軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談193話、叩きつけられる拳

大地の守護者は地面の中にいる。

ミストは通過を許されたが、ソウヤに対しては素直に通してくれそうになかった。

「オレだって地面の中を攻撃できる手段なんてねえのによ」

地面に手を置いて、ノーマの姿を探す……などという余裕はなくて。

「っ!」

ソウヤは殺気を感じて飛び退く。地面から飛び出した尖ったダイヤモンドの塊。当たれば人体など軽く貫くそのスピード。素早く斬鉄を振るって弾く。

「ゆっくり地面を操作している余裕もなしか……!」

大地の力を操るのは、アースドラゴンの力を受け継いだソウヤとて同じ。言わば同じ属性同士の戦いだ。

相手が地面に潜るなら、その地面を改変してやろうと思ったが、相手もそうこちらの都合のいいようにやらせてはくれない。

それが戦いというものだ。

――そもそもの話、オレと同じ属性ってことは、地面を変えたくらいで動きを止められねえか。

相手も地形を変えて進むだけである。実際、ノーマは地面の下を潜って動き回っているのだ。

「って……!」

地面から戦斧の刃が出てきた。それが地面を走る。まるで海を泳ぐ鮫のように、すっと背びれのように刃を煌めかせながら、ソウヤに向かってきた。

「案外、速ぇ!」

あっという間にソウヤの足元へ迫る。地面の中を走るにしても速過ぎるそれは、土の中を高速で泳いでいるかのようだ。

「そういうこともできるのか」

ソウヤは地面を斬鉄の刃で突いた。魔力を流して一気に解放! ショックウェーブ!

地面の中に衝撃波エネルギーを送り込んで、ノーマにぶつける。もっとも相手の姿は見えていないので、感覚の話になるが。

鮫の背びれの如き戦斧の刃が止まった。地面の下でも衝撃は受けるらしい。

「もう一発!」

衝撃波エネルギーをぶつける。――と、そこに地面に動くもの。ソウヤはとっさに身を引く。

飛び出してくるはダイヤモンドの塊。それはもう見た。

「中々面白いことをしてくれるわね」

ずずっ、と地面からノーマがせり上がってきた。衝撃波エネルギーの影響か彼女は片手で頭を押さえていた。

「耳元で鐘を鳴らされた気分ね。それとも二日酔いかしら。あまり気分のいいものじゃないわね」

「地面の下は安全じゃないぜ?」

ソウヤは斬鉄を構える。

「通してくれると助かるんだがなぁ」

「あら、こちらを待ってくれたの。あなたって意外にお優しいのねっ!」

戦斧を地面に叩きつける。すると大地が割れ、大岩のスパイクが生えてソウヤのほうに向かってきた。

「危っ、ねぃっ!」

足元に亀裂が走り、飲み込まれたらただでは済まないそれを、横に飛んで避ける。さすがは守護者。人間ともドラゴンとも違うその力。

「だが――」

ソウヤは駆ける。一気にノーマまでの距離を詰めて、渾身の一撃を喰らわせる! 大地の守護者は地面に巨大戦斧を叩きつけたまま、まだ引き抜いていない。

引き抜く間、隙をつくるか。あるいは戦斧を手放すか――ノーマは斧から手を放した。得物を手放し、胴体が隙だらけ……。

「!?」

ソウヤは一瞬息が詰まった。ノーマの拳に魔力が収束したのが見えたのだ。ほんの一瞬、魔力は凝縮の息まで練り込まれ――

「戦士なら、拳で闘えぇいっ!」

籠手に覆われているとはいえ、ノーマが繰り出した拳の一撃は、人間のパンチが繰り出すものとは思えない重厚な音を響かせた。

とっさに斬鉄で防いだソウヤだったが、あまりの重さに驚愕する。列車が正面からぶつかったのではないかと錯覚をおぼえる一撃。……もちろん、ソウヤは列車に正面から衝突したことはないが。

「どうした、男の子! 武器なんか捨ててかかってきなさいな!」

ドゴォンと重々しいパンチの連続。素早いジャブが、ソウヤの手から斬鉄を跳ね飛ばした。折れなかったのはさすがバァ金属製。

ソウヤは腕をバァ金属並に固めて、放たれるノーマの拳を防いだ。やはり重い。そこらの鉄などなら破壊されるだろう重さと威力。大地竜の力を受け継ぎ、その力を操れなければ、今の拳でミンチにされていた。

「耐えるのねぇ。あなたも人間の枠、はずれちゃっているわね!」

「こちとらハーフドラゴンなんでね、これでも!」

強度を増しても腕にかかる衝撃は半端ない。これで骨が折れないのも強化の賜物だが、それでもわずかに響くように痛いのはよろしくない。それだけ守護者の力は凄まじい。

物理攻撃系の守護者。力では自信があるソウヤだったが、これにはさすがにドン引きである。

だが付け入る隙がないわけではない。殴りつけていることで意識が上半身にいっているノーマである。

――足元がガラ空きじゃね?

爪先に魔力を溜めて、タンと地面を叩く。アースウォール――岩の壁が下からアッパーの如く突き上げ――

「あがっ!?」

「え……?」

ノーマの下腹部、より正確に言えば股間を守る鎧に岩の壁が激突した。そのまま上へ伸びる岩壁に体を持ち上げられた大地の守護者はそこから頭から地面に落下した。

「あうっ……! つぅーっ!」

股間と頭、双方に衝撃があったようで、彼女は痛みに地面を転げ回った。男だったなら股間の一撃で死んでいた。