軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっと豪華な装備品

「すげー、魔導鞘だ」

「いつかはディックバルトさんも手に入れるとは思っていたが……こうしてみると本当に騎士様みたいだなぁ」

「見た目はな……」

その日、伐採任務の手伝いを終えてギルドに戻ってくると、珍しく大手パーティー達が顔を突き合わせていた。

“収穫の剣”と“若木の杖”だ。団長のディックバルトと副団長のヴァンダールという、なかなか珍しい組み合わせである。

「なんだなんだ、随分と珍しい面子だなぁ……あ、エレナこれ頼むわ」

「はい、任務完了ですね。 ……“若木の杖”のヴァンダールさんが、“収穫の剣”のディックバルトさんのために魔導鞘を作ったんだそうですよ。注文があったとかで」

「へえ、魔導鞘作れるのか。すげーな」

「はい、こちら今回の報酬になります」

「どーもどーも」

どうやら魔道具職人でもあるヴァンダールは、金のあるギルドマン向けに様々な自作装備品の販売などもしているらしい。

前からちょくちょく細々とした魔道具を作って配ったり売ったりしているのは見かけていたが、魔導鞘はなかなか良いもんだな。

「――うむ。俺のグレートシミターにジャストフィットする素晴らしい鞘だ――……滑らかに挿入でき、それでいて緩くない――」

「……ご満足いただけたなら何よりです、はい」

ディックバルトの背中に装着された大きな鞘。それは2m弱はあろう巨大なグレートシミターを収納できるこれまた大きな鞘なのであるが、新しく用意されたそれはただの鞘ではない。

「――ヌンッ!」

「おおおー」

「抜刀できた」

「やっぱ格好良いなぁ」

刀剣の柄を握り、魔力を通してひねるだけで……鞘自体がパカンと開いてくれるのである。

ロングソードも、そしてそれを超えるサイズのグレートシミターも、巨大な刀剣として“抜刀し難い”という宿命を抱えている。

魔力制御によって抜刀を瞬時に行うことの可能な魔導鞘といえば、全ての剣士の憧れの品と言っても過言ではないだろう。当然コストが高いので、そこらのギルドマンにはなかなか手が出せるものではない。装備できるのは軍人でも上の方の人か、騎士かといったところだろう。

「――うむ、そして納刀はそのまま開いた鞘にぶつけるように――……か」

本のように開いた鞘にグレートシミターを戻してやれば、再び鞘が閉じて納刀が完了する。

……こういう長物は抜刀ひとつにしてもすっげえ練習がいるんだよなぁ。しかも習熟してもやっぱり難しいもんだから、魔導鞘というのはある程度強くなった剣士にとっては必ず購入を考えなければいけないアイテムなんだろう。

その点バスタードソードは良いぞ……無駄に長くないからな。ちゃんと腰に装備できるんだ……。

「――素晴らしい魔道具だ。ヴァンダールよ……あるいはお前こそが、俺の鞘だったのかもしれんな――」

「あ、光栄です。お金はいただきましたのでそれでは失礼します……」

ヴァンダールは何かを恐れるようにサーッとギルドから退散した。英断という他ない。

「ようアレクトラ。ディックバルトがデカい買い物したみたいだな」

「ああ、モングレルかい。前々から買っときなとは言ってたんだけどねぇ。団長は浪費ばっかりなもんだからなかなか……でもここにきてようやく入手できたってわけ」

「……金のある時に買えて良かったな」

「ほんとだよ……」

どうやらアレクトラも色々と苦労していたようである。

まあけど、そりゃそうか。いくら高額な魔道具とはいえ、ディックバルトくらい荒稼ぎしてれば魔導鞘くらい買えるわな。問題は本人の娼館通いのせいで貯金が難しいって部分だけだったのだろう。

