意打ち以外ではあまり効果ありませんからね。彼らの魔法って」

なんだか楽しそうだな。

それはいいけど、見られているよね。

ちらりと視線をアシュリさんに向けると、バッグをちらちら見ている彼がいる。

魔力察知で、バッグの中のシエルに気付いているみたい。

まぁ、強い魔力を感じているだけでそれがシエルというアダンダラだとは思わないだろうけど。

というか、バッグの中にアダンダラがいるとはだれも考えないかな。

今の姿はスライムだけど。

ん?

スライムの姿なのに、アダンダラのような強い魔力を持っているのも駄目か。

「すごいですね!」

あっ、話を聞いてなかった。

何がすごいんだろう?

「ノベアが目標なんですね」

……ん?

ドルイドさんと自警団員さんの会話に首を傾げる。

今何か、とても不吉な事を耳にしたような気がする。

いや、やっぱりと思うべきなのか?

いやいや、ノベアって凶暴な魔物だったよね?

あれ、動物だったかな?

いや、魔物で凶暴だと言っていた。

駄目だ、ちょっと動揺している。

「いや、目標ではないよ」

よかった。

そうだよね、さすがにそんな無謀なことはしないよね。

「通過点だな。最終目標ではないからな」

何も聞こえてないったら、聞こえてない。

というか、前に見ていたあの巨大な罠を使う魔物が目標なのかな?

まさかね?

ドルイドさん、違うよね?

「アイビーさん、こんにちは」

「わっ」

「あっ、ごめん。急に話しかけてしまって」

「知り合いなのか?」

アシュリさんが私の名前を呼んだので、隣にいた自警団員さんが不思議そうな表情をする。

「あっ! そうそう、ちょっとな」

焦りすぎアシュリさん!

「はい、少しお世話になりまして。こんにちは」

落ち着いてもらえるよう目を合わせて挨拶するが、視線がちらりとバッグへ向く。

そしてすぐに首を左右に振って、私を見る。

アシュリさんの隣にいる自警団員さんが、眉間にしわを寄せてアシュリさんを見ている。

挙動不審な行動になっているアシュリさんに、小さくため息が出る。

やはり、正体不明の巨大な魔力は無視できないのかな。

なんだか申し訳なくなってくる。

「えっと、何か用事ですか?」

黙り込んでいたら不審に思われてしまう。

それでなくても、アシュリさんの隣にいる自警団員さんが首を傾げて彼を見てるし。

「あ~、いや特に話があるというわけではないんです。元気ですか?」

「はい。アシュリさんも元気ですか?」

「はい」

何だろう、この会話。

変に緊張が増すんだけど……。

「どうした?」

ドルイドさんだ!

よかった。

今、ものすごくドルイドさんに抱き着いてお礼が言いたいかも。

「なんでもないよ」

私の笑みに、苦笑いを浮かべるドルイドさん。

そして、ポンと頭を撫でてくれた。

「お疲れ様です。アシュリ団員」

団員?

あっ、そう呼んだほうがよかったのかな?

「お疲れ様です。ドルイドさん」

「では、俺たちは村に戻りますので。お気をつけて」

「あっ、はい。ドルイドさんたちもお気をつけて」

ドルイドさんと会話している間も、私の下げているバッグへとちらちら視線が向く。

気になりだすと止まらないって奴かな。

……そんな言葉あったよね?

無かったかな?

「お仕事、頑張って下さい」

アシュリさんたち自警団員さんに声をかけて村へ向かう。

背中に何となく視線を感じる。

「ぷっくくく。あれは、そうとう我慢してるな」

「うん、さすがにちょっと見てて可哀そうだった」

「早めに会いに行くか?」

「そうだね」

昨日の夜、ソラたちにアシュリさんのスキルの魔力探知の事を説明した。

そして、強い魔力の正体がわかっていないため、気にする可能性があることも。

で、気にした場合の対処法としてシエルの事を話す方がいいのか話さない方がいいのか、皆に訊いた。

結果、なぜか話す方を強くお勧めされたような気がした。

皆の声の高さから、そう感じた。

アシュリさんの事が気に入ったのかな?

「夕飯を食べた後に詰め所に行ってみるか? それとも伝言を頼んでおこうか?」

「どっちがいいだろう?」

なるべく目立たない方を選びたいな。

アシュリさんが特殊なスキルを持っているのを知っている人が多いだろうから、彼に興味を持たれているとは気付かれたくない。

どうして興味を持ったのかという話になったら困る。

「商業ギルドに行ってから考えるか」

「そうしよう。まずはシエルがくれたオビツネを売りに行こう」

アシュリさんは気になるが、オビツネの売値も気になる。

野兎の3倍の大きさがあるけど、この村では珍しい魔物ではないようだし。

ドルイドさんの話では肉は少し特殊な香りがするようだし、あまり期待できないかな。

商業ギルドに入り、カウンターを見る。

前に取引をしてくれた女性と目が合う。

「彼女にしよう」

売値は野兎のほぼ2匹分。

やはりよく狩られるらしく、抑え目な値段だった。

「おすすめは塩焼きだけでしたね」

ついでにおすすめの食べ方を訊いてみたが、女性は塩焼きが一番だと教えてくれた。

煮込み料理は、香りが強くなって気になるらしい。

少しだけ煮込んでどうなるのか試してみたいな。

「あっ、アシュリ団員だな、あれ」

ドルイドさんの視線を追うと、肩を落としたアシュリさんの後ろ姿。

なんだか大きなため息が聞こえてきそうだ。

何かあったのかな?

「ちょうどいいな」

「そうだね」