軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

975話 疲れた

お父さんと私とセイゼルクさんが水辺の右側を、シファルさんとヌーガさんとラットルアさんが左側を調べる事になった。

「魔物の痕跡だけではなく、おかしい物を見つけた場合も声を上げてくれ」

セイゼルクさんの言葉に全員が頷くと、周りを警戒しながら魔物の痕跡を探す。

「何もないな」

「あぁ。足跡一つ見つけられないのは変だな」

セイゼルクさんが不思議そうに言うと、お父さんも首を傾げる。

数十分探しても痕跡1つ見つけられなかったため、シファルさん達と合流する。

「どうだった?」

セイゼルクさんの問いに、シファルさんが首を横に振る。

「何もない」

「そっちもか」

セイゼルクさんが水辺にあった足跡を見る。

「セイゼルク。倒した魔物から必要な物を採って移動しよう。このままだと、この辺りで夜を過ごす事になる」

お父さんの言葉に、セイゼルクさんが頷く。

「そうだな。さすがにこの辺りで夜を過ごすのは危険だ」

もう1匹、似たような魔物がいるかもしれないからね。

倒した魔物の下に戻ると、シファルさんとヌーガさんと私が魔物の特徴を紙に書き出す。

それが終わると、セイゼルクさんとお父さんとラットルアさんが魔物の前脚や後ろ脚、牙や毛や肉の一部を採る。

採った物を空のマジックバッグに入れると、全員から溜め息がこぼれた。

「なんだか、凄く疲れたな」

ラットルアさんの言う通り、疲れた。

「あっ、セイゼルク。洞窟の特徴も書き出しておこうか?」

シファルさんがセイゼルクさんを見る。

「そうだな、悪いが頼む。洞窟の傍で突然変異した魔物が出たんだ。関係があるかもしれない」

あの洞窟と魔物か。

なんだか、嫌な感じだな。

「書き終わった。移動しようか」

シファルさんが数十枚の紙をマジックバッグに入れると、セイゼルクさんを見る。

「ありがとう。とりあえず……村道に出ようか。シエル、頼んでいいか?」

「にゃうん」

先頭を歩きだすシエルとセイゼルクさん。

続くように、私やお父さん達が歩きだす。

「ぷ~」

んっ?