「――うむ、うむ……素晴らしいな……――」

しかし、ディックバルトもせっつかれるように買ったわりにはなかなか良い買い物ができたような満足げな顔をしてるじゃないか。

お前にもこういう爛れてないタイプの男の子アイテムを手にして悦に浸るだけの感性があったんだな……。

「魔導鞘……原理そのものは簡単なのに、材料費がなかなか馬鹿にならないんですよね……!」

「高級な魔法金属も、い、幾つか使うからね……本当に、原理は簡単そうだけど……」

モモとミセリナは魔導鞘についてちょっと知っているようだ。

これは気になるな。俺は別に今の鞘を捨てて魔導鞘にしたいって気持ちは無いんだが、作ってみたい気持ちは結構ある。ちょっと俺も混ぜてよ。

「材料があれば俺にも魔導鞘作れるかねぇ」

「うわ、モングレルが来ましたね……モングレルはまず魔法の勉強をしたらどうなのですか」

「調子がいい時にやるつもりだから……」

「しょ、紹介した魔法商店のギルバートさんにこの前、モングレルさんの魔法の勉強について進捗を聞かれたんですけど……私はなんて答えたら良いんですか……?」

「それはちょっとごめんなさいとしか言えねぇ……」

いや俺もたまに魔法の勉強はしてるんだよ。たまにな。

しょうがねーだろ魔法なんてよくわからねえんだから。科学文明出身転生者舐めんな。

とりあえずこっちのテーブルで一杯やらせてくれ。ディックバルト達のいるテーブルは……ちょっとな、うん。

「おっ、モングレルさんこっち来てくれたかぁ。ようやく女所帯から解放だぜ。一緒に飲みましょうか!」

「おおクロバルか。乾杯」

「乾杯~!」

“若木の杖”所属の青年、全身ジャラジャラした装飾品でどことなくいかつい姿のクロバルも同席だ。

見た目はアクセサリーまみれでかなりゴツいが、彼は彼でなかなかちゃんとしてて話しやすい相手である。

「てかあれっすか? モングレルさんも魔道具なんて作れるんすか?」

「私は聞いたことないですけど。いくつか発明品はあるのは知ってますけど……まさか本当に魔道具を?」

「いや全然作ったことない。魔道具って作れないもんかなと」

「あっはっは! 未経験者かぁ! いや驚いた、そうだよなぁ。普通は作れないもんっすよそりゃ」

「モングレル、魔道具製作を舐めてかかってますね……!」

「いや舐めてはねえって。そもそも作り方すら知らねえんだから」

一応簡単なはんだ付けくらいならできるぞ。魔道具ってそういうイメージでなんとかならんか?

俺も一応ほら、ゲームボーイのソフトの内蔵電池とか取り替えられるぞ。

「わかってないですねモングレルは……いいですか? 魔道具というのは緻密な計算と複雑な魔法理論が形になったものなのです。単純な発想力や奇抜さだけではどうにもならない分野なんですよ」

「モモ、お前俺のことを奇抜さだけで発明とかやってる人間だと思ってない?」

「そもそもモングレルは文字が下手なのでそこから……」

「文字はどうしようもねえんだ……」

「はっはっは! 先は長そうだねぇ」

「じ、実際に魔道具作りは簡単なものでも難しいですからね……失敗すれば材料が壊れたりするので、適当にやることはできませんし……事前の設計が大事なんですよ」

あーそういうもんか。でもなんか聞けば聞くほど電子回路っぽい感じだよな、魔道具ってのは。

ヴァンダールも魔法使いってわけではないし、ちょっと勉強すれば……いやなんかこう規格の揃った部品と設計図があればどうにか……いや、その不揃いな部品を材料として設計図を作るところから魔道具職人は始めなきゃいけないのか。じゃあ駄目だわ。

