軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

939話 助けて欲しい

「ありがとう、えっと……ドルイドさん? 助かったわ。あとで値段を教えて。それで、覚悟はしているけど分割で払えないかしら? 一括では払えない値段だと思うから」

ラリス団長さんがお父さんに頭を下げる。

「あぁ、大丈夫。というか、たぶん一括で払える値段だから」

前に、値段を付けるなら上級ポーションの2倍ぐらいだと話し合ったよね。

「はっ? 一括で払える? いくらなの?」

「上級ポーションの2倍だな」

村や町によって上級ポーションの値段が違う為、値段をはっきりとは言えないんだよね。

「2倍? えっ? それはないでしょう? もっと取りなさいよ! 瀕死だったジナルが既に立ち上がれるのよ? もうあんなの奇跡のポーションでしょう? 2倍では駄目よ! 10倍でも安いぐらいだと思うわ」

「いや、10倍は――」

「ドルイドさん、奇跡のポーションなんだからもっと高くないと駄目! そんなに安かったら、やばい連中に目を付けられるわよ」

「そうよ。さすがにその値段はないわ」

ラリス団長さんにフラフさんが参加する。

そんな女性達に、困った様子を見せるお父さん。

「ジナル!」

「いや、俺に振られても。まぁ、そうだな。5倍で手をうとう。それにあのポーションについては極秘で頼むぞ」

ジナルさんの言葉に不満そうな表情のラリス団長さんとフラフさんが頷く。

「変な交渉だな」

シファルさんの言葉に、笑ってしまう。

「うわっ、なんだこれ、血か? 何があったんだ?」

宿の出入り口で男性の慌てた声が聞こえた。

「あっ、この声はバンガだな。バンガ、食堂だ」

お父さんの声が聞こえたのか、慌てた様子でバンガさんが食堂に飛びこんで来る。

「ドル兄、無事か?」

「あぁ、大丈夫だ。怪我をしたのは俺ではないからな」

「良かった。あれ? あの血は誰のだ?」

バンガさんが食堂を見回して首を傾げる。

「えっ? それは私とジナルの血よ」

ラリス団長さんの言葉に不思議そうな表情をするバンガさん。

「確かに、傷痕はないが服は血まみれだな」

バンガさんの言葉に、全員があっという表情をする。

そういえば、ラリス団長さんもジナルさんも傷が全くなかったね。

酷い傷だと上級ポーションを使っても傷痕が残ったりするのに。

「あの出血量で元気だな」

聞いた事がない男性の声に、全員に緊張が走る。

「あぁ、悪い。俺の仲間だ。今日、村に着いたんだ」

食堂に、坊主頭の男性が姿を見せる。

「バンガの仲間のジックか?」

ジナルさんの言葉に頷くバンガさんとジックさん。

「えっと……この状況で頼むのは申し訳ないんだけど」

少し戸惑った様子のバンガさんに首を傾げる。

「ジックの様子を見て欲しいなと思って」

様子?

あっ、彼は呪具を持ち歩いているんだった。

ソルの出番だね。

「お父さん」

ここにソルを連れて来るのかな?

それとも会議室に移動した方がいいのかな?

「ドルイド、アイビー」

お父さんに視線を向けると、ジナルさんから声が掛かった。

彼に視線を向けると、真剣な表情をしている。

「悪いんだけど。皆を、ここにいるラリス団長達に紹介してくれないかな? そして、アイビーに協力を求めたい。というか、助けて欲しい」

「えっ?」

戸惑っていると、お父さんが私の肩に手を置いた。

「話せるだけでいい説明をしてくれ」

お父さんの言葉に頷いたジナルさんは、少し考えると私を見た。

「呪具は人の命を利用して作られている。そしてこの村で、新たな呪具が作られていた」

バンガさんとジックさんの息を呑む音が聞こえた。

二人に視線を向けると、顔色が悪い。

どうしたんだろう?

