軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

317話 姉妹の村

「えっ? あれ?」

目の前の光景に首を傾げる。

ハタダ村に来たはず。

なのに目の前にはハタタ村の大通りの光景が広がっている。

「えっと、ハタダ村だよね?」

「あぁ、ハタダ村で合ってる」

そうだよね。

うん、ここはハタダ村だ。

でも赤い窓枠に、鮮やかな青い扉。

あ~、頭がぐちゃぐちゃになりそう。

よし、冷静になろう。

えっとハタタ村で思い出せるのは確か大通りに出たらすぐに大きな自警団の詰所があって。

……こっちにもある。

で、詰所の奥に冒険者ギルドの建物でその道路を挟んで正面に商業ギルドがあったよね。

あっ、これもあるんだ。

確かハタタ村には、自警団詰所の道路を挟んだ正面にはパン屋さんが2軒ならんでいて。

お~、並んでる。

隣の店もその隣も……。

「一緒? ドルイドさん、町並みがハタタ村と一緒だ!」

「そう、正解」

なるほど、一緒だと分かれば混乱もしないな。

あっ、門の所で感じた違和感の理由が分かった!

あれは、ハタタ村の門と同じ柄が刻まれて瓜二つだったからだ。

「でも、どうしてこんなにそっくりなの?」

うわ~、大通りに並んでいるお店の順番まで一緒だ。

確か肉屋の隣に服屋さんがあって、しかも女性用!

凄い、これも一緒だ。

横道の店や建物も見てみたけど、こちらも一緒。

どこまでハタタ村とハタダ村は同じにしてあるんだろう?

見ていると、楽しくなってくるな。

「このハタタ村とハタダ村を作った人達が、年子の姉妹だったんだよ」

「へ~、すごく仲が良かったの? そう言えば、間違いそうなほど村の名前も似てるよね」

名前も似ているし、建物の形も並びも一緒。

相当仲が良くないと出来ないよね。

「いや、2人は周りが引くぐらい仲が悪くて、会えば怒鳴り合い、時には殴り合いもしたそうだ」

「えっ? 仲が悪かった? それに殴り合い?」

姉妹で殴り合い?

昔の話だから、話が 誇張(こちょう) されているのかな?

「仲が悪いのに、まったく同じ村を作ったの? あっ、姉妹が亡くなってから村を変えたとか?」

ん?

そんなめんどくさい事するかな?

意味がないし。

「いや、2人が生きている時からだ。姉が自警団を作ったら妹が真似して、妹がギルドを作ったら姉が真似して。少しでも相手よりいいモノをって」

なるほど。

「でも、なんで同じ建物に?」

「少しでも相手の建物の方がいいと思ったら建てなおさせたらしい」

うわ~。

「毎回それだと大変だからと、大工たちが建物を建てる時は隣の村の大工たちと話し合って同じ物を建てていくことにしたそうだ。だから、同じ建物が並ぶ村が出来上がったらしい」

「なるほど」

というか、同じ建物が並ぶのは良かったのか?

仲が悪いと言われているけど、本当に仲が悪いなら近くに村は作らないよね。

もしかしたら、実際はそれほど仲が悪いわけではないのかも。

「今ではこの2つの町並みが面白いと言う理由で人が集まって来るから、継続して同じ建物を作っているらしい。細部まで結構一緒らしいぞ。そこまでは俺も調べたことはないが」

「えっ? そこまではって……少しは調べたんですか?」

何のために?

「………………師匠の命令でな。興味がわいたから調べて来いって」

「あぁ、ご苦労様です」

師匠さんか。

それなら仕方ない。

「えっと、村ってそんな簡単に作れるものなのですか?」

凄く大変そうだけど。

「王の許可が下りれば村は作れるけど、そう簡単な物ではないな。ただこの姉妹は、相当なやり手だったらしい。村の経営も人を集めるのも上手くて、姉妹の時代に村は急成長をしているんだ」

やり手なのか、凄いな。

「しかも、どちらの村にも魔物が出る洞窟が近くにあるからな。それだけでも、かなりの数の冒険者を呼べる。それを見込んでこの場所に村を作ったのだとしたら、相当な人物たちだよ」

