軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

129.悪徳ギルドマスター、田舎から出てきた若者をそそのかす2

念願のアクトとの邂逅を果たした、田舎より出てきた少年ヤボイ。

彼がいるのは食堂だ。

「どうした、食わないのか?」

眼前に座り、優雅に食事をする黒髪のギルドマスターが問うてくる。

一方でヤボイはというと……。

「すんません、ほんと……すんません……」

アクトの隣で土下座したままだった。

さもありなん、彼は探し求めていた憧れの大悪党アクト・エイジに、とんでもない不遜な態度を取ってしまったのだ。

自分の上司になる存在……というより悪のカリスマにそんなことをした以上、自分の命はないものとばかりに思っている。

「まじで調子のってすんません……」

「ふん。本当だな。さっきの態度、俺が貴様の上司だったら首が飛んでいたぞ?」

「おお……! やっぱり……!」

逆に目を輝かせるヤボイ。

アクトはあくまで解雇するという意味で使った。

だがヤボイは文字通り、無礼なヤツは首をはねると勘違いしている。

それを見たフレデリカは……。

「この子、なにをキラキラした眼でマスターを見ているのでしょうか……」

「知らん。バカなのだろう」

「はいっす! 自分、アホっす! さーせん! はっ、すんません! 調子にのって」

「構わん。さっきのはあくまで俺が貴様の上司だったら、だ。あのときはまだ違ったんだから、気にしなくて良い」

ヤボイはホッ、と安堵の吐息をつく。

良かった殺されなくて……。

あらためてヤボイはアクト・エイジを見やる。

さっきまではただの青年に見えていたが、なるほど、こうしてみると悪の貫禄がある……ように見える。

「おい貴様、いつまで土下座している。店の奴らに迷惑だ。やめろ」

「はいっす!」

「それとさっさと昼飯を食え、冷めるだろうが」

「了解っす!」

ヤボイはびょんっ、と立ち上がって、料理に手をつける。

やっとアクト・エイジに出会えたのだ、ここはよいしょしておこう。

そう思って、料理に口をつける。たとえクソマズくても、ほめるぞ……と思ったのだが。

「! う、」

「う?」

「うんめぇえええええええええええええええええええええええええええええ!」

ヤボイは眼をキラキラさせながら叫ぶ。

彼が食べているのはごく一般的なカレーライスだ。

だが田舎から出てきた彼にとっては……。

「こんなうめええ食いもん食ったのはじめてだ! すげえ! 都会すげええ! こんなうめえ店知ってるアクトさんまじやべーっすよぉお!」

「……ウルサい子ですね。マスター、本当にこの子を拾うんですか?」

「無論だ。こいつはバカだが、しかし才能の原石だ」

「はぁ……とてもそうには思えませんが……」

フレデリカも同席し食事を取っている。

アクトは実に楽しそうに、彼に目線を送る。

「香辛料が使われていることによって食欲増進させるんだな。それとこの肉は、オーク肉か! このルゥがこってり系だから脂身の少ないオークの肉を使うことで味をマイルドに……」

食べながらブツブツと、見解を述べていくヤボイ。

先ほどもアクトが常連だとすぐに気付き、彼が食べているものと同じものを頼んで、結果美味いものにたどり着けた。

「こいつは勘もいい。頭も悪くない。育てていけば、いい経営者になる」

「なるほど……さすがマスター」

「おいガキ、名を名乗れ」

「んえ? ヤボイっす!」

「そうか、ヤボイ。貴様、俺の下で働く気はないか?」

憧れの人物から、頼んでもいないのに、スカウトされた。

これはビッグチャンス!

「え、いいんすか! もちろん!」

「よし、チャンスを活かす才能もあるようだな……」

食事を終えたアクトは、ヤボイに手を伸ばす。

「俺の下へこい、ヤボイ。その活かし切れてない才能、使ってやる」

「はいっす! っしゃああ! 大悪党の子分になれた! 来て早々、幸先がいいぜぇええええええええええひょぉおおおおお!」

「……マスター、ほんとにこの子、経営者の才能あるのですか?」

かくして田舎者少年ヤボイは、アクトのもとへ来ることになったのだった。