軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談99話、見た目と偏見

街道を外れ、森へと入るフォルス。ナダ、そして従者のナギもついていく。

「可能性としては、何だと思う?」

ナダは周囲へ気配を飛ばしながら、先頭のフォルスに問うた。おそらく敵であろう魔族の臭いを辿っているフォルスは、振り向くことなく答えた。

「どうだろうね。臭いだけでは難しいよね」

何とも緊張感に欠けるのんびりした口調だった。

「種族としてはリザードマンに近いね。近いというのは、いわゆるリザードマン系なんだけど、判定上、魔族に分類されているやつ」

「リザードマン系か」

人と比べると体格が大きめに感じてしまうが、パワーがあり、かつ鱗が硬い。個々で戦うと中々に厄介な種族だ。

「……リザードマンと言えば」

「フラッド!」

ナダの言葉に、反射的にフォルスは言った。

「フラッドは元気にしているかなぁ?」

銀の翼商会にいたリザードマンの戦士。元は勇者パーティー組だとナダは聞いた。

非常に冷静な人物であり、亜人種族に対するナダの印象を大きく変えた。それまでは亜人は人に比べて原始的かつ野性的であると見ていたのだが、それは偏見であったと今では思う。

またフラッドは、東方の国の古い方言を使うところからも、その辺りで不思議な親近感がわいたのかもしれない。

「フラッド殿か。久しく会っていないが、フォルスはどうなのだ?」

かつての仲間たちの間をフラフラしていると小耳に挟んでいるのだが。

「うーん、ボクもここしばらく会っていないなぁ。コレルと一緒に秘境探検でもしているんじゃない?」

「確かに」

あの二人は、よくつるんでいた印象があるナダである。

「奇妙なものだ。知己を得たせいか、リザードマン系と言われると、どうにも戦いにくくなってしまってなあ」

それまでは戦いとなれば躊躇いなく斬れたのだが、一度親しくしてしまうと、どうにも腕が鈍るのである。

「そんなものかな」

フォルスは後ろから見てもわかるくらい首をかしげた。

「魔族に識別されているリザードマンは、きょーぼーだから、遠慮はいらないよ」

さばさばしているドラゴン少年である。

「話してくるなら、聞いてやってもいいけど、そうでないなら問答無用だー」

「話しかけてこずに来るなら、相手も問答無用だな!」

ナダは冗談めかす。フォルスは笑ったが、最後尾のナギは呆れまじりに首を横に振った。

臭いを辿る道中、血の跡がポタポタと残っていて、これはそのまま追跡できそうだとナダは感じた。

が、途中でフォルスは方向を変えた。

「どうした? 血痕はそっちではないが……」

「臭いが小さい。たぶんそっちは一人。集団はこっち」

「囮、ですね」

忍びであるナギが口を開いた。

「追っ手が血の跡を辿ってくる可能性を考えて、敢えて別方向へ誘導しようというのでしょう」

「追っ手を振り切る必要がある連中ということは、面倒な奴らだぞ」

ナダは唸った。

「手慣れた盗賊か、本当に魔王軍の残党やもしれない」

3人は進む。森は深くなり、獣道じみた隙間を抜けていく。ナギが草についた血を見つけ、正しく追跡していることを証明した。

そして――

「いるねぇ」

フォルスがやはり緊張感に乏しい、しかし声を落とした。

何が――と言いかけるナダだが、ナギが先に口を開く。

「待ち伏せのようですね。5……6体」

忍びの察知能力、そしてドラゴンの索敵は、潜伏している敵を感知した。しかしナダは、気配を澄ませど、まだ敵を捉えていない。

「これはいよいよ、何らかの組織だよねぇ。とりあえず、そろそろ準備して」

フォルスは言った。

そういえばこのドラゴン少年は冒険者になったと聞いているが、その実力はどの程度のものか、ナダは知らない。

敵には気づいているようだが、その割には素人っぽくズンズン進んでいるようにも見える。大丈夫なのだろうかと、不安にもなる。

この頃になるとナダも隠れている敵の気配、その殺気から位置を掴みはじめていた。

――6体? うーん、私にはまだ4体なのだが。

「そろそろ来るよ。3……2……1」

フォルスがカウントダウンした時、周囲の茂みが動き、黒い塊が飛び出した。

魔族系のブラックリザードマン。それらが武器を手に襲いかかってきたのだ。

「問答無用とは! フォルス!」

「うん?」

注意しろ、という意味で呼びかけたフォルスが、振り返った。

馬鹿、敵が迫っている中、素人みたいに振り返って――と思った刹那、正面からフォルスに向かっていた黒リザードマンの体が斜めに両断されて崩れ落ちた。

見ればいつの間にか持っていたのか、勇者ソウヤが振り回していた斬鉄のような鉄剣がフォルスの手にあった。

正体はドラゴン。しかし今は少年戦士に化けている。その何とも緊張感のない、無邪気な少年の顔がいけないのか。

さも何事もなかったかのような態度のまま、敵リザードマンを仕留めていた。圧倒的強者。上級冒険者や戦士の態度そのものだ。

――私は、彼が子供だと決めつけ、侮っていたようだ。

ナダは、まだ見た目で判断する癖が抜けていないことに自嘲したくなった。あれは人の皮を被ったドラゴン。ドラゴンから見れば、そこらの人も亜人もただの雑魚。

リザードマンに対する偏見に気づき、自分も成長したと思っていたが、それは思い上がりだったようだ。

「まったく子供に、教わるとは……。いや、その考え自体が間違っておるのかもな」

疾風!――ナダの抜刀。風斬りの刃は、ブラックリザードマン2体を瞬時に両断した。