軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44. 悪徳ギルドマスターと集う「ざまぁ」された者たち5

俺がまだギルドマスターになる前のこと。

とあるダンジョンの、地の底にて。

宮殿のような場所があり、俺はフェンリルの少女と、【超越者】と出会った。

『キミのその目は【時王の目】。過去も未来も見通す、最強の鑑定眼さ』

超越者は空中にプカプカ浮かびながら、俺の目を見て言う。

『鍛えていけば固有時間、つまり体内の時間を早めたり遅くしたりすることで、身体強化や治癒などが使えるようになる。現存する鑑定眼のなかで、最古にして最高の目だよ』

そいつは俺の目に触れる。

『俺の目は、そんなすごい目だったのか』

『そうだよ。やれやれ、君は他人の才能を見抜くのは得意なのに、自分のことにはとんと無頓着だね』

『しかし今までそんなすごい力使えなかったぞ?』

『そりゃそうさ。君は僕に言われるまで自分の持っている才能の正体も使い方も知らなかったんだから。ほら、自動車だって車も免許も持っていても、教習所へ行って運転の仕方を教えてもらわなきゃ乗れないだろ?』

『貴様の言っていることが意味不明なことだけは理解できた』

『あ、そう。まあいいや。キミにその目の使い方を、僕は教えることができる。なにせすごく退屈していたところだからさ。どうする?』

俺は超越者のもとで修業を積み、固有時間加速をはじめとした、俺が持っていた才能の使い方を学んだ。

『キミの目には二つの奥義が存在する。左右で一つずつさ』

ひとつは 固有時間完全停止(イヴィル・アイ) 。

対象の命を完全に停止する、即死の術。

『もう一つは?』

『それはね、古今東西、ありとあらゆる権力者たちが、血眼になっても探し求めても手に入らなかった、最強の力だよ』

超越者から教わった奥義は、確かに規格外の能力だった。

『けれど気を付けることだ。強い力には相応の代償が存在する』

固有時間完全停止は、使えば目がつぶれてしばらく使い物にならなくなる。

『まだ可愛い方さ。もう一方の力と比べたらね。ま、世界に影響を及ぼすほどの強大な力だから』

とん、と超越者は俺の心臓を指さして言う。

『使うときは、慎重にね』

街の外に現れたのは、俺をかつて追放した男、イランクス。

妙な力を手にして、俺に復讐しに来た。

『うががが、うがぁああああああ!』

やつは自分の心臓を手刀で貫くことで、体から膨大な魔力を噴出させた。

イランクスの体はどす黒く染まり、蝙蝠のような翼と、頭から山羊のようなねじれた角を生やす。

「マスター……今のこいつからは、悪魔の気配を感じます。先ほどは混じっている程度でしたが、今は完全に」

『うがははははぁ! これぞわしの奥義ぃ【 影悪魔王(シャドウ・キング) 】ぅ!』

俺は鑑定眼でヤツの能力を見抜く。

「マスター、下がって」

「よせ」

フレデリカが氷ナイフを取り出し、悪魔となったイランクスに接近。

超高速で斬撃を放つ。

だが、刃はヤツの体をすり抜けたのだ。

「なっ……!? そんなバカな!」

『うぎゃはははぁ! 影に物理攻撃が効くとでもおもったかぁあああああ!』

ぐぉ……! とイランクスが拳を振り上げる。

フレデリカは防御の構えを取るが、しかしイランクスはその上からこぶしを振る。

俺は一瞬で、彼女を回収する。

彼女がさっきまで居た場所には、地面も、木々も、何も残っていなかった。

「こちらの攻撃は一切当たらず、このパワー……マスター、今のこいつは無敵です」

俺は彼女を下ろす。

『そうだぁ……! わしは無敵! 最強! 強靱! 完全無欠のギルドマスター、スーパーイランクス様になったのだぁ……!』

俺はため息をついて言う。

「ギルメンが一人も居ないそんな状態で、何がギルドマスターだ」

『な、なんだとぉ!?』

