軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 ドルイドさんと酔っぱらい

「この村には少し前まで問題のある貴族がいて」

「貴族、それは大変だったでしょう。奴らは金や権力を振りかざしますからね」

冒険者に守られて移動をする癖に、冒険者を馬鹿にする。

良い貴族もいるようだが、俺は問題のある貴族しか会ったことがない。

「何か犯罪をやっているということは分かっていたんですが、前のギルマスも団長も証拠が掴めなくて。逆に立場を追われることになってしまって」

それは最悪だな。

あぁ、だから慣れていない2人がトップにいるのか。

おかしいと思ったんだよな、通常は1人ずつ代替わりして慣れるまで他のトップが代わる事がないのに、この村では不慣れな者が同時に上にいたから。

そんな理由があったのか。

「悔しくて。でも下手に動くと、こちらが身動き取れなくなることを前の経験で知っていたので」

問題の貴族は相当頭が良かったということか。

自警団と冒険者ギルドを身動きできないようにするなんて。

「どうしていいか分からない状態が続いていた時に、冒険者ギルドと自警団にある書類が届いたんです。それを見て驚きました。この村の貴族の1人が、王家の血縁者まで巻き込んだ犯罪組織の幹部だったんです」

王家を巻き込んだ組織ってアイビーが協力した奴だよな。

「たった数枚の書類、でもそのお蔭で前の団長の悔しさを晴らすことが出来た。プリアも前のギルマスの汚名をそそげた」

タブロー団長はグイッとお酒を飲む。

そして視線を俺に向けて、

「アイビーさんは俺たちにとって救世主なんだなって分かってたのに。なんだか……分かっていたはずなのに。ドルイドさんの話を聞いていたらなんかもっと、その実感したと言うか」

話が分かりづらいがつまり、アイビーが救世主だと知っていたが色々な問題があって頭の隅に追いやられていた。

が、その問題が一定の解決をみて、混乱していた頭を整理したら隅に追いやった情報がすごい事に気が付いた。

んっ?

いや、違うか。

アイビーは元々凄い子。

……酔ってるな、頭がこんがらがってきた。

とりあえず、俺に緊張しているのは無駄だな。

「あの、悪いが俺はその組織壊滅とは一切関係ないから。関係あるのはアイビーだけだからな」

あの子の手柄で緊張されても困る。

「あっ、そうなんれすか?」

「そうです」

って、どうして緊張が取れないんだ?

っというか、よく飲むな。

それって俺の酒だよな?

タブロー団長が持ってきた酒は既に空になり、今飲んでいる酒は俺のだ。

どうも気付いていないようだが。

それにさっきから呂律が回ってない時がある。

「タブロー団長、寝たのは何時だ?」

嫌な予感がする。

「……ここ1週間はほとんど寝ていません」

「今日、食事はとったか?」

「……確か食べてた気がします」

「タブロー団長、酔ってるよな? 手に持っている酒を離そうか?」

寝不足の上におそらく食事もまともに摂っていない状態で強い酒を飲むと、どんなに酒に強い人物でも酔うよな。

彼はまったく顔に出ないから、気付くのが遅れてしまったがかなり酔っているようだ。

「ふっ、大丈夫です。意識ははっきりしてれますので酔ってませんよ。ふふっ」

いや、呂律がおかしくなってきてるから。

それにしても笑っているのに、緊張してるっておかしな状態になってるが、大丈夫か?

俺も酔ってるから、そう見えるだけか?

「あの、アイビーさんは……」

先ほどからアイビーのことをかなり気にしているな。

アイビーと接触したのは数回だけだが、何かあったか?

商業ギルドのギルマスの仲間ではないかという誤解は解けているし。

「怒ってませんでしたか?」

「はっ?」

アイビーが怒る?

何度か怒るところを見たことがあるが、それは俺の無茶がばれた時だけだ。

そんなアイビーがタブロー団長に怒る?

「アイビーはタブロー団長に怒ってはいませんよ。もちろんプリアギルマスにも」

「本当に?」

あっ! 緊張している訳が分かった。

今までの態度やこの間のプリアギルマスの態度にアイビーが怒って魔石を返せと言われないか不安だったのか。

おそらく今回、アイビーの魔石がかなり活躍することになったんだろう。

ホッとした瞬間、今までの自分たちの対応を外から判断して慌てたと。

「アイビーは魔石を返せなんて言う子ではないですよ。優しい子だと言ったでしょ? 時間がある時に、彼女とゆっくり話をしてみたらいい、そうしたらちゃんと理解できますよ」

「はい……よかった」

ドンッ

「ん?」

音がした方へ顔を向けると、タブロー団長が机に顔をぶつけている。

そして、寝息が聞こえ出す。

「ぷっ、あははは」

あまりのことに笑いが込み上げる。

きっと限界の体を動かしてでも、アイビーの様子を知りたかったんだろう。

まったく、アイビーがそんな性格だったら魔石を提供するわけがないだろうに。

寝不足で判断能力が低下していたのかな?

それにしても、アイビーが関わった組織はこの村にも影響を及ぼしていたんだな。

俺の町でも結構衝撃だったからな。

コンコンッ

「ん? 誰だ?」

起動しているマジックアイテムを止めてから、声をかける。

「失礼、話はって……団長?」

ドラが様子を見に来てくれたのか。

これで団長の問題は何とかなるな。

「疲れが相当溜まっていたみたいで、寝てしまいました」

「みたいだな」

「どこか、寝られる場所はありますか?」

「2階に予備の部屋があるので、そこに」

「はい」

立ち上がると少し足がよろける。

やはり俺も酔っているようだ。

「大丈夫か?」

「はは、久々の酒で俺も酔ったみたいです。というか、この酒かなり度数高めですか?」

「お~、かなり高いぞ」

やっぱり。

久々に飲む酒では無かったかな。

美味かったけど。

「団長、起きられますか?」

「…………」

「無理そうだな。運ぶか」

「手伝いますよ」

ドラとタブロー団長を、2階の予備の部屋に運ぶ。

「疲れた」

意識のない鍛えている男は重いな。

「お疲れ様です」

女性の声に顔をあげると、サリファさんが水を渡してくれた。

「ありがとうございます」

冷たい水が酒で火照った体に気持ちいい。

「ふ~、生きかえりました」

「ふふふ、明日は二日酔いに注意ですね」

「大丈夫だと思うんですけどね」

ドラとサリファさんに挨拶をして部屋に戻る。

扉を開けて部屋の中を見ると、シエルが起きてこちらをじっと見ている。

「ハハハ、ごめん。寝てていいよ」

何だろう、ちょっとシエルの目が怖かったけど。

もしかして、アイビーを守っているのかな?

は~、疲れた。

あ~、今更頭がグルグル、グルグル。

「あした……あい、びーに……」