軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談151話、祝いとなれば焼き肉と酒。

魔王軍の残党は、壊滅した。

その最後の拠点である地底城は半壊し、ドラゴンの報復は一応の決着をみた。

とはいえ、魔族が滅びたわけではない。一部の過激派は、滅ぼせとお怒りだったものの、根絶やしにしなければいけないという風には、ソウヤやジンは考えていなかった。

ソウヤはともかく、ジンという神竜に次ぐとされているカイザードラゴン――実際は関係ないのだが――の意向とあれば、ドラゴンたちもそれで手打ちにするのであった。

「ファイアードラゴンが、もしこのドラゴン会議にいたら、魔族絶滅と言って聞かなかったんだろうなぁ」

ソウヤがぼやけば、ジンは苦笑する。

「報復の原因がファイアードラゴンとその眷属へ根絶やしに対するものだったからね。目には目を歯には歯を、ではないが、魔王軍の残党が仕掛けた根絶やし戦争だ。ファイアードラゴンの気性以前に、彼にはそれを言う資格はあっただろう」

あまり考えたくはないが、と老魔術師は言うのである。

そのファイアードラゴン自体は三年前の魔王軍との戦いで、一族もろとも命を落とした。今ではフラムと名付けたファイアードレイクと、一部属性混血くらいしか、火属性ドラゴンは残っていない。

クレイマンの浮遊島に戻ったソウヤたち。アクアドラゴンが魔王軍の残党の掃討祝いの祝賀会などとのたまい、その日は盛大に騒いだ。

要するに酒が飲みたいだけなのだが、ドラゴンたちが意外と酒好きというのが、ここ数年でソウヤもわかってきた。

「何かバーベキューをやるの、久しぶりな気がする」

ソウヤが、菜箸で肉を焼く傍ら、人型サイズのドラゴンたちが、次々と肉をかっさらい、胃に収めていく。

「主ら、肉ばっか食ってないで、酒も飲め、酒をーっ!」

アクアドラゴンがグビグビ酒を喉に流し込みながら叫ぶのである。ミストはもぐもぐ食べながら返す。

「アナタは酒だけ飲めれば満足なんでしょうが……。向こうで一人でガバ飲みしてなさいよ!」

「いやじゃ! 肉も食うんじゃ!」

相変わらず、口調が安定しないアクアドラゴンである。ジンは、トウモロコシらしきものを食べ、ふと手を休める。

「定期的に焼き肉大会はやっている気がするんだがなぁ」

「いや、肉を並べたりするの、オレあんまやってこなかったじゃん」

ソウヤは菜箸を器用に操る。もうリハビリどうこう言わず、自然に使っている。

「最近はもう人だった頃と同じくらいになっているけど、前のバーベキューは、その前だっただろ?」

「そうだったかな? そうだったかも」

ジンは顎髭を撫でつけた。

「しかしその代償に、君はほとんど肉を食べれていないようだが……?」

「まあ、な……」

苦笑するソウヤ。肉に群がるドラゴンたちが、ソウヤが並べ、焼いた肉を次々に胃に収めている。彼はそれを怒るでもなく、穏やかに見やり、そして薄ら笑みを浮かべる。

それを眺めるジンは、ソウヤの笑みの中に物悲しさを感じた。

「それ、あたしんだぞ!」

「ワタシのよ!」

影竜とミストが、いつものように争いを始める。まただよ、という顔をするフォルスは、ちゃっかり自分の分を確保しつつ、距離をとる。ちゃっかり焼き肉大会に入り込んでいたヴィテスは、さっと幼いフラムを抱えて避難した。

ドラゴンたちの晩餐。

ジンは思う。この中で人間なのは自分だけで、後はドラゴンばかりだ。ソウヤはハーフではあるが、他はすべてドラゴン、しかしこの会に限れば、皆、人の姿をしている。

不思議なものだ。自分たちの種族に誇りと傲慢さを持つドラゴンが、わざわざ人の姿になって、食を楽しんでいる。

変わるものなのだ、ドラゴンも、人も。

・ ・ ・

一夜明け、楽しい晩餐の後、ドラゴンたちの会合は、ソウヤのこれ以上ないほど真面目な顔から始まった。

「ガルたちを蘇らせるため、時空回廊に向かおうと思う」

宣言するような言葉だが、ドラゴンたちの反応は薄かった。というより「知っている」、「何を今さら」という顔をするのだ。

かつてのファイアードラゴン・テリトリー。火山島の奥の時空回廊――

「さらに深部におわす、神竜に会い、ガルたちを蘇らせてもらう。神竜には、それができる力がある」

普通は、人を復活させるなんてことは不可能だが、神の竜にはそれが可能と直接聞いている。そのためには遺体だったり、生前愛用していた品などが必要だが、遺体に関しては、ソウヤのアイテムボックス内に保存してある。

「だが問題は、守護者がうようよいることだ。アースドラゴン爺さんが言っていたように、ここに入って、帰ってきた奴はいない」

「アナタは帰ってきたわよ?」

ミストが挑むように言った。ソウヤは首を横に振る。

「逆走していただけだ。帰る分はお目こぼししてくれるが、行きには容赦がない。正直に言って、オレでもちょっと自信がない。初めて魔王城に挑んだ時も緊張したんだが、それ以上のプレッシャーを感じた」

「で、何がいいたいの?」

クラウドドラゴンが尋ねた。二日酔い顔のアクアドラゴンをよそに、影竜、そしてフォルスが改めてソウヤを見る。

「つまりは、オレは行くけど、他はご遠慮してほしい……そういうわけだ」

ソウヤは説明する。

「ガルとカリュプスメンバーを復活させたいと思うのは俺のわがままだからな。それで守護者たちと戦うことは、オレは自己責任ではあるが、他はそうじゃない。皆の実力は知っているが、それでも守護者相手では厳しい」

ミイラ取りがミイラになる、ではないが、それで周りを巻き込むわけにもいかない。

アクアドラゴンが口を開いた。

「私たちでは力不足、とでも言うのかー? 馬鹿にするなーっ……イテテ」

「四大ドラゴンは何かあると、一族に関わるからほんと、遠慮してほしい」

ソウヤが真顔で言えば、クラウドドラゴンは皮肉る。

「あなたも四大ドラゴンの一翼をになっているのだけれど……?」

「オレは新参だし、アースドラゴン爺さんが健在だから、何かあれば他にもいる。でも、クラウドドラゴンやアクアドラゴン、それにフラムにも代わりはいないだろう?」

「ワタシは行くわよ」

ミストはきっぱり告げた。ソウヤは眉をひそめる。

「いつもなら歓迎だけど、今回ばかりは……」

「そう。ワタシが死んだら、アナタが神竜のもとまでワタシを連れていけばいいのよ。アイテムボックスなら運べるでしょう?」

「あぁ……」

そういう手もあるか、とソウヤは少しばかり感心した。だがすぐに気づく。

「それ、オレが絶対死ねないやつじゃん」

「どうせ死ぬ気なんて、ないんでしょ、アナタは」

ミストに皮肉られ、唖然とするソウヤである。先ほどから黙しているジンに、助けを求めるように見れば、老魔術師は静かに肩をすくめるだけだった。