軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

272話 森の奥へ

「止まないな」

雨が降り出してから3日。

その間、ずっと降り続けている雨を窓際に置かれたソファから眺める。

寒さも厳しく、詳しくは聞けなかったが死者も出たらしい。

窓の外を見て、もう一度ため息をつく。

「ぷ~?」

外を見ていると、不意に足に重みを感じる。

視線を向けると、ソラが私の太ももの上からじっと見つめていた。

「ごめんね。何でもないよ」

「ぷっぷ~」

体を縦に伸ばして見つめてくるソラ。

心配されているようだ。

「分かってるよ、仕方ないことだって」

死者が出たと聞いたのが、少し前。

死因は凍死だったらしい。

仕方がない事だと、頭では理解している。

でも、心がちょっとだけギュッと痛んだ。

「出来るだけの事はしたよね?」

「ぷっぷぷ~」

「にゃうん」

「てっりゅりゅ~」

ソラに続いた皆の声に少しだけ驚く。

傍に来ていたことに気付かないほど、ぼうっとしていたようだ。

「皆、ありがとう」

そう、私が出来ることはやった。

だから仕方ない事なのだ。

ガチャッと扉の開く音がして、飲み物を持ったドルイドさんが入ってくる。

「大丈夫か? はい、落ち着くぞ」

ドルイドさんにお礼を言って、飲み物を受け取る。

どうやら彼にも、私の気持ちがばれてしまっているようだ。

情けないな。

ひと口飲むと、口の中に爽やかな甘さと温かさが広がる。

「おいしい」

「それは良かった」

心配かけちゃったな。

よし、もう大丈夫。

小さく、頷くとゆっくりと頭を撫でられた。

皆の気持ちが暖かい。

「ドラの話では、明日ぐらいには一度止むだろうって言っていたよ」

「そっか。よかった」

「雪にならないと狩りが出来ないな」

「狩り?」

「ほら、冬の間しか現れない魔物がいるから狩りをしようって」

「あっ!」

そうだ、確かそう言っていた。

でも雪が必要なのかな?

