軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

944話 怒り

お父さんとマジックバッグに放り込んでいた服を畳んでいると、ジナルさんが呼んでいるという伝言がきた。

「これからの事だろうな」

お父さんが、宿の人に返事をするとマジックバッグを手にした。

「何か持って行くの?」

「あぁ、これだ」

お父さんが手にしたのは、ソルが大量に作った魔石。

「この子達は、いつも必要な物をくれる。だから、これもそうなのかと思ってさ」

確かに、いつもどうやって知るのか分からないけど必要な魔石をくれる。

「いつも思うけど、不思議だよね」

「そうだな」

お父さんがソラ達を見る。

「なぜ、必要な魔石が分かるのか。フレムやソルに聞いたけど、この魔石を作ろうと意識して作ったわけではないそうだ」

「そうなの?」

「あぁ、ただ魔石が必要だと思う事はあるらしい」

「やっぱり不思議だね。お父さん、1つ貸して」

ソルが魔石を作った時は、他に用事があったからマジックバッグに入れただけでどんな魔石なのかよく見ていなかった。

「はい」

お父さんから魔石を受け取ると、灯りに翳す。

色は黒で透明。

あれ?

魔石の中心部分が透明ではないみたい。

「これまでとはまた違った魔石だね」

「あぁ、中心部分が透明ではなく真っ黒なんだ。こういうのは、初めてだな」

お父さんは、魔石を調べていたのかな。

「そろそろ行こうか」

あっ、ジナルさんに呼ばれているんだった。

「魔石はそのまま持って行くの?」

「いや、マジックボックスに入れていくよ」

お父さんがマジックバッグから、小さなマジックボックスを出すと魔石を入れる。

「この宿には、関係ない者も泊まっているだろうから気を付けないとな」

「うん」

あすろでは、私達以外の人は泊まっていなかった。

しかも、私達の事がバレても問題ない人が店主だったから少し気が緩んでいた。

此処では、気を引き締めないと駄目だね。

部屋を出ると、鍵を閉める。

1階に行くと、ラットルアさんがいた。

「アイビー、ドルイド。こっちだ」

「もしかして待っていてくれたのか?」

お父さんが聞くと、彼は頷く。

「会議室まで、案内が必要だろう?」

ラットルアさんが歩きだすので、あとに続く。

「「ありがとう」」

お父さんと私のお礼に、楽しそうに笑うラットルアさん。

なんだか、機嫌が良いように見える。

「何かあったのか?」

お父さんも感じたのか、ラットルアさんを見る。

「んっ? 特に何もないけど? どうしてだ?」

「機嫌が良さそうだから」

「あぁ、これからくそったれ共を叩き潰せるのかと思うと、つい」

「なるほど」

お父さんが納得した様子で頷くと、2人で顔を見合わせて笑った。

その笑った2人の表情を見て、少し驚く。

二人とも、呪具に関わっている者達に凄く怒りを抱えているみたい。

笑っているのに目が凄く怖い。

もしかして、セイゼルクさん達やジナルさん達もかな?

