軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 ドルイドとお酒

「こんばんは」

「こんばんは。酒はこれだ。王都でも人気が出てきたと噂の辛口。あっ、辛口でも大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だ」

「2本でいいか? それとも3本?」

久々の酒だからな、無理は止めておこう。

「1本でいいよ。度数もそれなりだろう?」

「そうか? まぁ、足りなくなったら言ってくれ」

「ありがとう」

お酒を受け取り、談話室の奥にある机に向かう。

少し奥にある場所なので、1人で飲むには向いている。

「あっ、ドラ! 話し方! お客様には丁寧にでしょ!」

机に座ろうとすると、後ろからサリファさんの声が聞こえた。

それに少し笑みがこぼれる。

丁寧にと何度も注意されているのを見るが、あまり役には立っていない。

ドラも気を付けているようだが、すぐに元に戻っている。

客がいつものドラで良いという雰囲気なのも、直らない原因の1つだろうな。

酒のコルクを取り、香りを楽しむ。

コップに入れて1口。

喉をカッと熱くする感覚を久しぶりに感じる。

「ふ~」

美味いな。

ドラが薦めるだけはある。

「ドルイドさん、はいこれ」

机に置かれる木の実の和え物?

視線をサリファさんに向けると、にこりと優しく微笑まれた。

「アイビーさんが、お酒のお供にと作ってくれたのよ」

「そうなんですか? ありがとうございます」

「本当に良い子よね。食事の後でもお酒だけだと体に悪い。でもそれほど食べれないだろうから木の実でつまめるぐらいにって」

確かに食事の後なので、お酒だけを楽しむつもりだった。

でも少し何かあれば嬉しい、それをアイビーは理解してくれたのか。

本当に俺にはもったいない旅のお供だよな。

「ゆっくり楽しんでくださいね」

「ありがとう」

木の実の和え物を口に入れると、ピリッとした刺激。

お酒を飲むと、ものすごく合う。

もしかして、お酒の種類を聞いて作ってくれたのだろうか?

後でしっかりとお礼を言わないとな。

それにしても、はぁ~。

駄目だな、俺は。

ローズさんのスキルを見て、対策が必要だとどうしてすぐに気が付けなかったんだ?

無意識に木の実を口に入れる。

ピリッとした刺激に酒が進む。

「アイビーに、負担掛けてないよな?」

俺はどう頑張っても片腕だ。

間違いなく他の者たちに比べたら足を引っ張っている事だろう。

そうなると分かっていても、一緒に旅をしたかった。

「俺って我が儘だよな」

あ~、でもこんな事を思っていると知ったら、またアイビーに怒られるな。

あの子は本当に優しい子だから。

この村に来る旅の途中で、怪我をしたことがあった。

片腕では対応できない場所の怪我に苛立って、アイビーに八つ当たりしてしまった。

すぐに冷静になって何度も謝り倒す俺を、アイビーは簡単に許してくれた。

でも俺の中では、何かやるせない物が生まれてしまって。

数日後に、俺の代わりのお供を見つけようと提案した、『俺ではアイビーを守りきれないから』と。

次の瞬間、頬を思いっきり抓られた。

それはもう、思いっきりであれは痛かった。

驚いてアイビーを見ると、本気で怒っていた。

初めて見る表情に驚いて、見つめていると『ドルイドさんに守ってもらうために、一緒に旅をしているわけではありません。一緒にいると、心がぽかぽか温かくなってうれしくなって笑顔になれるから一緒に旅をしているんです! 他の人のお供なんて考えたこともありません! ドルイドさんが旅を止めるなら、私は1人で旅をします!』

あっ、やばい。

顔がにやける。

仕方ないよな、あんな風に言われたこと無かったし。

……いや、俺が人を避けていただけか。

コップに入っている酒を一気にあおる。

「ふ~『我が儘の何処が駄目なんですか?』か」

片腕なのにアイビーの旅のお供になったのは、俺の我がままだからと言った時の返答だ。

『誰だって我が儘です。人とはそういうモノです。受け止める側が良いと言うなら問題なし!』だもんな。

よし、気持ちを切り替えないとな。

また、思いつめているとばれたら頬を抓られる。

あれは本当に痛いんだ。

アイビーも痛かったみたいで、頬から離した指をさすっていたからな。

グダグダ考えない、良し!

酒の瓶から酒を注ごうとすると出てこない。

色々考え込んでいるうちに飲みきってしまったようだ。

どうしようかな?

部屋に戻るか、もう1本貰うか。

「ほいっ」

机に新しい酒が乗る。

見るとドラが新しい酒を置いたようだ。

「ふっ、ありがとう」

もう少し飲もう。

「いや、それより客がきてるがどうする?」

「客ですか?」

「あぁ、それがタブロー団長なもんだから驚いた」

タブロー団長が?

「何か話がしたいみたいなんだが、もう遅いし明日にしてもらうか?」

魔石のことかな?

だったら早く話を聞いておいた方がいいか?

「大丈夫です。会います」

と言ったが、周りを見ると談笑している泊り客の姿がちらほらある。

ここで出来る話だろうか?

場所を借りるか?

「場所だったら食堂を使っていいぞ、この時間は閉めているから」

「ありがとうございます。では、そちらに」

机の上の酒とコップを持って食堂に向かう。

食堂の時計を見ると、既に11時を過ぎている。

アイビーに、来ている事を伝えに行った方がいいか?

だが、アイビーを悲しませる話の場合もあるから止めておくか。

それにこの時間だったら、もう寝ているはずだ。

食堂の扉から少し離れた場所に座る。

ここなら話を聞かれる事もないだろう。

あっ、コップをもう1個貰って来ればよかったな。

今から取りに行った方がいいか?

「夜遅くにすまない」

迷っている間に、タブロー団長が食堂に来てしまった。

仕方ないか。

「どうぞ」

ドラがお酒の瓶とコップを机の上に置いて、食堂から出て行く。

さすがだな。

「急に来て申し訳ない」

「いや、問題ないですよ」

タブロー団長の顔には、はっきりとした疲れが見て取れる。

だが、その表情は以前会った時とは全く違う。

完全に落ち着いた表情だ。

タブロー団長の前にある酒の蓋を取ってコップに酒を注ぐ。

「方向性が決まったようですね。おめでとうございます」

「ありがとうございます。まぁ、まだこれからなんですが」

コップを軽く合わせて酒を口に入れる。

あっ、アイビーの作った酒のお供を忘れた。

……いや、食べ切ってもうなかったか。

残念。

「お礼を言いに来ました。ドルイドさんとアイビーさんに」

お礼?

魔石のことを、わざわざこんな時間に?

「あの、数日前にプリアと話したと思うのですが」

「あぁ、あれか」

アイビーが伝えた『笑顔』のことか。

あれには俺も驚いた。

行き成りゴトスの笑顔の事なんて、話し出すもんだから。

「俺の前の団長も、笑みの絶えない人でした」

タブロー団長はそう言うと、グイッとコップの中の酒を呷った。