「凄い人たちだったのですね」

「色々伝説になっている姉妹だからな」

そんなすごい人たちが作った村か。

今度ゆっくり、違いを探したいな。

「さて、今日はどうする?」

「えっ?」

「宿に泊まる? それとも、広場にするか? まだちょっと寒いかな?」

今日の泊まるところか。

風は随分と暖かいけど、日が落ちるとぐっと冷え込むよね。

でも、そろそろ広場での生活に戻したいしな。

ん~、どうしようかな。

「とりあえず、広場に行ってみるか。暖かくなってきたから冒険者たちが広場に移動しているかもな。人が多過ぎたら宿にしよう」

「うん」

冬の時期は凍死を防ぐために広場は縮小される。

どうしてもお金がない場合のみ、しっかりした対策アイテムを持っている者だけが使用を許される。

が、対策アイテムをそろえるより安宿に泊まった方が安いらしい。

なので冬の広場に人はほとんどいない。

特に今年は寒さが何処も厳しかったらしいので、使用停止にしていた村や町も多いと噂で聞いた。

この村も使用を停止した村の1つだったようで、門番さんに『広場は使用できるようになっています』と教えてもらった。

「あ~、これは駄目だな」

広場には大量の冒険者たち。

おそらく広場が使用可能になったため、お金に余裕がない冒険者たちが一気に押し寄せたのだろう。

「かなり混雑してますね」

「あぁ、宿にするか?」

「うん。ちょっと隣との位置が近すぎると思う」

テントとテントの間が狭く、ちょっと落ち着かない。

「だったら宿だな。どこがいいかな?」

「ドルイドさんが以前来た時に泊まった宿はどうですか?」

「あそこは駄目。安宿だから」

ドルイドさんが断言すると、周りを見渡している。

おそらく宿の看板を探しているのだろう。

「あそこにあるな」

ドルイドさんの視線を追うと、小奇麗な宿が見える。

ハタウ村で泊まっていた宿より少し小ぶりの宿だ。

「条件を聞いてよかったら、あそこにしてもいいか?」

「うん。大丈夫」

ドルイドさんと宿に向かっていると、広場で大声で怒鳴り合う声が聞こえた。

視線を向けると、数名の冒険者が殴り合いをしているのが見えた。

「あっ、喧嘩」

「馬鹿だな」

ドルイドさんが大きなため息をつく。

どうするのかと見ていると、数名の自警団員の姿が見えた。

さすがに、自警団員は強い。

すぐに冒険者たちが捕まり、どこかへ連れて行かれるようだ。

「夏前までは広場は使用を止めておこう」

「えっ?」

「春は、冬の間の鬱憤を晴らす奴が出やすいんだ。今年はどこも例年より寒かったからな」

冬の間の鬱憤?

寒かったから?

「暴れる人が多くなるの?」

「そうなんだよ。宿代がかさんだり、冬の間に稼げなかったりで余裕のない冒険者が増えるから」

私もソラたちに出会えなかったら余裕なかっただろうな。

「ある程度の救済措置はあるんだ。ただ無駄に 矜持(きょうじ) が高いと、それを利用する事も怒りに繋がるらしい。使わない奴もいるしな」

「それはもったいないですね。使えるモノは使わないと」

「…………」

ん?

ドルイドさんが、驚いた表情で見てくるけど何だろう?

「どうしたんですか?」

「いや、アイビーがそう言うとは思わなくて」

「そうですか? だって、わざわざ苦しい時の助けになるモノを作ってくれたんですよ。苦しかったら苦しいって言ったらいいと思います」

「苦しい」と言っても、誰にも言葉が届かない事もあるのだから。

「苦しい」と言えない人だっているのだから。

「師匠に言われたな。無駄な矜持なんて冒険者にはいらないって」

私も師匠に賛成だな。

「様子を見て判断するが、広場を使用するのはもう少し夜が暖かくなってからにしような」

「そうだね。巻き込まれたら大変だし」

宿に向かって歩いていると、広場でまた何か騒動があった音が聞こえる。

これは当分広場を利用するのは無理かな。