「人が消えていただろう? 原因は呪具を完成させる為だった。呪具の……。多くの子供が利用されている」

ジナルさんの様子から、多くの子供を利用する原因があるんだろう。

でも、私が知る必要はないと思ったのかな。

それにしても子供達の命で呪具を作るなんて、最低。

「ドルイドから預かったポーションは、助け出した子供達に使った。上級ポーションでも治せなかったから。最後の1本はオグートに」

お父さんがジナルさんにどれだけのポーションを渡していたのか知らない。

前に許可を求められたけど、お父さんが必要だと考えるなら自由に使って良いと言ったから。

でも、今度からお父さんが渡す2倍? いや、3倍は渡そう。

「ここにいる者の中で揺れた者がいたら、俺がすぐに処理をするから安心して欲しい」

ジナルさんの言葉にラリス団長さん達やバンガさん達が首を傾げる。

意味が分かるのは、ソラの能力を知っている者達だけだろうな。

「アイビー、どうする?」

「私は良いよ。誰かを助けられるなら」

私の言葉にホッとするジナルさん。

「あれ? ジナル、あのポーションって……」

セイゼルクさんが複雑な表情でジナルさんを見る。

「なんだ?」

「通常より量が少なくても効果が出たよな? さっき、1本使ってなかったか?」

「あっ!」

セイゼルクさんの言葉に目を見開くジナルさん。

あぁそうだった。

ソラ達のポーションは、少ない量で効果がでたっけ。

だから私とお父さんが持っているのは、小分けしたソラ達のポーションだもんね。

「ジナルには、小分けせずに渡したな。もしもの時を考えて」

つまり、1本で数人が治療出来るって事だね。

お父さんがジナルさんを見ると彼は頭を下げた。

「悪い。慌ててたから、いつも通り使ってた。待てよ……適量を使っていたら、俺もラリス団長もあんな状態になる事はなかったのか?」

「いや、切られていたからあの状態にはなっただろうけど、すぐに治療が出来た筈だな」

ジナルさんの呟きに、セイゼルクさんが笑って言う。

「まぁ、全員が無事だったんだから……無事なんだよな?」

まさかポーションがなくて誰かが?

シファルさんの言葉に、全員の視線がジナルさんに向く。

「いや、大丈夫。誰も死んでいない筈だ。裏切り者は知らないがな」

まぁ、裏切り者まで助ける義理はない。

というか、死んでも自業自得だよね。

呪具を作る為に、子供を殺しているんだから!

「えっと。それで皆は?」

ジナルさんが私を見るので笑って頷く。

「ここに連れて来るね」

「一緒に行くよ」

お父さんと食堂を出ると、シファルさんが追って来た。

それに首を傾げる。

「どうしたの?」

「ジナル達を襲った者達が、ここを襲うかもしれないだろう?」

あっ、その可能性があるのか。

階段を上がって行くと、ラットルアさんが下りて来た。

「何かあったのか? 下の騒動に気付いて子供達が怖がっていてさ。ようやく落ち着いたところなんだけど」

「ジナルと自警団のラリス団長が大怪我をした状態で来たんだ。怪我は、ソラのポーションで治療したから大丈夫。あと森で会った自警団のオグートとバンガの仲間が来た。ソラに問題ないと判断してもらうまで部屋にいた方がいい」

「分かった。子供達と部屋にいるよ」

シファルさんの説明に頷くと、ラットルアは3階に戻る。

「ラットルア。荷物を整理しておいてくれ。移動するかもしれない」

部屋に入るラットルアさんにお父さんが声を掛けると神妙な表情を見せる。

「分かった。子供達にも説明しておく」

私も荷物を整理しておこう。

いつでも移動出来る様に。

部屋に戻ると、ソルがぷるぷると嬉しそうに震えながら待ち構えていた。

きっと呪具の魔力に気付いたのだろう。

それにしても、

「なんだかソルを見ると力が抜けるな」

シファルさんの言葉に、私もお父さんも笑ってしまう。

やっぱりそう思うよね。