軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

124話 妥協はしない事

「とりあえず、隣町で奴隷商に行く。条件は問題のない中年男性奴隷だな」

話し合いの結果、やはり奴隷を1人購入しようという事になった。

ラットルアさんの話では王都に近づくほど、危ない考えを持つ者が増えるらしい。

また人が多く集まる広場では、1人だと目立つという理由からだ。

少し抵抗はある、だが今回の様に狙われるなら対策は必要だ。

中年男性が条件なのは、私の父親と似た年齢だからだ。

パッと見た時に親子に見られると、目立たないそうだ。

女性ではない理由は、男性の方が壁になるらしい。

「隣町の奴隷商なら知り合いがいるから手紙を書いておくよ」

シファルさんの言葉にお礼を言う。

そう言えば、彼はこの町の奴隷商の長男とも知り合いだったな。

不思議な交友関係だな。

「俺は条件を纏めておくよ」

「ありがとうございます」

何とか旅の安全を確保できそうだ。

しかし、本当に奴隷を買う事になるとは……いい人がいるといいな。

「アイビー、奴隷を決める時は妥協したら駄目だからな。大事な旅の供なんだから」

「はい」

シファルさんにもラットルアさんにも条件に合わない人や、条件に嵌っている人でも違和感を覚えた場合は選ぶなと言われている。

旅を一緒にする大切な相棒なのだから、慎重に選ぶようにと。

「ソラ、寝ちゃったね」

シファルさんの視線を追うと、私の隣で熟睡中のソラ。

また寝ている。

本当によく寝るな。

「あのスライムってどれくらい睡眠が必要なのですか?」

「睡眠?」

ラットルアさんが困惑した表情を見せる。

「最近、ソラの睡眠時間が長くなっていて。何か問題でもあるのかと心配なんです」

ソラをゆっくりと撫でる。

以前なら目を覚ましてくれたが、最近は撫でても目を覚ますことがない。

安心しているからなのか、それとも違う理由があるのか。

「そもそもスライムが寝ているところを見るのは、ソラが初めてだからな」

ラットルアさんの言葉にシファルさんも頷く。

見ないのかな?

「テイマーぐらいしか見ないだろうな」

そうか、スライムは魔物の仲間だ。

テイマーがテイムして仲間にしない限りは、寝ている姿なんて見ないか。

「でも、スライムの病気なんて聞いた事ないし大丈夫じゃないか?」

「そうだな、スライムが病気になる話は聞いたことがないな。ゴミ処理という重要な役目があるから、確実に話は入って来ると思うが」

よかった。

なら大丈夫かな。

「さて、そろそろ広場に戻るか」

ラットルアさんが腕を上にあげて体をほぐす。

私も体を伸ばすように動かすと、固まっていたようで気持ちがいい。

「俺も一緒に行こうかな。アイビーの夕飯が食べたい」

何だかうれしい言葉だな。

「甘いものでも買って帰ろう。いろいろ考えすぎて疲れた」

ラットルアさんの言葉にシファルさんも賛成している。

確かに、シエルとソラの事で随分と悩ませてしまったな。

「ありがとうございます」

「いいよ。何もせず心配しているだけって言うのは性に合わないからな」

「そうそう、シファルの言うとおり。まぁ、まだ奴隷が決まった訳ではないから完全に安心は出来ないが」

シファルさんの家を出て広場へ向かう。

途中で甘味を購入したのだが、その量が……。

「ちょっと多すぎませんか?」

「えっ? そうでもないだろう」

3人で持っている甘味の量を見る。

どう見ても25人分ぐらいの量があるように見える。

今日はボロルダさんは広場に帰って来ない予定だったはず。

ヌーガさんとリックベルトさんもいない。

「アイビー、この量ならラットルア1人で食べ切れるよ」

「えっ! これ全部?」

「そう。夕飯の後でも大丈夫だって言うよ絶対に。甘味は別腹らしいから」

甘味は別腹。

何処かで聞いたような言葉だけど、何処でだったかな?

