軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談183話、再会は突然に

「え……?」

「あ……」

それは遭遇であった。

ロッシュヴァーグの工房を出て、その敷地を出る時、ソウヤは思い出したようにフードを被ったが、少し遅かった。

目の前には三年で身長が伸びたセイジがいた。彼もまた荷物の確認をしていたのか、正面から人が来ることに気づくのが遅れた。もちろん、今の彼では秒で躱すことなどわけもなく、衝突するなどとは微塵も思っていなかったが……。

ぶつかってはいない。だが衝突級の衝撃をセイジは感じた。

「ソウヤ、さん……?」

「……おう」

もうあと二秒早ければ、フードを被って人違いですもできたかもしれない。だが後の祭りである。ソウヤは営業スマイルを浮かべた。

「久しぶり。元気だったか?」

「……」

セイジはまるで石になってしまったように固まっていた。死人に出くわしたような――いや、彼の中では事実そうなのだ。勇者ソウヤは三年前に死んだと思われているのだ。

「おう、どうした、セイジ? お前は背が伸びたなぁ」

十代ともなれば、三年もあれば大きくもなるか。三年――噂には聞いていたが、実際に成長した姿を見るとまた感情に込み上げてくるものがあった。

「ソ、ソウヤさーん!!」

突然、声を上げたかと思うとセイジが体当たり――ならぬ抱きついてきた。感情が迸っているのは彼も同じだった。わんわん泣き出して抱きしめてくるセイジに、ソウヤも困惑する。

「おいおい、小学生のガキを迎えにきた親じゃないんだからさ」

死んだことになっているソウヤも、これまで何人かの友人と顔を合わせているが、ここまで熱烈だったのはちょっと記憶にない。

「お前も色々苦労したんだな」

周囲の目も憚ることなく抱きついてくるとか。先にも言ったが子供を迎えにきた親ではないのだから、恥ずかしくてたまらなかった。

・ ・ ・

ロッシュヴァーグの工房に逆戻り。工房内の休憩室で、セイジが落ち着きをとり戻した後、ソウヤはこの三年間をかいつまんで説明した。セイジはそれを聞き向かいあっている。

「――でも人が悪いですよ、ソウヤさん。生きているなら教えてくれれば、色々とお手伝いもできたのに」

「いやぁ、すまんすまん。人間社会に復帰するまでの時間がかかっちまってなぁ」

ハーフドラゴンとして日常生活に支障が出ていた。

「仲間をハグでミンチにしたくなかったからな。問題なく過ごせるまでに三年かかってしまった」

「そこまでだったんですか?」

「竜の血ってのは、劇薬だったんだよ」

リハビリ期間は長かったが、もうそれも解決した。

「言わなかったってこともあるし、他言はないように口止めしたこともあるけど、お前の耳に入らなかったということは、結構口がかたい奴らばかりだったんだな」

「知っていた人はいたんですね……」

「まあな、お前みたいに意図せず遭遇しちまったパターンが大半だけど。リハビリが終わるまでは、黙っていてくれと頼んだ」

先ほども言ったが、仲間を潰したくなかったから。

「ここから出てきたということは、ロッシュヴァーグさんはソウヤさんのことを知っていたんですね?」

「つい最近な」

なお当のドワーフは工房で作業中。

「オレが武器を依頼しにきた時に。で、その武器の件でここに寄ったら、お前とバッタリってわけよ」

「ひょっとして、ここに強盗が入った件と関係あったりします?」

「お、鋭い。相変わらずお前の勘は冴えてるな」

バァ鉱物絡みで。噂になっていたみたいだから、銀の翼商会にもその辺りは聞こえてきていたのかもしれない。

「本当に、ロッシュに関してはここ最近なんだよ、オレが会いにいったのは。すっげぇビックリされたぜ?」

「そりゃあビックリしますよ。公式にはソウヤさん、魔王と相討ちになっているんですから」

「そうらしいな」

正直、死んでいてもおかしくなかった。それがこうしてかつての仲間に会える。再会は嬉しいものだが、不思議な気分でもある。

「何もなければ、ぼちぼちお前たちにも会いにいこうとは思っていたんだ」

「そうでしたか。僕には会えましたね」

セイジはニコリとしたが、すぐに真顔になった。

「何もなければ、と言いました?」

「言った」

聞き逃さないな、こういうところは――ソウヤもまた真顔になった。

「ちょっとこれから危ないところへ行く。ひょっとしたら今度こそ帰ってこられないかもしれない」

「!?」

「だから死んだままにしておいた方が、お前や仲間たちをぬか喜びさせずに済むかな、と思ってさ」

もちろん帰ってくるつもりのソウヤである。だが再会は、無事に帰ってきた時のほうが二度手間にならない。生きていたと知らせておいて、それからすぐにやっぱり死にましたでは、残っている者たちの精神がぐちゃぐちゃになってしまう。はた迷惑なのは、せめて一回で済ませたい。

「危ないんですか」

「うん、危ない」

「僕らで手伝いましょうか?」

そう言うのを恐れていたんだ――ソウヤは首を横に振った。銀の翼商会の今を全て知っているわけではないが、時空回廊の守護者の相手は普通の人間にはさせたくない。

「いや、もうすでに計画をねってそれに沿って動いているからな。今から追加すると予定が狂ってしまう。……気持ちだけもらっておくよ」

ここでガルたちの命を救うため、とか言ったら絶対引かないだろうな――それがわかるからソウヤはそのことは黙っていた。