軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談176話、黒は黒だった

黒の結社の礼拝堂は、嵐にあったかのような 惨憺(さんたん) たる有様だった。

主にミストが暴れ回った結果だが、見た目美少女、中身ドラゴンのパワーを前にしては、凡人には太刀打ちなどできるはずもなかった。

運良くドラゴンの歯牙にかかることなく、命を保っている構成員の一人をソウヤは見下ろしていた。

「お前たちは何者だ?」

「襲撃を仕掛けておいて、……今更問うのか?」

何とか威厳を保とうとする構成員。ソウヤは冷ややかに告げる。

「まず第一に、最初に仕掛けてきたのはお前たちだ」

刺客を放ってきたのは黒の結社の方である。

「それを忘れてもらっては困る。……さあ答えてくれ。お前たち黒の結社とは何だ?」

「そ、それは襲ってからいうセリフではないだろう……?」

「だから、お前たちが襲ってきたからこうなったんだろうが?」

聞く相手を間違えただろうか――ソウヤは首をかしげる。

「いいか、オレにはお前たちが殺しにきたから、報復する理由がある。オレが優しいのは今だけだ。それにな――」

ソウヤはしゃがんで、衝撃で破壊されつつある礼拝堂を指さした。

「オレに何かあったらタダじゃおかないという相棒が見ての通り暴れている。彼女はオレほど寛容じゃない」

「……」

ゴクリと唾を飲み込む構成員。派手な破壊音が響くたびに首をすくめる彼。その時、一際大きな音がして、さすがにソウヤも何事かと視線を向けた。

ミストはどこまで派手にやるつもりなのか――そう思ったら礼拝堂の壁が吹き飛び、トカゲ頭の巨大モンスターが流れ込んできた。

構成員は引きつった笑みを浮かべる。

「ははっ! ガルビュータだ! これで勝てる!」

「ガルビュータだ?」

怪訝な顔になるソウヤ。トカゲ頭に太い胴体。まるで重戦車のような大きさと迫力だ。その咆哮は礼拝堂に響き渡り、耳にくる騒音だった。

ミストが一度距離を取り、竜爪槍を構える。構成員は言う。

「誰が動かしたか知らないが、あれがあればお前たちはおしまいだ……! ははっ、皆死ぬんだ」

狂喜する構成員はソウヤを見た。

「あの実験生物は見境がないからな! そして何より人肉を好む! お前の相棒とやらもおしまいだ! ざまあみろっ!」

「そうなったら、お前もガルビュータとかいう化け物の餌じゃないのか?」

ソウヤはそう言うと、ミストへの念話を飛ばす。

『何か実験生物らしいけど、手伝ったほうがよさそう?』

『いらない』

ミストはすっぱり念話を返した。

『やっと手応えがありそうなのが出てきたところ。これはワタシの獲物よ』

『あぁ、そう。……面倒になったら呼んでくれ』

ソウヤは構成員に向き直る。

「さて、じゃあインタビューを続けよう」

「何を言ってるんだ?」

構成員は耳を疑った。

「ガルビュータが出てきたんだぞ? 相棒に任せていられる状況だと思っているのか!? この状況を脱するなら逃げるか、せめて相棒と共に戦うとか――」

「お前はオレたちを何だと思っているんだ?」

勇者と思って襲ってきたのではないのか――ソウヤは首を振った。

「あの化け物は魔王より強いのか?」

「へ……?」

構成員は虚を衝かれた顔になる。ソウヤは重ねた。

「あれは魔王より強いのか? ドラゴンより強いのか?」

言葉に詰まる構成員。魔王はともかくドラゴンとも戦ったことがない化け物のようだった。ソウヤは嘆息した。

「それが答えだ。さあ、これ以上無駄な時間を使いたくはないだろう?」

またも派手に重量物が吹っ飛ぶ音がした。ガルビュータと戦うミストが、どうやら派手に化け物を蹴飛ばしたようだった。

構成員は青ざめる。想像だにしない光景が繰り広げられているからだ。

・ ・ ・

黒の結社は、赤の結社の後継者である――と、当事者である構成員の口から聞くことができた。

噂や推測で一つの組織を潰すのは気が進まなかったソウヤである。誰かが言っていた、こういう噂がある、とそれを鵜呑みにすることほど怖いものはない。命を狙われたのも組織ではなく、個人の恨みの可能性もなくはないのだ。

もっとも、これらはソウヤの杞憂に終わった。

黒の結社は、力を求めるために、悪魔召喚の儀式や人をさらって生贄にしたり、古代の聖剣や魔剣といった武器、魔力を秘めた宝玉などを手段を問わずに探して手に入れたりしていた。

「やっていることは赤の結社と同じか」

ソウヤは構成員から話を聴き終えると、アイテムボックスの時間経過無視空間に放り込んだ。

「ミスト、もう敵は全部潰していいぞ」

「え? 敵?」

ミストはガルビュータをズタズタにし肉塊へと変えていた。

「せめてドラゴンに勝てるくらいの化け物じゃないと相手にならないって……」

「何か言ったー?」

無傷で手を振る余裕のあるミストである。ソウヤは剣を肩に担ぎ、悠然と歩く。

「結社は悪党だったよ。刃向かうなら片付けていい。あと、もしかしたらさらに地下に捕まっている人たちがいるかもしれないから、そこだけは気をつけて」

「探知したの?」

魔力で伸ばせば、地下を探ることも難しくない――のだが。

「どうもこの先に魔力を遮蔽している空間があってな。オレにも見えない」

「それ、人質じゃなくて、幹部が逃げ込んでいるシェルターかもしれないわね」

行きましょ、とミストは意気揚々と歩き出した。