軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

221話 競ってます

「おはよう」

「おはよう」

巨木の下に出来た大きな穴から出て、腕を伸ばす。

背筋が伸びて気持ちがいい。

隣でドルイドさんも伸びをしている。

「ぷっぷ~」

その横でソラが縦に伸びている。

スライムも背伸び? は気持ちがいいのだろうか?

「ソラ、伸びたら気持ちいいの?」

「……」

無言が返ってきた。

どうやら気持ちがいいと言う感覚ではないようだ。

では、どうして伸びるんだろう?

不思議だ。

「にゃふん」

シエルの眠たそうな鳴き声が可愛い。

今日の寝床は、アダンダラの大きさでは狭すぎたのでスライムに変化中だ。

スライムのシエルはソラと同様に縦に伸びる。

「に~」

なんとも気持ちよさそうな鳴き声が聞こえるけど、シエルは気持ちがいいのかな?

「シエル、伸びをしたら気持ちいいの?」

「にゃうん」

気持ちがいいらしい。

シエルのスライムはソラのスライムとは違うのかな?

後でフレムが伸びをしている時に感想を聞いてみよう。

もう一度腕を上に伸ばす。

何だろう、今日はちょっと体が重いな。

疲れが上手く取れなかったのかもしれない、気を付けないとな。

寝床の後片付けをドルイドさんに任せて、朝食の準備を始める。

と言っても、昨日の夜に作っておいたスープを温めるだけなので簡単。

後は果物を切るぐらいだ。

朝晩が冷え込みだした今の季節には、うれしい温かな朝食。

これだけで1日頑張れる。

昨日の夜ドルイドさんに、私の態度が原因でソラたちが競ってしまったのではないかと相談した。

原因が私ならば、注意をしておかないとまた3匹を煽ってしまう。

ドルイドさんは、私の対応に『問題はない』と言ってくれた。

3匹を煽るような声掛けはしていないし、1匹だけを可愛がることもしていないと。

ではどうしていきなりソラたちは、シエルに対抗してしまったのか。

2人で考えても良く分からず、とりあえず様子を見ることにした。

朝食を食べながら3匹の様子を見る。

何故かシエルはスライムのままで揺れている。

謎だ。

ソラとフレムは相変わらずの食欲で、凄い勢いでポーションが消えていく。

ソラに至っては剣もあっという間に消化されていく。

スライムには味わうと言う感覚はあるのかな?

「ソラ、フレム。美味しい?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

美味しいんだ。

ポーションって飲んだことあるけど、それほど美味しくなかったよね。

味覚が違うって事なんだろうな。

朝食を食べ終わったら、少し休憩。

そろそろ後片付けをしようと、ソラとフレムに視線を向けると。

「あ~、フレムまた……ぅわ~、よだれが」

相変わらずフレムはある程度お腹が膨らむと、物を口に入れたまま寝てしまう。

口からあふれたよだれからフレムを救出して、汚れた体を拭く。

その間、口に咥えていた劣化版ポーションがゆっくりと消化されていく。

寝ながら食べるとか、器用だなっと感心してしまう。

使った鍋を洗いバッグに入れて、忘れ物が無いか周辺を確認。

問題無いようなのでバッグにフレムをそっと入れて肩から提げる。

「皆、行こうか」

「うん。ソラ、シエル行こう」

「ぷっぷ~」

「にゃうん」

昨日見つけた村道をハタウ村に向かって歩く。

私は村道を少しずれた森の中を歩こうとしたが、シエルがスライムになっている状態なので問題ないだろうという事になった。

誰かに見られたとしても、アダンダラの事が噂になる事はないと。

まぁ、今のシエルを見てアダンダラだと分かったらある意味すごいを通り越して怖い。

「歩きやすいな」

「そうですね」

村道の歩きやすさに、2人でほのぼのしてしまう。

木の根とか草の蔓とかを気にせず歩けるって楽だ。

「ぷっぷ~」

「にゃ~」

2匹の声に視線を、少し前を飛び跳ねているソラとシエルに向ける。

何故か2匹で思いっきり飛び跳ねている。

何をしているのだろう?