少し元気のない鳴き声が気になりソラを見る。

「どうしたの? 疲れた?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

ソラだけではなく、フレムもソルも鳴き声に力がない。

「バッグに戻ろうか」

立ち止まって皆をバッグに入れる。

「大丈夫か?」

お父さんを見ると、少し心配そうな表情になっている。

「大丈夫だよ。何度も緊張して疲れたんだと思う」

村道に向かって無言で歩く。

いつもより皆が早足なのは、少しでもあの場所から離れたいからだろうな。

「村道が見えた」

セイゼルクさんの言葉に、大きく息を吐き出す。

「良かった」

村道に出たからといって、絶対に安全とは言えない。

でも、あの場所から離れたと実感出来た事で、体から無駄な力が抜けた。

「あと少し王都に向かって歩こう。この辺りは、木々が多くて見通しが悪いから」

セイゼルクさんが私を見るので「大丈夫」と頷く。

それから20分。

高い木が少なく、少し開けた場所を見つける事が出来た。

「ここでいいな」

開けた場所の真ん中で立ち止まると、私達を見たセイゼルクさん。

「あぁ、あと1時間もしたら真っ暗になる。ここに決めよう」

お父さんが肩からマジックバッグを下ろす。

「よしっ。ヌーガは火を起こしてくれ」

セイゼルクさんがヌーガさんを見る。

「分かった」

「シファルとアイビーは夕飯の準備で、残りは寝床を用意しよう。いいか?」

セイゼルクさんが私達を見るので頷く。

「アイビー、始めようか」

「うん。もう時間が遅いから、出来た物を温めるぐらいでいいかな?」

こういう時のために、調理出来ている物も用意してある。

「もちろん。何があるんだ?」

肩から下げたマジックバッグを下ろし、中からスープの入ったお鍋と肉と野菜を煮込んだ料理が入った鍋を出す。

「おいしそう」

鍋の蓋を開けたシファルさんが嬉しそうに笑う。

「火を点けたぞ」

ヌーガさんにお礼を言って、お鍋を火にかける。

火加減を調整すると、葉野菜でサラダを作り、パンを軽く焼く。

「アイビー、スープも煮込み料理も温まったぞ」

シファルさんが、スープをかき回しながら私を見る。

「ありがとう」

味見をして、スープには少し塩を足す。

煮込み料理は問題なし。

「夕飯が出来たよ」

「こっちも終わった。いい匂いだ」

セイゼルクさんが嬉しそうに鍋の中を覗き込む。

簡易テーブルと椅子を出すと、料理をお皿に取り分ける。

「「「「「いただきます」」」」」

温かいスープが体に染み渡る。

今日は、色々あったから温かい料理が本当に嬉しい。

「「「「「ごちそうさま」」」」」

皆で手分けして後片付けをするのであっという間に終わり、食後のお茶を楽しむ。

「明日からの事を話そうか」

セイゼルクさんを見ると、地図を見ていた。

「王都までは後どれくらいだ?」

お父さんの質問にセイゼルクさんが少し考える。

「何もなければ5日で着く」

何もなければ、か。

「村道を歩くのか?」

シファルさんを見て首を横に振るセイゼルクさん。

「いや、見つからなかった魔物を探しながら行こう。あんな魔物が王都の近くで見つかったら大騒ぎになる」

あの魔物を探しながらか。

「皆に報告しておく事がある。倒した魔物を調べて分かったんだが、あの魔物は動いている時と止まっている時では足跡が変わるかもしれない」

シファルさんがマジックバッグから数枚の紙を出す。

「あの魔物には、大きな爪が2本あっただろう?」

シファルさんの言葉に全員が頷く。

「その爪周辺の皮膚が異常に硬かったんだよ。他の爪の周辺は、あまり使っていないみたいに軟らかかった。探す足跡は、たぶん……こんな感じだと思う」

シファルさんが、予想出来る魔物の足跡を描き私達に見せる。

「水を飲む時は前のめりになる。だから、いつもは使っていない部分も地面について跡を残したんだと思う。まぁ、予想だけどな」

「はぁ。探していた足跡が違ったという事か」

頭を抱えるセイゼルクさん。

シファルさんから紙を受け取る。

こんな足跡はなかった筈だけど……。

草木が倒されていた部分はあった。

でも、あそこにあったのは他の魔物の足跡だった。

「俺にも見せてくれるか?」

ラットルアさんに紙を渡す。

「この足跡、俺達が調べた方になかったか?」

全員がラットルアさんを見る。

「そんな跡が、あったか?」

ヌーガさんが首を傾げる。

「木に魔物の痕跡を見つけた時だ。見つけた痕跡は、探していた魔物ではなかったけど。痕跡のあった傍の地面に、これに似た形を見た気がするんだ」

ヌーガさんとシファルさんが首を傾げる。

「悪い。分からない」

「俺もだ」

シファルさんとヌーガさんは、見なかったのかな?

「そうか。違うのかな? でも、似ていると思うんだけど」

「見た可能性があるんだな?」

セイゼルクさんがラットルアさんを見る。

「うん。ただ、絶対そうだとは言えない」

「分かった。というか、足跡があって良かったよ。ない方が異常だからな」

確かに。

足跡を残さない魔物がいたら、怖いよね。

「今日はもう、寝ないか? 疲れたよ」

お父さんの言葉に話し合いは終わり、見張り役のヌーガさんとラットルアさんを残して寝る準備をする。

「明日は早くから移動するの?」

セイゼルクさんを見ると首を横に振った。

「魔物と戦う事を考えたら、しっかり疲れを取った方がいい。だからゆっくり寝ていいぞ」

「分かった。お休み」

ただ、こんな状態でゆっくり寝られるかな?