軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

211話 あと少し

「不思議な光景だな」

師匠さんの言葉にドルイドさんも笑っている。

視線の先には3匹のスライム。

並んでみると、シエルが変化したスライムがほんの少しだけ大きい。

しかも体の柄はシエルのままなので、ちょっと不思議な存在に見える。

「シエルの柄に似たスライムって存在しますか?」

私の質問に2人が考え込んでいる。

しばらくすると師匠さんが首を横に振る。

「いないと思うぞ。スライムは比較的見る機会が多いが、あんなまだら模様は見たことがない」

まだら?

あれはヒョウ柄に近いと思うけど。

「あの柄の魔物っていますか?」

「アダンダラ以外でか?」

「はい」

「ん~、俺は知らないな。ただ俺も全ての魔物を知っているわけではないから、いないとは言い切れないが」

「この近くにはいないって事ですね」

「そうだな。この周辺の町や村の情報なら任せろ」

頼もしいな。

「ありがとうございます」

3匹の様子を見ていると、ソラがシエルに縦運動を教えているようだ。

ソラが縦にぐっと伸びると、シエルもそれを真似している。

その横でフレムも一緒に伸びて、何故か横にコロンと転がった。

「フレムって、ちょっと抜けてるな」

ドルイドさんの言葉に苦笑いしてしまう。

確かに、体がしっかりしてきたので飛び跳ねることが出来るはずなのだが、いまだに転がって移動している。

何度か飛び跳ねるところを見たが、どうも自分の思っていたところに行けないようだ。

抜けていると言うより、どんくさい。

「気になったんだが」

ドルイドさんの言葉に視線を向ける。

何故か真剣な表情で驚いた。

「透明の魔石が何を引き起こすのか、ソラとフレム、それにシエルは知っていたんじゃないか?」

「えっ?」

「ドルイドもそう思うか?」

師匠さんも?

私が不思議そうに師匠さんとドルイドさんを見比べていると、気付いたドルイドさんが教えてくれる。

「3匹とも、やたらと機嫌がよかっただろう?」

確かにバッグから出した時、いつもと違うから少し不安を感じた。

「あの様子を今から考えたら、何が起こるのか分かっていたから気分が高揚してたんだと思うんだ」

なるほど、確かにありえるかも。

「シエルが変化した時さ、ソラもフレムも驚いた様子もなく喜んでいたからな~。確実にあの魔石でスライムに変化出来ることを知っていたんだろうな」

ドルイドさんに続き師匠さんにも言われて考えるが、シエルが変化した時は驚きすぎて周りを見る余裕はなかった。

あの状況でも周りを確認できる師匠さんはさすがだな。

「アイビー、良かったな。これで町にも村にも一緒に入れるし、宿にも一緒に泊まれるぞ」

「えっ?」

「ん? アダンダラの時は無理だが、スライムだからな」

あっ、そっか。

「大丈夫か?」

私の様子がおかしい事に気が付いた2人が、心配そうに私を覗き込む。

「大丈夫です。いろいろあって混乱してしまって。まだ頭がちゃんと働いていないみたいです」

だって、不意にシエルが魔石を食べるし、震えていると思ったら光りだして。

シエルに何かあったらどうしようと不安に思っていたらスライムになっているし。

心配して驚いて……一気にいろいろな事が起こり過ぎて頭が混乱してしまったのだ。

そしてその衝撃がまだ抜けきっていない。

「確かにシエルの行動には驚いたし、怖かったよな」

師匠さんがそっと私の頭を撫でてくれる。

その優しい手つきにふ~っと1つ息を吐き出す。

「アイビーの周りには非日常が溢れているな」

師匠さんの楽しそうな雰囲気に、ちょっと睨んでしまう。

「うれしくないです!」

「おっ、悪い悪い」

まったく悪いと思っていない顔で謝られた。

師匠さんだから仕方ないけど……事実だし。

「そう言えば、いつ頃この町を出発するんだ?」

師匠さんの言葉にドルイドさんと見つめ合う。

そうか、お金の件も魔石の件も終わったので後は準備が終われば旅立てる。

「そうですね。食料確保が終わればですかね? アイビーはそれでいいか?」

食料確保。

私たちの分だけでなくソラたちの食料確保も必要だから少し時間がかかる。

なんせ、旅の道中にポーションや剣が切れてしまっては大変だ。

「はい」

「おそらく2、3日中には出ます」

「そうか。見送りに行ければいいが、何があるか分からないからな。気を付けていけよ」

「はい。ありがとうございます」

「師匠さんも、体には気を付けてくださいね」

「ありがとう。あっ、忘れるところだった。お前たちどっちに行くんだ?」

どっち?

「ハタウ村に行く予定です。此処から少し移動距離があるのでそこで冬を越そうかと」

「この町から結構な距離があるからな」

そうなんだ。

地図ではそれほど離れていなかったんだけど。

それにしても、地図を頼りにしすぎると痛い目にあいそうだな。

気を付けよう。

「前に言っていただろう、少し気になる情報があると」

「はい。どうなりました?」

「コール町の方だったんだが、全員捕まったと情報が入った。ハタウ村には影響ないだろう」

よかった。

何をしたのかは知らないけど解決したようだ。

「師匠さん、ありがとうございます」

「気にするな。いろいろ見て、学んで帰ってこいよ」

「はい」

「師匠、ありがとうございます」

ドルイドさんと一緒に頭を下げる。

師匠さんはぽんぽんと私だけでなくドルイドさんの頭も軽く撫でた。

「ぷっぷぷ~」

「にゃうん」

「てっりゅりゅ~」

話を聞いていたのか、ソラとシエルとフレムが鳴きながらぴょんと師匠に体当たりをする。

ただ、フレムだけは飛び跳ねて師匠とは全く違う方向へいってしまったが。

その様子に師匠さんの顔がやばくなった。

「……師匠、気持ち悪いです」

「うるせぃ。一言多いわ」