ようすを見ながら歩いていると、どうやらどちらが高く飛び跳ねられるか競っているようだ。

ソラが高くなるとドヤ顔なんだろうな、そんな雰囲気で胸を張ってシエルを見る。

それを見てシエルがソラより高く跳ぼうと躍起になって……どうやら越したようだ。

今度はシエルがソラに胸を張っている。

「遊ぶのもいいけど怪我はしないようにね」

「ぷっぷぷ~」

「にゃうん」

聞こえているようだが、本当に気を付けてくれるのだろうか?

それにしても良く跳ぶな。

見ているこっちがハラハラして疲れる。

ピョン……バキッ!

「あっ、シエル! 大丈夫?」

やっぱりぶつかった。

勢いよく飛び跳ねて、上にあった太めの枝に体が思いっきりぶつかった。

かなり痛そうな音が聞こえた。

枝を見ると折れている。

いったいどれぐらいの力でぶつかったら、太めの枝が折れるんだ?

「大丈夫?」

駆け寄ってシエルの体をさする。

ソラも心配そうにシエルを見ている。

「にゃうん」

ちょっとさすったら痛みが引いたのか、プルプルと揺れてまたソラと少し先を飛び跳ねだした。

君たち、懲りないね。

「もう」

「なぁ、アイビー」

「はい?」

ドルイドさんを見ると眉間に皺を寄せて何か考えている。

何かあったかな?

周りを見るが特に変わった物は見られない。

こちらに近づく気配もない。

「どうしたの?」

「シエルが鉱物のある場所に誘導したり、ソラがポーションを生みだしたのってあれだったんじゃないか?」

ドルイドさんが指す方向を見ると、今も飛び跳ねる高さを競っているソラとシエル。

あれだった?

えっと飛び跳ねる事と、鉱物とかポーションがどう関わるんだろう?

「どちらが役立っているかを競っていたとは、考えられないか?」

あっ、間違えた。

そうだよね、飛び跳ねる高さと鉱物は関係ないよね。

ちょっと考えれば分かる事だ……恥ずかしい。

口に出さなくてよかった。

「アイビー? どうした?」

「いえ、なんでもないです」

そっと頬に手を当てる、微かに熱くなっているかもしれない。

「アイビー?」

私のおかしな行動を心配そうに見ているドルイドさん。

「ハハハ、大丈夫です」

えっと、何だっけ?

あっそうだ、競っている可能性についてだ。

「あるかもしれない」

前を行く2匹を見ると、かなり興奮しているのか飛び跳ね方が荒くなっている。

また、木にぶつかったりしないかな。

ちょっとヒヤヒヤしながら2匹を見る。

「あいつ等に聞いてみるか」

「うん。そうですね」

そうだよね。

分からない事は訊けばいいんだから。

何だろう、ちょっとふわふわするな。

「ちょっと待った」

ドルイドさんに腕を掴まれて立ち止まる。

そして向かい合うように立つ。

「本当に大丈夫か?」

何だろう、ものすごく心配されている。

でも、いたって普通なんだけど。

ちょっとふわっとするぐらいで。

「ぷっぷ~?」

「にゃん?」

ソラとシエルが私たちのようすを心配そうに見ている。

いつの間に戻って来たのか。

「だいじょうふだよ」

ん?

なんだか口が上手く回らない?

不意に額に冷たいモノがあたる。

その気持ちよさに目を閉じる。

「気持ちいい」

って何が私の額に当たっているんだろう?

「……アイビー。熱があるな」

ねつ?

………………ねつ?

「急に朝の冷え込みが深まったから、体調を崩してしまったんだろう。大丈夫か?」

「ねつ?」

「そう」

「ねつ?」

「大丈夫ではないな」

ねつ?

熱が何か思い出そうとしてると肩から提げているバッグがごそごそと動く。

あ~フレムが出たいのか。

その場に座り込んでバッグからフレムを出す。

「てりゅ~?」

目の前にフレムがいる……あ、何だろう目が回る。