「守るべき部下がいて、場所があって、初めて俺たちは組織のトップ……ギルドマスターになれるんだ。そんなことも、貴様は忘れてしまったのか?」

『う、うううるさいうるさい! 死ねぇええええ!』

固有時間加速で、俺はイランクスの拳を避ける。

彼の体からは無数の影の触手が生える。

『わしより年下のくせに! わしより人生経験が浅い若造のくせに! 偉そうにギルマス論を語るなぁああああ!』

触手の1本1本が別々の動きをする。

地面をえぐる程の強烈な一撃を、超高速ではなってくるから実に厄介だ。

鑑定スキルと固有時間加速を使って、その全てを回避する。

『ふははあぁ! そうやって逃げているだけではわしに勝てないぞぉ……!』

俺は距離を取って、片手で両目を覆う。

「ま、マスター……! いけません! あれを使っては!」

フレデリカが慌てて、俺の腕を掴もうとする。

『終わりだぁああああ! 死ねぇええええい!』

無数の影の触手が、俺に襲い来る。

それは四方八方からの攻撃。

先端が槍となっており、毒が付与されているのが見えた。

……【超越者】の言っていた、奥義。

固有時間完全停止(イヴィル・アイ) 。それは、見た生物を完全に殺す技。

だが俺の視界は影の触手で埋め尽くされており、これを使ってイランクスを止めることは不可能。

だから。

もう一つの奥義を、発動させる。

「マスター! 駄目! マスター!」

このままでは、俺に巻き込まれてフレデリカも死んでしまう。

……下がっていろと言ったのに、やれやれ、つくづく主人の言うことを聞かない駄犬だ。

「時王の眼。超過駆動。【×××××】」

両目がまばゆい光を放つ。

……その瞬間、世界が停止した。

そして、全てが終わった。

影の触手は、跡形もなく消えていた。

「なんだ……これは……? いったい、何が起きたのだ……?」

「俺の力で全てを戻させてもらった」

目の前には、元の姿に戻ったイランクスが居る。

影の悪魔だった姿から一転して、前の、ギルドマスター時代のそれとなっていた。

イランクスだけでなく、破壊された森の地面も木々も、全て元通りになっている。

「ばかな……ありえん。【 影悪魔王(シャドウ・キング) 】は命を代価に発動させる究極奥義だと、ヤツが言っていたのに……」

俺はイランクスのもとへ行く。

「どうして……わしを、助けるようなマネをしたのだ……?」

彼は動揺している。

自爆の技を使って、俺を殺そうとしたのに、生かされたのだから。

「もしや、おまえ……わしを許してくれるのか? 死ぬのはまだ早いと、そう言いたいのか?」

フッ……と俺は笑う。

「そんなわけないだろ」

「え……?」

ギュッ、と俺は拳を握りしめる。

「貴様は俺の大事な街とギルメン。そして…… 相棒(かのじょ) を傷つけようとした」

固有時間加速を発動させる。

「ま、待て……! 悪かった! すまない! 許してくれ! 今までのこと全部謝るからぁ!」

俺は最大限加速させた拳で、イランクスの頬を殴りつける。

「ぶぎゃぁあああああああああ!」

ぐるんぐるんっ、と空中で何度も回転すると、彼はぐしゃりと地面に落ちる。

ぴくぴくと痙攣している。死んでは居ない。

「貴様にはしかるべき場所で、きちんと、罪を償ってもらう。貴様が死ぬにはまだ早すぎる」

気絶するイランクスを見下ろして俺は言う。

振り返ると、フレデリカが涙を流していた。

「……【アレ】は、使わないでと言ったではないですか」

俺に抱きついて、ぐすぐすと鼻を鳴らす。

「マスター……わたくしを助けるために……」

「勘違いするな。俺は、過去との因縁を、俺の手で完全に断ち切りたかっただけだ。貴様は関係ない」

ドクンッ、と心臓が強く脈動する。

強い力を使った代償が、今になって襲ってきた。

「……少し、寝る」

「……ええ。おやすみ、マスター。事件の鮮やかな解決、お見事でした」