軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談164話、取り引き現場

「これが約束の貴重鉱物ってやつだ」

その男は、魔術師らしき男に告げた。

深い地下道、その半ばに男たちはいた。その数は全員で十人。フード付きのマントを身につけている粗野な戦士風の男が六人。そして旅人風の魔術師が四人だ。

「苦労したぜ、何せ運ぶのが石ころだからな。魔道具がなけりゃ、こんなモノ、運び出して逃げられなかったぜ」

戦士風の男はベラベラと語る。魔術師はあまり興味なさそうに聞いていた。

「王都のガードとぶつかってはいないな?」

「もちろん。奴らに追われていたら、こんなところでノンビリしてねえさ。いくらオレたちが冒険者として修羅場を潜り抜けてきたと言ってもな」

「『砂嵐』だったか?」

魔術師はやはり関心がなさそうに言った。

「まあ、仕事はきちんとやってくれているようだ。雇った甲斐があったというものだ」

「そうだぜぇ、もっと褒めてもバチは当たらんぜ」

元冒険者の盗賊はニヤけた。

「王都のど真ん中でクソ重たいもんをガードに捕まることなく運び出せるのは、経験豊富なオレらくらいなもんさ。……報酬の方も色をつけてほしいもんだ」

「……ブツが本物かどうか、調べさせてもらうぞ」

「ああ、好きにしな。アンタらの依頼だ」

盗賊は笑った。

「ただ、わざわざ偽物をでっち上げて、あんたらを騙すような狡いことはしないぜ? 元冒険者だが、仕事に関して嘘はつかねえのがモットーなんだ」

「それを判断するのは我々だ」

仲間に合図し、魔術師の一人がバァ鉱物を検分する。リーダー格の魔術師は問うた。

「あの剣のようなものはなんだ?」

「剣で間違いないぜ。見ての通り、ちと重いがな」

盗賊はそれに歩み寄った。

「これも例の鉱物を使って作ったものだ。加工済みだが、あのロッシュヴァーグの作った剣だ。それだけで価値はあるぜ。剣マニアに売ったら、それこそバァ鉱物以上の金になるだろうよ」

「……」

「おや、魔術師殿は、剣にはあまり興味がないか」

やや小馬鹿にしたような口を叩く盗賊。魔術師は冷ややかだった。

この手の輩は礼儀も口も悪く、やたら上から目線な上に、すぐ調子に乗る。好きになれない人種である。

「この鉱物の加工法は? あればクライアントはさらに報酬を弾むぞ」

「おっと、そういうのは仕事をやる前に言ってくれよ」

盗賊が不満顔になった。

「ブツをスムーズに持ち去ることに注力していたんだ。最初から言ってくれれば、加工法も手に入れてきたのに」

「ないのか。ならばいい」

「よくはないんだよな」

盗賊は剣呑な空気をまとう。

「どうしてくれるんだ? オレたち、もっと稼げたかもしれんのに、あんたらの不手際で儲け損ねたじゃねえか」

周りの盗賊たちも不快さを露わにする。魔術師たちもまた敵対的な視線を返す。

「不手際? 我々がただ石ころを手に入れるためだけにお前たちを雇ったと思うのか? 元冒険者なら、頭が回ると思っていたが、とんだボンクラだったようだ。それでは盗賊に落ちぶれるのも無理はない」

「てめぇオレらに喧嘩を売ってるのか!?」

「突っかかってきたのは貴様らだろう」

魔術師は歩み寄る盗賊を見下す。

「頭を働かせろ、馬鹿者め。鉱物はその後、金属に加工されるものだ。それも希少なものとあれば特殊な加工が必要かもしれない。……ほら、少し考えればそれくらい想像できるだろう?」

「いいか、魔術師野郎。冒険者ってのは依頼文に書かれていることを完璧にこなすもんだ」

盗賊はガンを飛ばす。

「書いていないことは『余計』なことで、触らないのが流儀なんだよ。頭は働いている。依頼を逸脱しないよう、余計なことをしないように、だ。依頼人の中には大きなお世話を嫌う奴もいるってことだ。もう少してめえも社会常識ってのを学んだほうがいいぜ、魔術師野郎?」

「……大いに参考になったよ、元冒険者」

魔術師は一歩身を引いた。

「だが、身の程は弁えるべきだった!」

エアカッター――風の魔法が盗賊リーダーの頭を吹き飛ばした。盗賊たちが瞬時に身構える。

「て、てめぇっ!?」

「よくも!」

しかしそこまでだった。魔術師たちが魔法を繰り出し、盗賊を次々に始末していく。

「社会人であるなら礼儀は弁えるべきだった。なにより、欲をかいてはいけないな」

依頼されていないことはしないなら、加工法のことで目くじらを立てて、損したなどと言うべきではなかった。

「ご大層な社会常識とやらも、手前に都合のいいことを押しつける方便ではな。説得力に欠けるぞ」

魔術師リーダーは、他の魔術師たちに向き直る。

「鉱物を運び出せ。クライアントがお待ちだ」

・ ・ ・

建物から地下に下り、秘密の抜け道らしき地下道を進むソウヤ。やがて、魔法を使った痕跡を感じ、そして惨殺死体が転がる現場に到着した。

「強盗か……」

死体の身なりから、ソウヤはそう判断する。

「こいつらがロッシュの工房に侵入したのか」

殺しの方法は魔法によるもので、武器でやられた者は皆無だった。

「たまたま通りかかった人が……というような場所ではないんだよな」

おまけにバァ鉱物も見当たらない。仲間割れか、ここで遭遇した者の仕業。あるいは強盗に依頼したクライアントがいて、その者によって始末された、というところか。

「相手は魔術師」

ソウヤは地下道を移動する。鉱物を持ち去った者は果たして何者か。