軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

984話 道中の冒険者達

テントから出て、背伸びをする。

「アイビー、おはよう」

昨日の見張り役はヌーガさんだったね。

「ヌーガさん、おはよう」

「「おはようございます」」

聞きなれない声に視線を向けると、笑顔の女性冒険者が2人いた。

「おはようございます」

セイゼルクさんが予定していた場所には、王都から来た女性5人の冒険者チームがいた。

彼女達は、有名な洞窟に挑戦しながら旅をするそうだ。

セイゼルクさん達と朝食を食べていると、ガタガタという音が聞こえてきた。

「なんの音だろう?」

「馬車にしては音が大きいな」

お父さんも首を傾げている。

「あっ、ここにいた。皆、おはよう~」

寝泊まりした場所の傍を、檻を引いた馬が通る。

「フェイ隊長か」

セイゼルクさんが片手を上げると、フェイ隊長さんが笑って手を振った。

他の自警団員達も、軽く頭を下げてくれた。

「通り過ぎるみたいだな」

お父さんの言う通り、止まる事なく進む自警団員達。

「ばいばい。王都まで気を付けてね~」

フェイ隊長さんが笑顔で去って行くのを見送る。

「檻があるから、俺達とは別の道だな」

「そうなの?」

セイゼルクさんを見ると、地図を見せてくれた。

「あぁ、俺達が予定している道は少し険しいからあれは通れない。だから、別になる」

王都までの道順をセイゼルクさんが教えてくれる。

「そういえば、少し険しいって言ってたね」

「あぁ、崖になっているんだ」

崖って、少し険しい道に入るのかな?

「そうなんだ」

まぁ、登り慣れているから問題はないけど。

朝食後の後片付けをしていると、冒険者チームのリーダーが声を掛けてきた。

「私達は先に出発します。あぁ、そうだ。王都に行ったらすぐに宿を探した方がいいですよ。戴冠式を見ようとあちこちから人が集まっているから、見つけるのが大変だと思うけど」

「そんなに人が多くなっているんですか?」

セイゼルクさんが聞くと、冒険者チームのリーダーが嫌そうに頷く。

「本当に多いですよ。何処に行っても人がいっぱいなんですから。お昼を食べようと思っても長蛇の列。夕飯を食べようと思っても昼より酷い長蛇の列。あれにはうんざりです」

彼等は、人の多さにうんざりして予定より早く王都を出発したと言っていたな。

そんなに人が多いのかな?

冒険者チームを見送ると、出発の準備をする。

「人が多いのは、ちょっと不安だな」

「王都はもともと人が多い。それがもっと増えているとなると、確かに不安だな」

ラットルアさんも同じ気持ちだ。

彼は人が好きだから、一緒に楽しみそうなのに。

「人が多くなると、危険な奴も増える。その対処に冒険者が駆り出される。冒険者ギルドに所属している俺達も駆り出されるかもしれない。はぁ、不安だ」

あっ、そっちか。

「まぁ、ある程度は仕方ないだろうな」

シファルさんの言葉に、嫌そうな表情をするラットルアさん。

「やっぱり?」

「まぁ、仕事三昧になる事はないよ」

「本当に? 王都の冒険者ギルドには、彼女がいるのに?」

彼女?

「彼女はギルマス補佐なんだから、当たり前だろう」

「そうだけど、人使いが荒いから問題なんだよ」

「たしかに人使いは荒いな」

ラットルアさんとシファルさんが、なんとも言えない表情になる。

「出発しようか」

セイゼルクさんの言葉に、マジックバッグを肩から下げる。

「アイビー。これからは冒険者も多くなる。皆はなるべく外に出さないように」

「わかった」

セイゼルクさんを見て頷くと、ソラ達が入っているバッグに手を添える。

昨日の夜、今日からは皆を外に出す事が難しくなると説明した。

皆も納得してくれたから、大丈夫。

「行こう」

セイゼルクさんを先頭に、王都に向かって歩き出す。

今日からは、シエルの先導もない。

「違和感があるね」

シエルの後ろ姿が見えない事に、不思議な感覚になる。

「そうだな」

隣を歩くお父さんが頷く。

シエルが、いつも前を歩いていたわけではない。

隣だった時も、後ろだった時もあるのにな。

1時間ほど歩くと、複数の人の気配がした。

気配が薄いから、冒険者達だろうか?

「問題はなさそうか?」

セイゼルクさんがお父さんを見る。

「あぁ、大丈夫だろう。俺達の気配に気づいても焦ってる様子はないし、おかしな動きもしていない」

「それならこのまま進もう。まぁ、気を付ける事にかわりはないが」

少し歩くと、冒険者達の姿が見えた。

「おはようございます」

「おはようございます」

セイゼルクさんが声を掛けると、冒険者達からも返事が来る。

冒険者達の様子を窺うと、冒険者達もこちらを窺っている事がわかった。

「崖に向かっているんですか?」

先頭を歩いていた冒険者が立ち止まり、セイゼルクさんに声を掛ける。

「はい。何かありましたか?」

「右側の崖が少し崩れやすくなっているみたいなので、気を付けた方がいいですよ」

「そうですか。ありがとうございます」

お互いに少し頭を下げて通り過ぎる。

「普通の冒険者だったな。良かった」

数分歩くと、ラットルアさんが呟く。

「本当だね」

冒険者を装っている犯罪者の可能性があるから、すれ違う時は注意が必要なんだよね。

今回は、本当の冒険者だったから良かったけど。

って、向こうの冒険者も今頃安心しているんだろうな。

そこから30分ほど歩くと、セイゼルクさんが少し険しいと言った崖に着いた。

「これを登ったらお昼にしようか」

「賛成。とっとと登ろう」

セイゼルクさんの提案に、嬉しそうに答えるラットルアさん。

すぐに目の前にある崖を登り始めた。

「行こうか」

「うん」

お父さんの後に続き崖を登る。

6mほどの崖だったので、すぐに登り切ると体から力を抜く。

「お疲れ様」

シファルさんを見ると、手を振っていた。

私より後に登ったのに……。

「手足の長さの違いかな?」

「ん?」

私の小さな呟きに首を傾げるシファルさん。

「なんでもない。お昼にしよう」

おにぎりの入ったカゴを4個出すと、セイゼルクさんが敷いてくれたゴザの上に置く。

それぞれ好きなおにぎりを取って食べる。

「アイビー」

「はい?」

セイゼルクさんを見ると、1枚の紙を見ている。

「足りない薬草とかあるか?」

薬草?

「ここから王都までの森には、沢山の薬草が生えているんだ。これがその地図だ」

セイゼルクさんから受け取った地図には、薬草の生えている場所が細かく書かれていた。

「こんな地図があるんだね。初めて見た」

「王都でしか売っていないからな」

そうなんだ。

あっ、お肉の臭み取りに使う薬草がある。

この薬草は、なかなか見つけられないんだよね。

他にも、爽やかな香りの薬草もあるし、お父さんが好きな辛みを足してくれる薬草も。

「欲しい薬草があったら採りながら王都に向かおう」

「うん。ありがとう」

これは、楽しみだな。