軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

285話 仲間の形

「見つけた~」

ドルイドさんと探しても見つからず、ソラとフレムに聞いたらソラがぴょんと移動用バッグの上に乗った。

そして、次の瞬間。

「ぷっ!」

慌てて、ソラをバッグからおろし中を確認すると、黒のスライムがじっと私を見つめていた。

初めからソラに聞いてたら早かったな。

「ごめんね、昨日は話が出来なくて」

「ぺふっ」

「出てきてもらっていい? 話をしよう?」

黒のスライムはソラやフレムの時とは違い、既に体はしっかりしているようだ。

バッグから出る時も、普通に飛び跳ねている。

ただ、体が小さいためあまり移動距離は長くない。

小さな体で一生懸命飛び跳ねている姿は、なんとなく応援したくなってしまうな。

「ぺふっ?」

バッグから出て私を見上げる黒のスライム。

「お茶を入れたから、飲みながら話さないか?」

ドルイドさんがいつの間にかお茶を用意してくれていた。

彼にお礼を言ってから、黒のスライムの前に手を差し出す。

意味を理解してくれたのか、ぴょんと飛び乗ってくれた。

「ありがとう」

「捨て場に行くまでに時間はあるし、ゆっくり話そう」

「うん」

テーブルの上に黒のスライムを置く。

椅子に座って少し様子を見ると、お茶の入ったコップに興味津々。

「熱いから危ないよ」

私の言葉にちらりと視線を向けるが、すぐにコップの中のお茶を見る。

そして、にょろっと黒のスライムから細長い何かが出てきてお茶の中にぽちゃんと浸かった。

「ぺっ!」

熱かったらしい。

すぐにお茶から出して、くるくる振り回して冷ましている。

火傷も心配なのだが、振り回しているモノが気になる。

「…………手?」

「…………触手?」

私は手だと思ったが、ドルイドさんは触手だと思ったらしい。

というか、スライムに手も触手もないよね?

あれ? あるの?

「ドルイドさん、スライムに触手がある種がいるのですか?」

「あ~、かなり昔にいたという文献があったような気がする」

昔の文献?

「ちなみに大きさは?」

「そこまではちょっと。あの時はスライムに興味がなかったからさ」

残念。

それにしても昔の文献か。

どこかで調べる事が出来るかな?

それにしても、この子も間違いなくレアなんだろうな。

触手? あるし。

「えっと、大丈夫?」

「ぺふっ」

あれ?

じっと黒いスライムを見る。

ソラとフレムにあるモノがこの子にはない。

「テイムした印がないです」

「そりゃ、まだしていないからだろ?」

「ん?」

「えっ?」

あっ、そうか。

私、話していないかも。

「あの、この子はたぶんフレムから誕生した子だと思うのです」

「そうなのか? ソラからフレムが誕生したのと一緒?」

「たぶん。フレムの黒いシミが消えているから」

「ぺふっ!」

私の言葉に黒のスライムが鳴く。

その様子が嬉しそうに見える。

「これって正解って言ってるのかな?」

「そんな気がしますね」

「フレムのあの黒いシミがね~」

ドルイドさんが、黒のスライムに顔を近づけてじっと見る。

そしてベッドの上で寝ているフレムを見る。

「黒いシミがどうやってスライムになるんだろうな?」

「さぁ、考えたこと無かったです。そういうモノだと思っていたので」

初めてテイムしたソラがフレムを誕生させたので、スライムはそうやって増えていく魔物だと思ったんだよね。

ドルイドさんに聞いたら『違う』と言われて、かなり驚いたなって話を戻そう。

「えっとそれで、フレムが誕生した時なのですが、既にテイムの印があったんですよ」

「そうなのか?」

「うん。だからてっきりテイムしたスライムから新しいスライムが誕生したら、テイムが引き継がれるのかと思ってたんだけど……」

黒のスライムを何度見てもテイムの印はない。

「確かに印はないな。2代目だからとか?」

なるほど、そう言う考えもあるのか。

これって確かめるにはフレムがもう一度……考えるの止めよう。

「黒のスライム君、テイムしていい?」

「……」

これは嫌だって事かな?

