作品タイトル不明
307話 光の森
捨て場へ行こうと1階に下りると、食堂からサリファさんが顔を出した。
「おはよう。団長から詰所に寄ってほしいと連絡が入っているのだけど、行けそうかな?」
タブロー団長さんから?
何か用事でもあるのかな?
ドルイドさんを見るも、彼もちょっと首を傾げていた。
「分かりました。用事が終わったら寄ります」
ドルイドさんが返事をすると、嬉しそうに頷くサリファさん。
「じゃ、お願いね。行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
宿を出て捨て場へ向かう。
「何かあったのですかね?」
「昨日はそんな事言っていなかったよな?」
昨日、ローズさんのお店に頼んでおいたマジックアイテムの有無を確かめに行った。
丁度その時、タブロー団長さんが家に帰ってきたので挨拶をしたがその時は何も言われなかった。
その後何かあったのだろうか?
「旅へ出る事を伝えたからかな?」
私の言葉に首を振るドルイドさん。
「あまり関係ないだろう」
まぁ、それはそうか。
「何か忘れてるのかな?」
タブロー団長さんとの間に忘れている事?
何かあるような気がしてきたな。
ん?
「「あっ、魔石」」
他の問題でバタバタしていたから、すっかり忘れてた。
「そう言えば、提供した魔石の代金がまだでしたね」
「そうだったな」
そう言えば、最終的にどれくらいの数を提供したのだろう?
途中まではしっかり数えていたのだが、途中完全に忘れていることが数を書いていた紙を見て発覚。
その後は、ちょっといい加減だったからな。
「何個ぐらい提供したか覚えてます?」
「いや、アイビーは?」
「まったく」
「まぁ、タブロー団長の事だから大丈夫だろう」
「うん。それで思い出したけど、アイテム残念だったね」
ローズさんの伝手を使って色々調べてもらったが、魔力を溜めるアイテムはやはりなかった。
洗濯を手助けするアイテムはあったので、すぐさまドルイドさんが購入していたが。
「そうなんだよな」
王都や王都周辺の町は、この辺りの大きな町以上に人が多いらしい。
そのお蔭で捨て場は大きいのがあるらしいが、見回りも多く人との遭遇率が上がるだろうとの事。
ソラやフレムのポーションや剣は、私たちが拾えばどうにか誤魔化すことが出来る。
だが、ソルの魔力はソルがその場にいないとどうする事も出来ないので、とても不味い。
「何とか方法を探さないと駄目なんだが」
色々試せることは試した。
まぁ、結果は惨敗だったけど。
まだ王都周辺までは少し距離があるけど、このままでは何も手立てが出来ないままになりそうで怖い。
とりあえず分かっている事は、3日間は食べなくてもなんとか現状維持が出来ること。
4日目あたりから徐々に体が小さくなってくるということだけ。
まだまだ不明な事が多すぎる。
今日の当番の門番さんたちに挨拶をして、門を通り抜ける。
「ドルイドさん、アイビーちゃん行ってらっしゃい。気を付けてね」
この冬の間に随分と仲良くなることが出来た。
まぁ、森へ行ける時はほぼ毎日行ったからね。
門番さんたち全員に、顔と名前を憶えられたようだ。
「ありがとう、行ってきます」
「あっ、そうだ。動物の目撃情報がきているので気を付けてくださいね」
もう動物たちが、冬眠から目覚めだしたの?
まだ地面は雪で覆われているし風もまだまだ冷たい。
ちょっと早いような気がする。
「フォックですか?」
ドルイドさんの質問に門番さんが頷く。
「了解。見たという場所はどの辺りになるのかな?」
「魔石が発見された洞窟の近くです」
捨て場とは離れた場所か。
良かった。
「分かりました。ありがとう」
手を振ってくれる門番さんたちに手を振って森へ向かう。
「冬眠から目が覚めるの早くないですか?」
「フォックは冬の間も時々見られる動物だよ。少し寒さが落ち着いたから行動範囲を広げたのだろう」
冬も見られるということは冬眠しないって事?