「その点、“アルテミス”のナスターシャさんが開発した湯沸かし器はすげぇよなぁ……俺もあんな魔道具を作ってみてえもんだよ」

「ク、クロバルさんはいつも簡単なものばかりですもんね……」

「ああ、クロバルの身につけてるそのアクセサリーか?」

「まぁ正直簡単すけどね、これも結構見た目にはこだわってるんすよ。魔法を込めて撃てるのも弱いやつを一発だけだけど、手数は強みだからさ!」

クロバルが首や腕に巻き付けた様々な金属アクセサリーをじゃらりと揺らし、誇らしげに見せつけてくる。

よく見ると装飾品の中にはめ込まれている石には仄かに魔法的な光が宿っている。

あらかじめストックしておいて、必要な時に撃つ。そういう魔法使いもありか……人のストックした魔法だったら俺にも使えるかな? いやそこまでやってもな……結局人から借りた力じゃちょっとな。やっぱ魔法ってのは自分の力で好きに操るからこそってのが俺の中にはあるし……。

「あ、モングレルさん。俺の魔道具ならこれとこれは簡単な魔力操作ができれば使えるんだけど、修練場でちょっと使ってみるかい?」

「……使う!」

「元気な返事ですね」

魔法は自分で操りたい。

けどそれはそれとして借り物でも良いから一度使ってみたいじゃん?

「この金属板がそれかぁ」

「タリスマンって言ってほしいねモングレルさん! そいつをほら、魔石の嵌まってるとこを前に向ける感じでね、そうそう。で、持ち手の小麦の粒みたいな石をちゃんと握って魔力を通すわけよ」

修練場に移動した俺は、クロバル指導の下魔法の試射をさせてもらっている。

見学者はモモとミセリナだ。口では色々言うが、素直な連中である。

「クロバル、これ中身何? 何の魔法が詰まってるの?」

「そいつはねぇ……ふっふっふ、いやそれは見てのお楽しみだよモングレルさん」

「いや絶対火属性だろこれ……ブワーッと出るタイプのやつだ絶対」

「モングレル、すごい腰が引けてますね……」

「フフッ……」

いやなんか火力のよくわからん花火に火をつける時みたいな緊張感があるんだよこれ……。

けどこのままビビってもいらんねぇ。やるか……。

魔力をこう通して……お? こうか。あー金属板に流れていくわけね。なるほどなるほど、伝達は強化と似たような感じか。

「うおっ!?」

「おー出た出た!」

身構えながら発動させた魔道具は、先端から強い輝きを放った直後、大きな水の塊を射出してみせた。

射出といっても物騒な勢いではなく、3mほど前方にバシャンと落ちるようなものだ。これは……水魔法の攻撃というには地味だし、なんだ……?

「あっはっは! 発動できたじゃないかモングレルさん! そいつは俺が緊急時用に持ってる消火用の水魔法のやつだよ! 火属性は危なっかしいから俺にしか使えないようになってるんだ!」

「あー……そうか炎だもんなぁ。そりゃ危ないもんな」

「放火したら普通に極刑ものですからね……間違いが無いように、クロバルさんでも扱える水魔法の魔道具を持たせているんです。同じ火属性使いのバレンシアさんもひとつ持ってますよ」

「へぇー」

「ちなみに! そこに入っている水魔法は私が込めたものです!」

「いや違うぞモモちゃん、さっきのはアモクが込めてくれたやつ。モモちゃんのはこっちの弱い方」

「……弱い方って言うのやめてもらえます!?」

なるほど、魔法使いも色々と持ってなきゃいけない装備品があるってことなんだな。

火魔法なんて危なっかしい魔法を扱うなら、このくらい常に備えてないと怖いってわけだ。

「……うーん、火属性も便利だとは思うが、やっぱりこういうリスクを考えると俺は水魔法を先に修得した方が良さそうだな……」

「モ、モングレルさんは基礎を勉強すべきだと思いますけど……」

はいわかってます。基礎からですね。

大丈夫、今日はちょっとモチベ上がったからちゃんと訓練するよ。寝る前にちょっとだけな。