自由が良いならそれでもいいけど。

「テイムは嫌みたいですね」

「いいのか?」

「何がです?」

「いや、力で抑えることも出来るだろう?」

「しませんよ?」

力で抑え込む?

そうやってテイムしてしまうと、ソラたちのように分かり合える事は難しいと思う。

出来たとしても時間が掛かってしまうだろう。

「まぁ、アイビーならそう言うか」

「なら森に放そうか?」

「……」

あれ? これも駄目?

「一緒にはいてくれるの?」

「ぺふっ」

「ん~、旅も一緒に行く?」

「ぺふっ」

テイムは嫌だけど旅は一緒、新しい仲間の形だな。

そうだ旅を一緒にするなら、まずは呼ぶときの名前が必要だよね。

「名前を付けても良い?」

「ぺふっ」

あっ、許してくれた。

「ドルイドさん、名前を考えよう?」

「アイビーはアイビーだったな」

私が私?

それは当たり前でしょう?

「そんな不思議そうな顔で見られても、アイビーは優しいって事だよ」

「そうですか?」

ドルイドさんは良く私を優しいと言うけど、彼も優しいよね。

「黒のスライムの名前か……何が良いんだろうな?」

黒のスライムを見ると、触手をまたお茶に伸ばしている。

先ほどより冷えているので、もう火傷の心配はないだろうけど水が好きなのかな?

それより名前を考えないと、えっと黒……ブラック?

これはきっと前の私の記憶かな。

なんとなくちょっと嫌かな、あとは『ソル』。

大地?

太陽?

前の記憶なのだろうけど曖昧だな、でもソルか。

大地でも太陽でもいいな。

……手のひらサイズのスライムに大地? もしくは太陽?

いいかもしれない。

「ソルでどうでしょう。大地もしくは太陽という意味があるみたいです」

「ソル? 大地? 太陽? あぁ、前のアイビーの記憶?」

「うん」

「小さいスライムに大きな名前だな」

「そうなんだけど、ソルという名前はどうかな?」

「ぺふっ」

プルプルと揺れて濡れた触手を振り回す。

「うわっ」

「あっ、こら振り回しちゃ駄目!」

「ぺ?」

「触手に付いた水分が周りに飛ぶから、濡れている時は振り回しちゃ駄目だよ」

「いや、アイビー。そこはお茶に触手を浸けては駄目だと言うべきでは?」

「…………へへっ」

そうですね、その通りでしたね。

「って、名前は気に入ってくれたみたいだから、ソル、これからもよろしくね」

「ソル、俺も宜しく」

「ぺふっ」

触手が、はいをするようにまっすぐ上に伸びる。

なんだか気持ちいい返事を返されたような気分になるな。

「ソル、ついでにお茶に触手を入れちゃ駄目だよ?」

「…………」

「無理ですね」

「そんな嫌そうな表情をしなくても良いだろうに。というか、このソルも随分と表情が豊かだな」

「そうですね。そうだソル、君は成長するの?」

「……」

反応なしということは、この小ささで大人か。

どこかに入り込んだら見つけにくいから、気を付けないとな。

後は。

「ソルの食べるモノってポーション?」

でも、黒のポーションなんて見たこと無いな。

「……」

「違うのか」

とりあえず捨て場で見かけるゴミを順番に言っていき様子を見る。

色々提示してみるが、どれにも反応を返さない。

「何を食べるんだ?」

ドルイドさんも困った表情になっていく。

「ご飯は必要だよね?」

「ぺふっ」

何も思い浮かばなくなったので、食べ物が必要か確かめる。

当たり前だが必要という答え。

「どうしよう、ドルイドさん。あと何がある?」

「あ~、とりあえず捨て場に行ってソルの様子を見よう」

ふ~、それがいいか。

喉が渇いたな。

「あっ、アイビー。そのお茶!」

「あっ、飲んじゃいました」

ソルが遊んでいたお茶を飲んでしまった。

まぁ、大丈夫でしょう。