軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談81話、勝ち上がるガル

8人のペルスコットが戦い、4人になった。

幼少の頃から鍛えられ、暗殺者に仕上げられ、ペルスコットの名を与えられたエリートが殺し合いで4人が死んだ。

次にさらに2人が命を落とすことになる。ガル、トリーン、ブィ、ルフの4人のうち2人が。

組み合わせは、この場で抽選となる――監督官役のハミット・ペルスコットは告げた。

つまりトーナメント形式ではなく、変則勝ち上がり形式ということだ。もっともクジ運次第で、試合順の組み合わせになる可能性もあるが。

箱の中に番号のついたボールを四つ。皆が見守る前で入れられた。不正はない、というアピールで、組み合わせは本当にランダムであるとアピールしたいのかもしれない。

しかしガルに言わせれば、こんなものは茶番だ。何故なら、どうせ4人のうち生き残るのは1人。誰が当たろうが、そいつを倒せばいい。だから、そんな公正さも、ランダムアピールも不要だと思った。

「第一試合、ガル・ペルスコットとトリーン・ペルスコット」

第二試合は、ブィとルフで決まった。

早速、決闘場へ移動するガルとトリーンだが――到着寸前、背後にいたトリーンが奇襲を仕掛けた。

しかし、ガルは 躱(かわ) した。

「何ぃっ!? オレの空打ちを避けただとっ!?」

「……お前が卑怯な奴なのは知っている」

ガルは一足先に、決闘場に飛び乗る。

「もう少し殺気を抑えるべきだったと思う」

「へっ、オレの殺気がビンビンだったから避けられましたってか、スカし野郎」

トリーンも決闘場に乗った。ガルは淡々と告げる。

「こんな堂々とした場所で戦うのは嫌だろう、トリーン?」

「ああ、まったく。気にいらねえな。殺し屋は目立つべきじゃねえんだ」

「……それは冗談のつもりか?」

ガルが小首をかしげれば、トリーンは「はあ?」と顔を歪めた。

「オレが目立つ格好だとでも言うんじゃねえだろうな?」

赤毛に、軽薄そうな顔立ちの小悪党のようなトリーンである。

「まともな村人なら、お近づきになりたくない格好をしていると思う」

「田舎じゃ、そもそも紛れられないんだよ、余所者はな」

トリーンは口元を歪めた。

「オレのスタイルは都会の不良だ。馬鹿に因縁をつけられることなく、こちらは突っかかることができる都市迷彩ってやつだ。お前らと違って頭使ってるんだよ、こっちは!」

トリーンは説教がましく言った。しかしガルは表情一つ変えない。

「ん? なんだ、ガル。何か言いてえのか?」

「最期の言葉はそれでいいのか、と思って」

トリーンのありがたいお説教も、これから殺す相手なのだから真に受ける必要もない。

「ほんとに、気にいらねえな、スカし野郎。見た目がいいからって、どこまでもふざけたヤツだ!」

両手をガルに向けて突き出すトリーン。見えない凶器が飛び、ガルの心臓と脳天を狙うが、ヒラリと躱される。

「!? 見えているのか!?」

「要するに魔法だろう。無詠唱の」

見えない一撃と言っても、なんて事はないただの魔法だ。トリーンは立て続けに指を向けたが、ガルは器用に避けて見せた。

「あ、当たらねえ……! 何でだ!?」

「魔法なら目で見える」

ガルは剣を抜いて近づく。

「指先から真っ直ぐにしか飛んでこないのだから、その先にいなければ当たらない」

「っ!?」

当たらない。トリーンが魔弾を撃ち込むが、ガルには掠りもしない。トリーンは焦る。

「お前の魔法は、攻撃範囲を狭めて威力を上げているタイプだ。当たれば必殺かもしれないが、範囲が狭い分、当たりづらい」

ガルが剣を振り、見えない魔弾に当てた。

「……あいにくと、俺はお前より魔法の扱いに長けた者たちを見ているからな」

銀の翼商会で、ジンという大魔術師を見て、その弟子として破格の術者となったソフィア。そして彼女に引けを取らない実力を戦闘技術と魔法カードで獲得したセイジ。……そして彼に魔法返しを教えたのは、そもそもガルである。

「遅いんだ。お前は」

ガルが剣に当てた魔弾は跳ね返り、トリーンの額を撃ち抜いた。

「お前は暗殺者としては、たぶんいい腕だったのだろうが……。戦士と正面きって戦うタイプではない」

彼の敗因を挙げるなら、相性が悪かったのだろう。町中に紛れての奇襲や、素人相手に喧嘩をふっかけて始末するのは得意だったに違いない。こういう決闘場で戦うということ自体がよくないのだ。

だから、決闘場につく前に殺せなかったのが、トリーンにとっての失敗だった。

「勝者、ガル・ペルスコット!」

審判役が手を挙げた。

・ ・ ・

ガルは、最後の一人に王手をかけた。

次の試合、ブィ・ペルスコットとルフ・ペルスコットの対戦の勝者と戦い、それを殺せば、ペルスコット家の次の当主となる。

正直、ペルスコット家のことなどどうでもいい。しかし、まったく恩を感じていないかといえば、そんなこともない。

幼小の頃、両親を失い、逃げることしかできなかったガルを拾い、暗殺者として力をつけさせてくれた。幼き日の復讐を果たすことができ、今は、魔族やら敵対する奴らを返り討ちにするに充分な能力を得ることができた。

今の自分を育ててもらった恩はあるのだ。だが、実力をつけた今、その面倒に煩わされるのは勘弁だった。

後継者云々で時間を浪費するよりも、魔王軍の残党を叩きたい――それが、ガルの本心である。

「……いよいよ、後継者候補として王手をかけたな、ガル」

ハミット・ペルスコットが、ガルの傍らに立った。第二試合ははじまっており、パンクな見た目の少女とメイドな少女が戦うという異様なバトルが繰り広げられている。

「この二人のどちらかと戦い、勝てばお前がペルスコット家の次期当主となる」

「……あなたは俺に期待しているのか?」

「強い者に従う。それだけだ」

ハミットは淡々と告げた。

「それがお前か、あるいはあそこの二人のどちらかでも、だ」

「……俺が勝ったら、ペルスコット家は俺の自由にしていいのか?」

「それが当主というものだろう」

「……」

ガルは口を噤んだ。視線は、当主候補となった女たちの戦いへと向いた。