冬眠しない動物もいるのか。
人を襲う魔物のことは良く本や情報で調べたけど、魔物より安全な動物についてはあまり勉強しなかったな。
勉強したのは危険の高い動物だけだ。
「フォックって、どんな動物なの?」
「知らない?」
私が頷くと、尻尾が長くてとがった顔の動物だと教えてくれた。
とがった顔?
まったく想像できないのだけど。
「危ない動物ですか?」
「少し危ないかな。尻尾に毒を持っているから」
毒?
「それは少しではないのでは?」
「こちらから攻撃しないと、襲ってくることはないから問題ないよ」
だったら、大丈夫か。
門からある程度離れた場所に来たので、バッグの蓋を開ける。
今日はフレムもソルも起きていたらしく、バッグから飛び出してきた。
「今日は皆揃っているんだな」
「うん。さて、捨て場に行こうか」
周りの気配に注意しながら、捨て場へ向かう。
そろそろ旅へ行くために足りないポーションを補充しないとな。
青のポーションと赤のポーションはソラとフレムが作ってくれたから必要ないけど後の2種類。
緑色のポーションと紫色のポーションは準備しておかないと。
それとソラたちに必要なご飯用のポーションと剣だな。
「ずっと確かめようと思っていたのだけど」
「何?」
「王都の周辺の町へ行く予定だよな」
「うん」
シエルがアダンダラの姿に戻ると、ソラたちがシエルの背中に飛び乗るのが見えた。
みんなシエルに甘えているよね。
「王都から繋がっている町は3つあるけど、どの町に行くんだ?」
「それが、分からなくて」
「えっ? どういう事?」
占い師に何度も聞いたけど、町の名前を教えてくれなかったんだよね。
「占い師は王都の隣町、もしくは周辺の町と言っていたのです。行けば分かると」
そう言えば、占い師は王都へは行った事が無いと言っていたな。
どんな場所か訊いた時に『行った事が無いから分からない』と。
「そこへ近づけば分かる……もしかして光の森か?」
「光の森?」
「あぁ、この世界の始まりの場所とも言われている所だよ」
そんな場所に私が行ってどうするのだろう?
「あの場所は不思議な場所なんだよ。と言っても、俺も聞いただけだから真実かは分からないけどな」
「どんな不思議があるの?」
「光の森の奥に小さな教会があるらしい。そこには選ばれた人が1度だけ入る事が出来て、夢をかなえてくれると言われている」
教会?
だったら、私は別に行きたくないな。
「その教会だけど、この国にある他の教会とは全く違って誰もいないらしい」
「えっ? だって管理する人とか掃除する人とかは?」
「いないんだよ。でもいつも綺麗なんだって屋根が」
「屋根?」
「そう、光の森には誰も入れないから木々の間から見えるのは屋根だけらしい」
誰も入れない森に教会。
選ばれた人がたった1度だけ入れる場所。
なんだかファンタジーみたい。
「ファンタジーですね」
「ん? 『ふぁんたじー』?」
あれ?
もしかして前の私の言葉だったのかな。
「それ、前の私の知識みたい」
「そうか」
そう言えば、前の私の知識の中にあるモノとよく似た物がいっぱいあるんだよね。
それを一時期、気持ち悪く感じていたな。
「目標は光の森のあるカシメ町でいいか?」
光の森。
確かに少し気になるな。
占い師がその森の事を言っていたのかは分からないけど。
「うん。そうしよう」
「カシメ町か、俺も初めてだな」
「そうなの?」
「あぁ。教会に良い印象がなかったから避けてたからさ」
そうか。
ドルイドさんもスキルで困ってきたもんね。
「もう、大丈夫?」
「もちろん」
ドルイドさんの目をじっと見る。
無理をしているようには見えない。
だったら大丈夫かな。
私は、まだちょっと複雑だな。
でも、以前より教会に対して嫌悪感は無いな。
前は見るのも嫌だったのに。
ん~ちょっと違うな。
嫌というより怖かったかな。
「新しいゴミが増えているな」
ドルイドさんの言葉に視線を捨て場に向ける。
確かに、一気に捨て場のゴミが増えている。
「村に集めていたゴミを持ってきたようだな」
あぁ、村の一部で集めていたゴミが移動されたのか。
拾い放題だな。
あっ、ソラたちも嬉しそう。
「頑張って拾うか」
「うん」