軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談174話、黒の結社アジト訪問

ドラゴンになって移動したソウヤはミストに合流した。変身を解いて、まず一言。

「お待たせ」

「アジトはあそこ」

ミストは森に見える小屋を指さした。緑一色の針葉樹が立ち並ぶ中、くすんだ屋根が見える。

「随分とこじんまりしているな」

赤の結社の時は、古びていても教会などにアジトを持っていた。それと比べると、小さいなんてものではない。これでは構成員はせいぜい数人程度になってしまうが……。

「一応、言っておくけどあれは見せかけで、地下に大きな拠点があるわよ」

「なるほど」

魔力を通して大地に触れる。小屋の下に通路があり、そこから礼拝堂に繋がっている。蟻の巣のように居住区ほか施設があって、下手な貴族の館よりも中は広かった。

「どうして彼らは、教会の真似事が好きなのか」

「前回もそうだった?」

「赤の結社の時から、やたら宗教色が強かった」

何を信じているかは知らないが、とソウヤは苦笑した。

「それじゃあ、アジトを訪問するとしよう」

「そうこなくちゃ。それで作戦は?」

「ないよ。正面から」

ソウヤは森の中を歩き、ミストも続く。比較的柔らかな土を踏みしめて、しんとした森林の空気を吸い込む。

「ドラゴンはコソコソしないものよね」

「挨拶に行くだけだぞ」

「それで終わると思ってる?」

ミストは片方の眉を吊り上げた。

「アナタ、命を狙われたんでしょう?」

「そうだよ。だから、どういう了見なんですかとお伺いを立てるのさ」

「問答無用で攻撃されたら?」

「その時はその時さ。オレは聖人君子でも神様でもないからな」

ソウヤは立ち止まる。魔力の波が飛んでくるのを感じた。相手が魔力サーチをしてきたのだ。森の中の空気が変わる。動物の気配が遠のいていく。

「ワタシたちのこと、探っているわよ?」

「そりゃ、誰がきたか知りたがるだろうよ」

黒の結社なんて、怪しげな組織であれば訪問者のチェックは厳しいだろう。

「とはいえ、少々不躾ではある」

ソウヤもまた周囲の存在を把握する。正面に一人、左右にもそれぞれいて、合計三人が木々を障害物に潜みつつ近づいてくる。

と、正面の人物――男の手に魔力が集まった。攻撃魔法の兆候。ソウヤはアイテムボックスに手を突っ込み、剣の柄に触れる。

ゴウッ、と正面から爆発性の火球が飛んできた。エクスプロージョン系の魔法だ。

ソウヤは素早く剣を抜き、火球を上空に跳ね返した。そして爆発!

「森が燃えたらどうするつもりなんだ!?」

思わず口走った時、ミストがドラゴンブレスを吐き出した。

「!?」

吹き荒れる風に、ソウヤは思わず片目を閉じる。黒髪が風にはためく。近い近い――!

正面の魔法を放った男が、圧倒的ブレスに巻き込まれて瞬時に蒸発した。正面の木々もなぎ払い、アジトの入り口である小屋の半分が吹き飛んだ。中に人がいたのなら、運が悪ければ巻き添えをくらっただろう。

「おい、ミスト。それは――」

「いったいどういう了見なのかしらぁ?」

ミストの目が怒れるドラゴンのそれに変わっていた。ドラゴン様に対して挨拶もなしにいきなり殴りかかっているのはどうなのかと激怒している。ヤクザ映画などでカシラが敵の不作法にキレるシーンとかを見ている気分になるソウヤ。

「……できれば穏便に済ませたかったんだがなぁ」

もうこうなっては話を聞くどころではないかもしれない。嘆息するソウヤの横でミストが動き、左右に回り込んでいた黒の結社の構成員に竜爪槍で襲いかかった。

問答無用。とはいえ、仕掛けてきたのは彼らである。

「仕方ないな」

ソウヤは半壊しただろう小屋へ歩きつつ、念話の準備をする。地下アジトにいる人間たちが先の爆発で右往左往しているのを感じる。ミストがアジトに乗り込む前に、話を進めておくのだ。

『あー、あー、聞こえるか、黒の結社』

・ ・ ・

それは不躾を通り越して遠慮の欠片もない念話であった。

地下にいた黒の結社構成員たちは、突然頭をぶん殴るような衝撃を受けて、とっさに頭を押さえる。だがそれに何の効果もない。

『お前の仲間たちに命を狙われた者なんだが――』

その念話は、場にいた全員の脳に話しかける。

『話を聞きたいので、今からそちらに行く。外にいた奴は何か知らんが攻撃してきたので反撃した。繰り返すが、話し合いにきたので、抵抗はしないでくれよ』

実に一方的だった。念話で不特定多数に呼びかけているのだから、そうなるのも仕方がないのだが、黒の結社の構成員たちはそれどころではなかった。

「入り口が攻撃された!」

「敵襲だ!」

「迎え撃て!」

「命を狙われた云々と言っていたが……まさか勇者ソウヤか?」

武器を取り、礼拝堂入り口周りに集まる構成員たち。

それを離れた場所から見ていたオイユは、ここに敵を招くことになったルアイを見た。

「貴様の失態だぞ。幹部連中に報告してこい。相手が誰かわからせてやれ」

「あ、ああ」

ルアイは走る。オイユはそれを見送ると、周囲の視線がないか確認して物陰へと身を潜めた。

「まったく……。勇者と決まったわけではないが」

ソウヤの連れである、翼を持つ魔族の女かもしれない。しかし念話の声は男であったから、勇者ソウヤの可能性も充分にある。

「こうもあっさり踏み込まれるとは――」

その瞬間、礼拝堂入り口から凄まじい怒号と攻撃魔法の音が響き渡った。上からやってきた侵入者に対して、先手必勝とばかりに攻撃をかけたのだ。

「話し合いにきたという相手によくもまあ……」

オイユは呆れるが、次の瞬間、風が舞い、十数人はいた構成員が吹き飛ばされた。