軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154話 問題はギルマスに

あ~、ギルマスさんの顔が引きつっている。

ドルイドさんは絶対に気が付いているはずなのに、無視しているし。

……この場所から逃げ出したいよ。

グルバルの事はギルマスさんに言う必要があるという事で、ギルドにお邪魔したのだが。

ギルマスさんの表情を見ると、申し訳ない気持ちになる。

とはいえ、グルバル関係は頼れる人がギルマスさんしかいないのでこれからもお願いすることになりそうだけど。

「報告は感謝する。だがな~、討伐した数が問題だ!」

「大丈夫だ」

「何が!」

「前と一緒でいいだろう」

ドルイドさんが軽~く言うと、ギルマスさんの目元が吊り上る。

鬼の形相?

「鬼の形相? って何だっけ?」

「ん? アイビーどうしたんだ? 心配しなくても大丈夫だぞ。グルバルを討伐して問題になる事はない」

あぶない。

言葉が口から零れていたみたいだ。

「はい。えっと、ギルマスさん、すみませんがお願いします」

「……はぁ~、まぁ確かに町周辺を動き回っているグルバルを討伐してくれたことには、本当に感謝なんだが……誰が討伐したのかと絶対訊かれるからな、そこだけが問題だ」

ややこしい問題ばかりを持ってきて申し訳ないです。

「前のグルバルについても、まだ処理が終わっていないのに……」

前のグルバル?

ドルイドさんと出会った時のあれかな。

そういえば、謝礼金が出るって話があったな。

「こうなったら極秘の存在に依頼した事にでもするか~」

「なんだそれは?」

「いや、いま思いついた。あっ、隣町から冒険者を呼んだから」

「……ギルマス、1つ1つ話を終わらせてから次へいってくれ。で、冒険者を呼んだ理由は?」

「決まっているだろう。人手不足だ。どう考えても、この町の上位冒険者だけでは対処不可能だ」

「まぁ、そうだな。で、誰が来るんだ?」

「知らん」

「……訊かなかったのか?」

「あぁ、あっちのギルマスはグルバルの事を知っているからな、しっかりした奴らを寄越してくれるさ」

ギルマスさんの話にドルイドさんがため息をついた。

「まぁ、それについてはギルマスの判断に任せる。で、グルバルはどうするんだ?」

「……あ~、忘れようと思っていたのに!」

「いや、駄目だろう」

ギルマスさんが力なく項垂れた。

「極秘の依頼ってことに『さすがに無理があるからな』……無理か」

話し合いの結果、前回と同じ原因にすることが決まった。

グルバルより強い魔物に襲われたんだろうと。

ただ、今回は前回と違って目撃情報はなし。

ドルイドさんが、体を慣らすために森を歩いていて発見したという事になった。

「すみません」

話し合いが終わったので、深く頭を下げる。

ぺしっ!

「いっ!」

ん?

今、何かおかしな音がしたような?

頭をあげると。

「アイビーが謝る事はない。町周辺に出没しているグルバルの問題は早急に対処する案件だったからな。少しでも数が減ったと分かれば、町の住民も安心する」

何故かギルマスさんが、かなり慌てて言葉を紡ぐ。

それを不思議に思うが、ドルイドさんが何も言わないので問題ないのかな?

