軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

132話 汚れ過ぎは駄目

太陽の光を浴びて、腕を思いっきり伸ばす。

気持ちがいい。

……ただ、いつもより太陽の位置が上だけど。

「はぁ、寝過ごした」

疲れていたのか、起きたら太陽が真上にあった。

久々にやらかしてしまった。

まぁ、仕方ない。

ソラの事があるので少し急いでいるが、期限のある旅ではない。

たまには、こういう日があってもいいだろう。

「ぷっぷ~」

今日もソラは、機嫌よく跳ね回っている。

ここ最近の苛立ちもないようだ。

よかったのだが、本当に治療をしないと駄目な体質なのだろうか。

それだと、旅そのものの進み方を考え直さないといけないのだけど。

もう少し、様子を見てから判断しようかな。

「よし、行こうか」

岩場を抜けて森に戻るが、昨日と同じ状態だ。

ただ、昨日より体の調子はうんといい。

なので、木を跳び越えるのも今はまだ軽やかだ。

ただし、目の前にはまだ一面に倒された木々がある。

途中で疲れるだろうから、急がず確実に前へ進むように気を付けよう。

数時間歩くと、倒れている木が少なくなってきた。

もう少しで、被害があった場所を抜けられるようだ。

その事に気が付き、ホッとする。

そろそろ、足が限界にきていたのだ。

いったいこの1日でどれだけの木を乗り越えてきたか。

「そろそろ、元の森に戻りそうだね」

「にゃうん」

ソラは疲れが出てきたのか返事がない。

見ると跳ね方も少し小さい。

「ソラ、疲れているならバッグに戻る?」

「ぷ~」

力なく鳴いて、私の傍に近づいて来る。

疲れているというより、眠たいようだ。

この眠気は、治療することでも改善されないようだ。

ソラを抱き上げてバッグに入れる。

少しごそごそと動いていたが、しばらくすると寝たのか動かなくなった。

イライラは治療で落ち着くが、眠気は改善されない。

「治療は関係ないって事なのかな? それとも治療が少ない?」

怪我をしている動物を探してみようかな。

町まではまだあるし、少し遠回りしてもいい。

「シエル、少し町まで遠回りしてみようか」

私の言葉に首を傾げるシエル。

急いで町へ行こうとしていたので、今の言葉が不思議なのだろう。

「ソラには治療が必要なのかなって思って。人の治療は後々の事があるから、まずは怪我をしている動物を探そうかと考えたんだけど、どう思う?」

「に~」

シエルのだした鳴き声が、今までと違ったため驚いた。

色々と芸があるなシエルは。

で、今の鳴き声は賛成ではないな。

「反対か」

私よりソラの事を理解していそうなシエルが言うなら、町へ急いだ方がいいのかな?

シエルを見るとじっと私を見ている。

そうだね、町へ急ごうかな。

「遠回りは止めて、まっすぐ町へ行こうか」

「にゃうん」

これには賛成らしい。

とはいえ、雨と風の被害で既に目安にしていた日数ではたどり着けないのだが。

最初の予定では、明日町へ着くはずだったのだから。

地図で確かめたが、ここから順調に行けたとしても3日掛かる。

本当に今回の雨や風はひどかったな。

「もう少し進もうか」

少し休憩してから、今日の寝床を探しながら森を進む。

被害が少なくなってきた場所なので、木の上でも問題なさそうだ。

少しでも寝やすい場所を探そう。

「にゃうん」

シエルの声に視線を向けると、ある巨木を見ているシエル。

あそこが寝床に良いのだろうか?