まぁ、それより。

購入した甘味を全て思い出してみる。

甘さの強い物もあったはず。

「すごいですね。ちょっと尊敬……は、無いかな」

尊敬はないな。

ちょっと引いてる。

「あっ、ちょっと待ってて。あそこの甘味もお薦めなんだ」

まだ、買うの?

お店に向かうラットルアさんを見送りながら、ちょっと呆れた表情をしてしまった。

「あの店はラットルアのお気に入りなんだ」

「そうなんですか」

3人で両手に甘味を持って広場へ戻る。

その姿を見てセイゼルクさんが呆れている。

「なんだ、その甘味の量は。何かあったのか?」

呆れているが心配もしている。

さすがセイゼルクさんだ。

「私の旅の事で相談に乗ってもらっていたんです」

「あぁ、そうか。大丈夫か?」

「はい」

セイゼルクさんにお礼を言って夕飯の準備に取り掛かる。

何にしようかな。

この時間からだと煮込む時間が足りないな。

そういえば、揚げ物って食べてないな。

唐揚げとか美味しいよね。

……唐揚げ、良いな。

「よし! 唐揚げだ」

お肉に味付けして、揚げるだけだから簡単。

あ~、シファルさんがいるから大量だな。

頑張ろう。

……………………

昨日の唐揚げは大成功だった。

あまり揚げ物は食べないようで、珍しそうに食べていた。

そう言えば、屋台でも揚げ物って少ないな。

甘味で見るぐらい?

あれ?

お肉を揚げた物って……まぁ、気にしちゃ駄目だね。

美味しかったのだから、全て問題なし。

そして、夕飯の後でラットルアさんが消費した甘味の量にドン引きした。

あれは、さすがに。

今、思い出しただけでちょっと胸やけが。

あっ、揚げ物に甘味……ちょっと組み合わせが悪かったかも。

「おっ、アイビーおはよう」

ラットルアさんが、爽やかに挨拶してくる。

胸やけとは無縁なんだろうか?

「おはようございます」

「パン、買って来たよ」

「……ありがとうございます」

朝ごはんもしっかり食べるのか。

何だかラットルアさんってヌーガさん以上にお腹が丈夫かも。

「すぐに用意しますね」

昨日の夜に準備はしてあるので温めるだけだ。

夕飯にガッツリお肉だったので、野菜たっぷりのあっさり味のスープにしておいた。

「おはよう」

セイゼルクさんが、ちょっとお腹を押さえながら起きて来る。

まぁ、唐揚げを大量に食べて甘味をあれだけ食べれば、胃にもくるだろう。

「おはようございます。スープだけにしましょうか?」

「ハハハ、ちょっと食べ過ぎたな。スープだけでよろしく」

全員が起きてきて朝ごはんになったが、パンまで食べたのはラットルアさんと私だけだった。

自分の家に戻ったシファルさんも、きっと大丈夫なんだろうな。

「あっ、アイビーに伝言を預かっていたんだった。昨日、話したっけ?」

セイゼルクさんの言葉に首を横に振る。

何も聞いていない。

「悪い。お金の準備が出来たから、取りに来てほしいそうだ」

とうとうきてしまった。

「えっと、今日のお昼から行きます」

「そうか。朝方、団長と会う約束があるから言っておくよ」

「はい、ありがとうございます」

覚悟しておかないとな。

こう考えるとラットルアさんとシファルさんに、ある程度の金額を聞いておいたのは正解かも。

いきなり、金貨50枚とか言われたら混乱して何かおかしな行動をとっていたかもしれない。

「スープ、おかわりしていいかな?」

お昼からの事を考えると、ラットルアさんの元気な声が今はちょっと恨めしい。

じっと見つめると、不思議そうな表情で見返された。

はぁ、いったい幾らなんだろう。

今から緊張してきた。

そうだ、大金だよね。

もしかして、詰所で大金を渡されるのかな?

ぅわ~、もしそうだったら恐ろしい。

すぐに口座に入れに行かないと。

そうだ、団長さんにお願いしたら商業ギルドまで一緒に来てくれないかな?

さすがに、大金を1人で運ぶのは嫌だ。

というか、怖い。

お願いしてみよう。