……たぶん、同じなんだろうな。

ラットルアさんの案内で、会議室に着く。

宿が広いからなのか、会議室が少し遠い。

会議室に入ると、ジナルさんとセイゼルクさんが深刻な表情で話していた。

シファルさんとヌーガさんは、お菓子を食べながらお茶を飲んでいる。

「いらっしゃい。おいしいよ、食べる?」

シファルさんの言葉に、笑ってしまう。

ジナルさん達を見て緊張したけど、シファルさんがいつもと変わらないから体から力が抜けた。

「どうした?」

「いえ」

ヌーガさんに薦められ、彼の隣に座る。

お父さんは私の正面に座ると、お菓子に手を伸ばした。

「アイビーも食べたらどうだ?」

そういえば、夕飯がまだだったな。

気付いたら、お腹が空いてきた。

お菓子を1つ手に取る。

しっとりした生地に、果物を作ったソースが挟まっているみたい。

「いただきます」

一口食べると、濃厚な甘味が広がる。

ただ、

「甘い」

まさか、こんなに甘いお菓子だったなんて。

急いでヌーガさんが入れてくれたお茶を飲む。

「確かにこれは少し甘すぎるな」

お父さんがお茶を飲むと、食べかけのお菓子を見る。

「悪い。このお菓子は、甘さが2種類なんだ。右側が甘さ控えめで、左側が甘めだ」

シファルさんが甘さ控えめと言った右側からお菓子を取る。

ちょっとドキドキしながら、一口食べる。

「おいしい」

甘さがちょうどいい。

「こっちだったら、うまいな」

お父さんも気にったのか、もう1つと手を伸ばしている。

「悪い。待たせたな」

ジナルさんが私達の傍に来ると、左側のお菓子を口に放り込んだ。

それが食べ終わると、もう1つ左側から取り今度はゆっくりと食べ始めた。

ジナルさんって、甘味の強いお菓子が好きだったっけ?

「集まってもらったのは、これからの事を話したいからだ。敵は今、俺が属している組織の者を捜し回っている。俺やオグートそれにラリスが死んだと思っているから、この機会に組織の者達を町から排除したいらしい。そのお陰で、自警団に入り込んでいた裏切り者が判明した。まぁ、全ての裏切り者が分かったわけではないが、残ったとしても僅かだろう」

フォロンダ領主の組織を潰すつもりなのか。

「これからの事だが、敵の動きに合わせてこちらも動く事にした。自警団にいる裏切り者は、組織の仲間が始末するので気にしなくていい。俺達は、呪具がある場所を見つけて全て潰していく。おそらく捕まっている者達がいるので、彼等の救出もする。ドルイド、今日ソルが反応する場所を探していたよな? 分かった場所はあるか?」

「呪具に反応した場所は2ヵ所だ」

ジナルさんが真剣な表情でお父さんを見る。

「教会が作った研究所と光の森だ」

「研究所? あそこは既に潰したと聞いたが……」

ジナルさんの眉間に深い皺が刻まれる。

「建物は残っていた。おそらくそれを利用しているんだろう」

お父さんの言葉に、ジナルさんが頷く。

「セイゼルク達は、呪具が関わっていると分かっている場所の周辺を調べていたよな? 何か分かった事はあるか?」

セイゼルクさんがジナルさんの言葉に頷く。

「自警団員が、よく見回りに来ていたそうだ。建物の近くにある店の店主が『建物の中もしっかり見てくれているから安心だ』と、言っていた」

自警団員の見回り?

裏切り者がいるから、安心は出来ないよね。

「建物に、人や大きな荷物が運び込まれるところを見た者はいなかった。行方不明の者達がいる可能性は低いな。それと、自警団員が女性を連れ込んだという噂があった」

女性を連れ込んでいる?

「噂だったが、実際に見た者を探し出す事が出来た。ほとんどの者は、フードを深く被っていたせいで女性の顔を見てはいなかった。でも、ある子供がしっかりと見ていたんだ。その子曰く、とても綺麗なお姫様だったらしい」

綺麗なお姫様?

「とても綺麗な服を着ていたからそう思ったみたいだな。ついでにその子は、その綺麗なお姫様を別の場所でも見た。場所は、父親の仕事場である自警団詰め所。『フォリア様』と呼ばれていたそうだ」

フォリア様?

貴族の女性かな?

「髪の色は薄い緑で腰の辺りまで長く、瞳は濃い緑だ」

セイゼルクさんの話を補足するようにラットルアさんが女性の見た目を言う。

「くっそ」

えっ?

ジナルさんを見ると、嫌悪感を示す表情になっている。

「知っているのか?」

お父さんの言葉に、頷くジナルさん。

「フォリア・スチューリス侯爵令嬢。父親は、王族騎士団副団長だ」

凄い立場の人が関わっているという事かな?

「父親が呪具を?」

セイゼルクさんの言葉に、ジナルさんが首を横に振る。

「いや、副団長は問題ない。問題は前侯爵だ。彼も副団長だったんだが、不滅の騎士団を作ると言いだして……まさか、呪具を使って作るつもりだったのか?」