軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

965話 怒る3匹

すぐに行こうと、町を出て捨て場に向かう。

旅の準備も兼ねて、空のマジックバッグも複数持ってきた。

ある程度、町から離れるとソラ達をバッグから出す。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

嬉しそうに私とお父さんの周りをと飛び跳ねる3匹。

「にゃうん」

シエルも森に来られて嬉しそうだ。

「にゃうん」

「どうしたの?」

私の質問に、森へと視線を向けるシエル。

「狩りに行く?」

「にゃうん」

「分かった。気を付けてね」

シエルが森の奥に走って行くのを見送ると、周りを見る。

「随分とゴミが片付けられたね」

前に捨て場に来た時は、捨て場から溢れたゴミが木々の間で山になっていた。

でも今は、その数が減っている。

「随分と頑張っているみたいだな」

お父さんが周りを見て感心したように頷く。

確かに、かなり減っているもんね。

「お父さん、人がいるみたい」

ゴミの様子を見ながら歩いていると、捨て場に人がいる事に気付く。

「どうする? 色々なスライムがいると理解され始めたから、ソラ達を見られても大丈夫だとは思うが。食べているところを見られるのは駄目だと思う」

「うん」

捨て場のほうから感じる気配は1人分。

「なんだか不安定な気配だね」

「そうだな。嫌な気配ではないが」

お父さんの言う通り、不安定な気配だけど嫌な印象は受けない。

ただ、ゆらゆらと揺れているように感じる。

「ちょっと様子を見るか」

お父さんの判断に頷き、3匹に視線を向ける。

「ソラ、フレム、ソル。人がいるから静かにね」

ソラ達が頷くのを見てから、お父さんとゆっくり捨て場に行く。

木々に隠れながら近付くと、捨て場の傍に立つ男性が見えた。

「彼だな」

お父さんが少し警戒した声を出す。

「何をしているんだろうね?」

捨て場の傍に立っている男性。

しばらく様子を見るが、特に何かしているわけではないようだ。

男性の視線の先を見ても、気になる物はない。

「ソラ」

男性を見ていたソラが私を見る。

「あの男性は、危険かな?」

私の質問に、男性に視線を戻したソラ。

そしてもう一度私を見た。

「揺れないという事は、大丈夫なんだろう」

お父さんの言葉に頷く。

「行こうか」

お父さんと一緒に、隠れていた場所から出る。

「すみません」

お父さんの声に男性が私達に視線を向ける。

「あっ」

男性は、私の傍にいるソラ達に気付くと小さな声を上げる。

そして泣き出してしまった。

「えっと……」

お父さんが困った表情で、助けを求めるように私を見る。

私は「無理」という気持ちを込めて首を横に振る。

「大丈夫ですか?」

「はい、すみません」

お父さんを見て泣きながら謝る男性は、ソラ達に視線を戻すと悲し気に笑った。

「私にも、いたんです。トトナが」

私にもいた?

「あなたはテイマーですか?」

お父さんの言葉に、フラフさんの話を思い出した。

彼女は、「教会の化け物が殺されたと分かった時に、テイマー達を監視していた者達が証拠を消そうとしてね。テイマー達は何とか助け出せたんだけど、スライム達は駄目だった」と言った。

「トトナ」は殺された彼のスライムだ。

「はい、そうです」

泣きながらソラ達を見る男性。

フラフさんは「新しいスライム達をテイムして捨て場の管理を始めた」と言っていたけれど、男性の傍にスライムはいない。

家にいるんだろうか?

「新しい子はいないんですか?」

お父さんが少し複雑な表情をしながら男性に聞く。

「いません。このままでは駄目だと分かっているんですが、新しい子をテイムしたらトトナが悲しみそうで」

ソラ達を見る。

もし、ソラ達が殺されたら?

新しいスライムをテイム出来るだろうか?

「無理だ」

私の魔力量の問題ではなく、気持ち的に出来ない。

「ぷ~」

ソラの大きな鳴き声に体がビクリと震える。

「えっ?」

ソラを見ると男性の前に行き飛び跳ねている。

「ソラ?」

ソラだけではなくフレムも男性の傍に行くと同じように飛び跳ねる。

それは慰めているという感じではなく怒っているように見える。

「ちょっと、ソラ、フレム。駄目だよ」

「ぷっぷ~」

「てっりゅ~」

2匹を止めようとするが、お父さんは首を横に振る。

「えっ? どうして?」

「少し様子を見よう。ソラ達がどうして怒ったのか、きっと意味がある筈だ」

怒っている意味?

男性の前で何度も飛び跳ねるソラとフレム。

「あの、えっ? どうしたら?」

戸惑う男性は、困った表情で私とお父さんを見る。

それに肩をすくめるお父さん。

「すみません。どうやらあなたの考えに怒っているようです」

まぁ、男性の言葉を聞いた後に怒りだしたからそうなんだろうけど。

でも亡くして悲しんでいるのに怒るのは駄目だと思う。

「ぺふっ」

そういえば、ソルはどうしたんだろう?

ソルの鳴き声に視線を向けると、触手が森を指していた。

「森? 何かあるのか?」

「ぺふっ」

ソルの行動に首を傾げたお父さんは、少し考えると私と男性を見た。

「行ってみましょうか」

「えっ、いや、俺は」

戸惑う男性の前で飛び跳ねるソラとフレム。

「行ってみませんか?」

お父さんの言う通り、ソラ達の行動には意味がある筈。

困った表情をする男性に近付き背を軽く押す。

「分かりました」

男性は、お父さんと私を見て小さく息を吐くと森を見た。

ソルを先頭に森を進む。

男性は、懐かしそうに周りを見るとほんの少し微笑んだ。

「思い出があるんですか?」

お父さんを見て恥ずかしそうに笑う男性。

「トトナはやんちゃで、最初の頃は大変だったんです。木に登っては下りれなくなるし。川には流されるし」

男性の話にソラを見る。

川に流されるのはソラだけではなかったんだ。

「この森でよく遊びました」

「そうですか」

しばらく森を進むと、大小さまざまな岩が転がっている場所に出た。

傍には、少し流れの速い川がある。

ソラが、川に飛び込まないように気を付けないと。

「あぁ、ここは」

男性が嬉しそうに大きな岩の傍に寄る。

「この岩にも思い出が?」

「はい。トトナはあまり飛び跳ねるのが上手く無くて。でも、頑張ってこの岩の上に飛び乗ったんですよ。でも、着地に失敗して転がってそのまま川に落ちて流されて……あれは、本当に大変でした」

トトナというスライムは、楽しい子だったんだな。

「あっ」

ソラが川を気にし始めたので、抱き上げる。

「ぷっ」

不服そうに鳴くソラ。

「川に飛び込むのは駄目」

「ぷ~」

私とソラのやり取りを見て、ふわっと男性が笑う。

「忘れていました。沢山、本当に沢山思い出があったのに」

男性が川を見る。

「何度この川に落ちたか」

溜め息を吐く男性。

でも、表情は笑っている。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

ソラ達の満足そうな鳴き声に、男性が笑う。

「ありがとう。泣いていたらトトナは怒るかな?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

男性の言葉に頷く3匹。

「そうか。怒るか」

男性はソラ達を順番に撫でると、私とお父さんに向かって頭を下げた。

「ありがとうございます」

「いえ。こちらこそ無理矢理ですみません」

お父さんが男性に頭を下げたので、私も慌てて下げる。

「ソラ達の行動にはきっと意味があると思ったので止めませんでした」

「そうでしたか」

優し気にソラ達を見る男性。

もう、この男性は大丈夫だね。