シエルの頭をそっと撫でてから、巨木に近づく。

「すごいな」

この森の中で見てきた巨木の中でも、一番の大きさだ。

枝の太さもすごい。

「今日はこの巨木にお世話になろうか」

「にゃうん」

木をぐるりと見て回り、1本の枝の下に来る。

太くてがっしりしていて、姿をしっかりと隠してくれるので上から襲われる心配は少なそうだ。

枝の上も考えたが、安全を考えるとこの場所だな。

木の状態を見て、動物の痕跡を探すが問題なし。

見つけたのは小動物の爪痕だけだ。

バッグから土の上に敷くゴザを取り出していく。

土の状態を見るが、乾燥しているので特別な用意は必要ない。

ゴザを2枚重ねて敷いて、その上に大きな布を敷く。

「よし。体を拭ってから上がろうか」

体に付いた汚れをしっかりと落とす。

これを疎かにすると、布の洗濯が大変になるのだ。

自分を終えて、シエルの汚れ落としを手伝う。

「よし、終わり」

布の上に乗って、今度は上半身の汚れを拭っていく。

歩き回って火照った体に、冷たい水で洗った布は気持ちがいい。

「川を見つけたら、洗濯しないとな。汚れた物がいっぱいだ」

雨のために、汚れた布や服が多い。

敷物にしている布も、気を付けてはいるが汚れている。

そして、私も水で汚れを落としてさっぱりしたい。

拭っていても、色々と汚れていくのだ。

ソラ専用のバッグを開けて、声を掛ける。

「ソラ、ご飯を食べようか?」

「ぷ~?」

寝ぼけているのか、語尾を上げて鳴かれてしまった。

「ソラ、ご飯」

もう一度声を掛けても、ボーっとしている。

珍しい事だ。

ソラは食べる事が大好きで、絶対に目を覚ます言葉なのに。

「ソラ? 大丈夫?」

「……ぷ~。ぷっぷぷ~!」

目が覚めたのか、声に張りが戻りバッグの中から外へ飛び跳ねる。

「目が覚めた?」

「ぷぷ~」

バッグから出て、直ぐに周りを見回すソラ。

どうやらポーションを探しているようだ。

やはり、食べる事が好きだよね。

「ちょっと待ってね」

バッグから、ソラの食事用にと拾ってきたポーションを取り出す。

並べ終わった瞬間、食べだすソラ。

食べ方はいつも通りだな。

もう少し、落ち着いて食べてくれてもいいと思うのだが。

「さて、私も食べよう」

いつも通り、干し肉と木の実と果物だ。

残念ながら、シエルが好きな果物は既に食べ切ってしまっている。

それに、今日のシエルはお腹がいっぱいだろう。

森の中で休憩している最中、一度私たちの傍を離れている。

帰って来たとき、かなり満足そうな表情をしていたので狩りが成功したのだと思う。

お腹もポッコリと膨れていたし。

ソラはポーションを食べ終わると、縦の運動を始めた。

そういえば、オトルワ町を出てからこの運動をしていなかったな。

ソラの異様な行動に考えがいっていて、気が付かなかった。

「久々だね、その運動」

「ぷっぷぷ~」

機嫌も良さそうだ。

ん~、やはり治療をしたからだろうか?

もう1回ぐらい治療が出来れば、何か分かるかも知れないな。

「よし、ご馳走様」

食事を終えて、寝る準備をする。

「明日はちゃんと起きないとな」

歯を磨いて、口をゆすぐ。

次にバッグから毛布を取り出す。

これも、洗いたいな。

そうだ、次の町へ行ったらもう1枚毛布を購入しよう。

汚れた時の替えが必要だ。

マジックバッグにはまだ余裕があるから2枚でもいいかも。

「ふ~、歯も磨いたし、寝ようか」

シエルの隣に横たわる。

ソラを見ると、既に寝てしまっている。

いつの間にって感じだな。

体を寝やすい体勢に動かす。

何だか体から埃っぽい匂いがする。

そういえば、今日は風が結構吹いていて砂埃が舞っていたな。

手で髪に触る。

櫛で埃や砂は落とす様にしているが、ざらざらする。

「遠回りになっても、川を目指そう」

うん、気になる。

一度気になりだすと駄目だ。

汚れを落とすまで気にしてしまう。

絶対に川を目指そう。

着る服も無くなってきたし、ちょうどいい。