軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談166話、ソウヤ、屋敷に到着する

地下道の分岐を曲がると、その奥の行き止まり。ソウヤは天井を睨んだ。

「やっぱりここで途切れたな」

気配が消えたのは感じていたが、何故消えたのか、それを確かめるためにその場所まで足を運んだのだ。

ソウヤは足元を見下ろす。

「魔力の残滓……」

転移の魔法か何か――

「いや、これは魔法陣か」

しゃがみ込み、土に触れる。魔法陣を探り、おおよその形を把握。魔力を流し込む。

「正しい呪文は知らないが、どれ、一つ動かしてみるか」

魔力の流れから魔法陣の構成を読み解く。そしてそれを無理やりに発動させ、ソウヤは光に包まれた。

鳥のさえずりが耳についた。辺りは森らしい木々に囲まれていた。地下道から瞬間移動したのだ。

「さて、ここはどこかな」

強引に開いたことで壊れかけている魔法陣を放置し、ソウヤは歩く。バァ鉱物の気配が強く感じられるので、犯行グループが通ったのは間違いない。

迷うことなく森を抜けると、大きな宮殿じみた屋敷とその広い庭が現れた。

「ここに運び込まれたのか」

バァ鉱物泥棒たちは、この屋敷に持ち込んだ。今もこの建物の地下にあるのがわかる。

「じゃあ、ご挨拶といきますか」

すでに不法侵入ではあるが、仕方がない。あの森がここの敷地の内であるなら、魔法陣がそこに出てくるようになっているのだから。

「さぞ金持ちとか偉い人が住んでいるんだろうな」

バァ鉱物の話を聞きつけ、手段を選ばずに手に入れようと、ロッシュヴァーグの工房に荒事専門の連中を送り込んだというところだろう。

屋敷に近づくと番兵が槍を構えた。

「おい、貴様! ここで何をしている!?」

「なにって、オレはお客だよ」

ソウヤは堂々と近づく。

「ここでは、客に向かって問答無用で武器を向けるのが礼儀なのかい?」

声を上げた番兵が、相方と顔を見合わせる。あまりに堂々としすぎる不審者に調子を狂わされている。

「来客の話は聞いていない! 誰の許可を得てここに侵入している!?」

「あんたが聞いていないだけだろ。この屋敷の主に確認してこい!」

ソウヤはきっぱりと言い放った。嘘は言っていない。この番兵は来客を聞いていない。それはそう。だがそんなことはどうでもよくて、屋敷の主に聞いてこい――番兵に落ち度はないが、あたかも落ち度があったかのように言うのだ。

本当は来客の予定があるのに、番兵が聞き逃したから、大事なお客様に無礼を働いているのではないか、その迷いが渦巻く。

「確認してくる! ――おい」

番兵は相方に、ソウヤの見張りを任せると屋敷に入っていった。名前も聞かなかったのだが、それで門番が務まるのか、とソウヤは思った。

万が一を考えて確認に行ったのだろうが、すでに聞いていない来客というありえないイレギュラーのせいで内心テンパっていたのかもしれない。

ソウヤはもう一人の番兵に近づく。その番兵も槍を構えたが、ソウヤは手を振る。

「まてまて、お客さんに失礼だろう。――ところで君」

世間話をするように切り出すソウヤ。

「このお屋敷の持ち主って……えっと――何て名前だっけ。名前をど忘れしてしまった」

「それはいくら何でも失礼過ぎるだろう――」

「だから本人に会う前にあんたに聞いているんじゃないか。で、誰だっけ?」

「ご当主様の名前は、ジュール・ガラガランダ伯爵閣下だ」

「そうそう、ガラガランダ伯爵。思い出した」

――まったく知らん。

聞き覚えのない名前だった。しかしソウヤはおくびにも出さない。

「ここにバァ鉱物があると聞いてね。拝見しに来たんだ」

「バァ……? ああ、さっき魔術師たちが運び込んだやつか。……失礼ですが、お名前を頂戴しても?」

ようやく名前を聞いたか――ソウヤは呆れるが顔には出さなかった。

「ソウヤ・アイキ。と言っても君にわかるかな? 伯爵とは同好の志でね。最近知り合ったんだが、コレクションを披露してくれるって言うんで、遥々やってきたんだ」

何をコレクションしているかなどまったく知らない。だがこれだけのお屋敷を持った貴族であれば、何かしらコレクションしているものがあるだろう、と適当なことを言うソウヤである。

趣味が何かを言わず、同好ということで、何がきても対応できるトーク術である。銀の翼商会で培った会話テクニックがこんなところで役立つとは。

はじめは難しい顔をしていた番兵だが、途中から何となく理解したような顔になった。名前を聞いても正体はわからなかったが、どこかで聞いた名前な気がしたからだ。そしてどこかで聞いたことがある有名人なら、伯爵と付き合いがあるのもおかしくない――そう思い始めていたのだ。

……かつて魔王を倒した勇者の名前だから、どこかで聞いたことがある気がするのも不自然ではなかった。

ソウヤと番兵が談笑していると、先ほど確認に戻った番兵が大股にやってきた。――さて、アポイントメントがないのがバレたが、どう出るか。

「伯爵閣下の来客リストに面会の予定はなかった」

事務的にその番兵は言った。てっきり、この『嘘つきめ』とか怒鳴られると覚悟していたのだが、それならそれで、とソウヤは開き直った。

「おいおい、オレは伯爵閣下に招待されてきたんだ。バァ鉱物が見れるって遠路遥々楽しみにしてきたのに! ……何かの手違いじゃないのかい?」

「ない。執事長殿に確認した。来客の予定はない」

「執事長? 伯爵本人には確認していないのか?」

ソウヤは指を向けた。さも落ち度を指摘するように。

「これは行事じゃない、プライベートな面談だぞ。プライベートな人間が来たのに、本人に確認しないとはどういうつもりだ? ガラガランダ伯爵に直にお伝えしろ。友人のソウヤ・アイキがバァ鉱物を見にきたって! ほら、行け!」

友人であると噓はつくが、面会の目的はきっちりと言うソウヤである。それについては何も偽っていなかった。