「あの魔物は雪が降らないと出てこないから、どんなに寒くても雨では駄目だな」

そうなんだ、残念。

でも、まだ冬は始まったばかりだし。

まさかずっと雨なんて事はないだろう。

でも何か原因がある場合は、それをどうにかしない限りは雨か。

「止んでほしいな」

「そうだな」

…………

「晴れだ~」

宿から出て空を仰ぐ。

久々の太陽の姿に、ホッとする。

ただ、やはり寒さは厳しいが。

「太陽をこんな気持ちで見る時がくるなんてな」

隣でドルイドさんが感慨深く呟く。

確かに、数日の雨と寒さがなければここまで太陽を待ちわびなかっただろうな。

「さて、行こうか」

「うん」

今日は、ここ数日の間にフレムが復活させた魔石をローズさんのところへ持って行くことにしている。

そしてそのあとは、森へ行く予定だ。

それと言うのも、シエルの様子が昨日の昼頃少しおかしくなったからだ。

何故かぶるぶると震え、窓の外をしきりに見て、またぶるぶると震える。

時間にして1時間ほど、何度も同じ行動を繰り返していた。

部屋の中でも元の姿には戻れるが、魔力が外に洩れてしまう可能性があるため出来ず。

1日という時間が経ってしまったが、森へ行き元の姿に戻って問題ないか確かめることにしたのだ。

心配でシエルに怪我や病気の有無を聞いたが、それらは問題ないらしい。

ドルイドさんはソラとフレムが気にしていない為、深刻な問題ではない可能性が高いと言っていた。

それでも、何かがあったのは確かなので不安は消えない。

ローズさんのお店は今日は開いていて、お客さんの姿がちらほら。

挨拶をして、魔石を渡す。

「ありがとう。お茶を飲むかい?」

「いえ、今日は行くところがあるので帰ります。また来ます」

「無理はしないようにね」

「ありがとうございます」

今日は魔石を渡すと、すぐに店を出る。

ちょっと慌ただしくなってしまったので、ローズさんとデロースさんが驚いていた。

原因が分かったら、ちゃんと説明しよう。

門番さんに挨拶をして、森の外の様子を聞く。

特に危ない魔物の姿などは見られていないようだ。

良かった。

「天気が悪くなりそうだと感じたら、すぐに戻ってきてくださいね」

「はい。行ってきます」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

挨拶をして森の奥へ向かう。

冒険者もこの晴れ間に森へ行っているらしいので、注意が必要だ。

「結構、奥まで来たな」

ドルイドさんの言葉に足を止める。

周りを見回して気配を探る。

かなり遠いところに冒険者らしき人の気配があるだけで、問題なさそうだ。

ローズさんの持っている様なスキルを持った人がいない事を祈って、バッグからみんなを出す。

「ぷっぷぷ~」

ソラが元気に飛び出して、飛び跳ね回る。

続いてシエルが飛び出す。

すぐに元の姿に戻ると体を伸ばすなどの運動をし始めた。

元の姿に戻ったシエルを見るが、特に問題はない。

元気にソラと走り回っている。

ずっと部屋の中だと、我慢させることが多いのでそのせいだったのだろうか?

最後に、ぴょんとバッグから飛び出すフレム。

「上手に出来たね」

体力がついたのか、バッグから自力で飛び出せるようになった。

ただし、体にあるシミがすごく気になる。

ドルイドさんに測ってもらったが、徐々にだが広がっている。

「にゃうん」

シエルの声に視線を向けると、じっと森の奥を見つめている。

気が付くとソラとフレムも何かを見ている。

そして3匹がちらりと私を見る。

「ドルイドさん、良いですか?」

「えっ、何が?」

「向こうに何かあるみたいです」

「ハハハ、俺も慣れたな」

「えっ、何?」

隣でぼそっと何か言ったが、声が小さく聞き取れなかった。

ドルイドさんは首を横に振ると、

「いや、なんでもない。行こうか」

「ありがと。皆行こう!」

なんだか久々にドキドキするな。

やっぱり森の中だと冒険したくなる。

先頭にソラ、次にドルイドさんと私とシエル。

フレムは腕の中だ。

しばらく歩き続けると、スノーの花の群生地が現れた。

凄い数の花が揺れている。

ちょっとその凄い風景に感動してしまう。

いわくつきの花だが、とても綺麗だ。

「スノーが群生して咲くなんて、聞いたことがないんだが」

ドルイドさんは戸惑っているようだ。

確かにスノーの発見が多いと、被害が大きくなるとも言われているからね。

「ぷっぷぷ~」

花に気を取られ過ぎていたようだ。

ソラとちょっと離れてしまった。

急いで後を追うと、岩山に到着。

「ここって、魔石が採れていた場所か?」

ドルイドさんが指す方向を見ると、岩山に崩れた部分がある。

近付くと、かなり大きく崩れていてこの奥に何があるのかは分からなかった。

「ぷっぷぷ~」

「にゃうん」

ソラとシエルの声のした方へ視線を向けると、岩に大きな穴。

「あそこ、入れるみたいですね」

「みたいだな。だとすると崩れて入れなくなった洞窟は、ここではないのか」

岩の穴の様子を見たドルイドさんが首を傾げる。

「この穴、まだ新しい気がする」

凄いな、そんな事まで分かるんだ。

私も見てみたが、どこを見ていいのかさえも分からなかった。

ソラたちの後を追って、洞窟の奥へと進む。

「やっぱり、ドラたちが言っていた洞窟じゃないか?」

ドルイドさんが壁を指して言うので、そちらを見ると魔石が埋まっているのが分かった。

しかもその魔石は1つではない。

「ここだったら、魔石は集められたって事ですか?」

「穴の状態から見て、もしかしたら、ここ数日の間にあの穴が開いた可能性もある」

なるほど。

「あれ、あの子たち」

ソラが同じ場所でぴょんぴょんと飛び跳ねているので不思議に思い近づくと、サーペントさんの子供たちである黒の球体が何体もいた。

「ここもサーペントさんの住処でしょうか?」

「村に近すぎるから違うだろう。ここだったらもっと目撃情報があってもいいはずだ」

そうか。

確かに村から歩いて1時間ぐらいだから、近すぎるかな。

「こんにちは、以前会ったことがあるけど覚えてますか?」

「あの時の子たちなのか?」

ドルイドさんの疑問に首を傾げる。

どうだろう?

「分からないですが、なんとなく」

ドルイドさんに笑われたが、さすがに黒の球体を見分ける事は不可能だ。

色も目の位置も黒の濃さも同じなんだから。