作品タイトル不明
【番外編】
ローレンスの故郷へとやってきた。
ここの村人達は皆、動けなくなってしまっているらしい。
「これは……」
村の広場へ足を踏み入れた瞬間、俺は息を呑んだ。
そして、すぐに気付く。
この異常性に。
「こいつは……」
「どうした?」
そこには、奇妙な光景が広がっていた。
まるで、世界そのものを切り取った写真の中に迷い込んだかのようだ。
畑を耕す男は、鍬を振り上げたまま固まっている。
井戸端で笑い合う女たちは、口を開けたまま静止している。
手からこぼれ落ちた水滴さえもが、地面に落ちることなく、空中で宝石のように煌めいて止まっていた。
完全なる静寂。
風の音すらしない。
時が、止まっている。
俺は固まっている男の腕に触れる。
石化といった状態異常ではない。
肌は柔らかく、生きた人間の体温を感じる。
目を見れば、潤んだ瞳がそのまま光を反射していた。
瞬き一つしないだけだ。
また、氷の魔法で体を凍らされているということでもない。
今起きている現象について、俺は答えを持ち合わせている。
これは。
「時間の停止だ」
「! それは……」
ローレンスも感づいたようだ。
他者の時間を止める。
それは、かつて俺が使っていた、『時王の 神眼(クロノ・サイト) 』の効果そのものだ。
敵は神眼持ちか。
いや、それは考えられない。
あれはもう封印された。
使い手は居なくなったはずだ。
この世に二つしかない『時王の 神眼(クロノ・サイト) 』。
そのどちらもが、もう既に無くなっている。
となると、また別の手段により、時間を止めたことになる。
だが、ありえん。
時を止める魔法は存在するが、長時間止めておくことは不可能だ。
なぜなら、時を止める『 時間停止(タイム・ストップ) 』の魔法は、発動中も莫大な魔力を消費し続けるからだ。
長く、この人達の動きを止めている時点で、魔法による現象とは考えにくい。
そうなると、やはり脳裏をちらついてしまう。
『時王の 神眼(クロノ・サイト) 』の存在が。
あれは、肉体への負荷はあれど、発動に魔力はさほど必要としないのだから。