「役に立てるならうれしいです」

2日前、町のすぐ傍での目撃情報が出てからは不安感は増している。

それがほんの少しでも和らぐのなら、私もうれしい。

1時間後に湖に冒険者を向かわせる事を約束して、ギルドを後にする。

「ドルイドさんにも、ギルマスさんにも、お世話になりっぱなしですね」

森へ向かいながら少しため息をつく。

ギルドに登録すれば……ってダメか。

シエルの事を話すわけにはいかないからな。

「気にすることは無いよ。悪い事をしているわけではないからな」

「そうですけど、ギルマスさんに面倒くさい事を押し付けているようで」

「ハハハ、それがギルマスの仕事だから」

「ちょっと違うと思うのですが」

「そうか? ギルマスって立場は町の厄介ごとの解決役だと思うけど」

……確かに、そういう面もあるような。

大変な仕事だな、ギルドマスターという仕事は。

湖まで戻ると、シエルとソラとフレムが寄り添って寝ている。

太陽があたっている場所なので、気持ちよさそうだ。

ちょっと視線をずらすと、倒れたグルバルが視界に入ってくるがそれは無視。

けして、それらを気にしては、いけない。

「シエル、ありがとう。ギルマスさんが手配して少し後に冒険者が此処に来ることになったから」

寝ているところ悪いが、これからの事を含めて説明する必要がある。

なので、起こしてから予定を説明する。

私の言葉に喉をグルグルと鳴らして、背を伸ばす。

その動きにソラとフレムも目を覚ましたようだ。

「ぷっぷ~」

「てゅゆゆ~」

フレムはまだ半分寝ているのか、いつも以上に声が残念だ。

「ごめんね、起こしてしまって。此処に他の人が来ることになったから移動しようか」

ソラはピョンと飛び跳ねて、私たちの周りをくるくる、くるくる。

少し前まですぐに機嫌が悪くなっていたけど、大丈夫みたいだ。

確かフレムが生まれた辺りからかな?

……もしかして、出産前の不安定な時期だったとか?

あれ?

ソラってメス?

「あのドルイドさん」

「どうしたんだ?」

「スライムって性別あるんですか?」

「性別?」

「はい。フレムを産んだ? のはソラなので。ソラはメスなのかと」

「……スライムに性別があるとは聞いたことがないな」

ないのかな?

それとも一般的には知られていない?

「そうですか」

フレム以外に何かあったかな?

あっ、もしかしたらドルイドさんの大けがを治した事で落ち着いたのかも。

可能性としては、それもあるかもしれないな。

ソラの調子が問題ないなら、気にしなくてもいいのかな?

でも、また同じような症状が出るときがあるかもしれないし……。

だからと言って、無理やりソラの機嫌を損ねる事をするのは間違っている。

とりあえず、また同じ症状が出たら今回と似た条件を探すしかないか。

今は情報が少なすぎる。

「そろそろ移動しないと」

ドルイドさんの言葉に、ソラが勢いよく彼の頭に向かっていくのが見えた。

止めても無駄なんだろうな。

ドルイドさんも、なんだかうれしそうにしているし……いいかな放置で。

「行こうか」

頭にソラを乗せた状態で歩くドルイドさんの後に続く。

フレムは私の腕の中だ。

あれ?

「あの、グルバルの傍にいなくていいのですか?」

「ん? あっ! ……駄目だよな。俺、戻るわ」

やはりグルバルの目撃者として、ドルイドさんは冒険者さん達を待つ必要があるようだ。

頭の上のソラを受け取って、ドルイドさんと一時離れる。

「大丈夫かってシエルがいるから問題ないか。また、あとで」

「はい。捨て場周辺で待ってます」

「あぁ、シエル今日はもう狩りはおしまいな」

「にゃうん」

「いい子だな」

ドルイドさんは、シエルの頭を何度も撫でてから湖に戻っていった。

ピョンとソラが腕から飛び降りて、ドルイドさんとは反対方向へと向かう。

確かに方向はあっているけど、分かっているのかな?

ソラを先頭に捨て場に向かう。

それにしてもシエルの強さはすごかったな。

あれだけの数のグルバルを、あっという間に倒すんだもんな。

隣を歩くシエルを見る。

……かっこよかったな~。

正直最初はちょっと怖かったけど。

だって、シエルの体に返り血がどんどん増えていくんだもん。

あんな光景見たことなかったからな。

「にゃ?」

視線に気が付いたのか、シエルが不思議そうに私を見る。

「かっこよかったな~って思って」

「にゃうん」

尻尾がクルクルと回っている。

どうやら機嫌がかなり良いようだ。

尻尾の動きに風が起こって葉っぱが舞い上がっている。

「シエル、ちょっとだけ落ち着こうか」

「にゃうん」

少し尻尾の動きが落ち着くと、舞い上がっていた葉っぱがふわふわと地面に落ちる。

本当にシエルの尻尾は凶器だよね。

そういえば、今日は牙だけで戦っていたな。

あれだと、どんな魔物にやられたのか大きさぐらいしか分からないだろうな。

もしかしてそれを狙って?

シエルの今までの行動を見ていると、ありえそうだな。

頭が良いからな。