軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談69話、ソウヤ、仲間たちを救い出す

アイテムボックスの効果は絶大だった。

触れていた灰色の空間をも、取り込めたのだから。さすが、試練の果てに手にした特別製アイテムボックスである。

アースドラゴンとクラウドドラゴンは目を丸くしている。

「灰色が、消えた……」

「収納してしまったの、ソウヤ?」

「ええ……みたいですね」

ソウヤは、アイテムボックスの中身を確認、リストを表示する。そして思わず笑みが浮かぶ。

「思った通り、時間経過無視の収納スペースが一つ増えています! この灰色、アイテムボックスの時間経過無視と同じものだったようです」

大体予想通りで、ソウヤは安堵する。もし違っても収納さえできれば、識別もできたし取り出せただろうが、何かアイテムボックスにダメージがあった場合、何が起きるかわかったものではなかった。

「しかし、魔王軍の残党の仕業なんだろうけど、時間経過無視空間を武器として使ってくるなんて、恐ろしいことを考えるもんだ……」

それで範囲内の全てが時間経過せず止まってしまう。ただ自分も対策できないと、せっかく時間を止めてもトドメを刺すこともできないから、圧倒的有利な魔法、あるいは魔道具というわけではないが。

「ソウヤよ」

アースドラゴンが呼びかけた。

「中におった者たちは無事に出せるか?」

「おそらく。しっかりアイテムリストに入ってます」

生物も入れるアイテムボックスでよかった。ソウヤがリスト上の名前をタッチすれば、仲間たちが次々と、アイテムボックスから出てきた。

・ ・ ・

「そんなことになってたの?」

こちらの空間に復帰したミストは、灰色の空間のことをまるで覚えていなかった。

「一瞬、暗転したって思ったら、目の前にアナタがいるのよ? 実感なんてまるでないわ」

「時間が経過しない空間から引っ張りだされれば、そうなるよな」

ソウヤは笑った。

これまでも時間経過無視の空間に収納していた瀕死の仲間などを、回復させるためにアイテムボックスから出した直後などで、そういうのは経験している。

時間が止まった世界での意識もまた止まっているから、知覚できないのだ。

アースドラゴンが肩をすくめた。

「実際、お主たちが、遺跡に乗り込んだ日から四日が経っているからな」

「四日ぁ!」

遺跡で大暴れしていたアクアドラゴン――水色髪ツインテール少女は喚いた。

「嘘だー! ほん一瞬だったろう! 四日も経っているわけなかろうーだ!」

「なかろーだ!」

フラムが、アクアドラゴンの真似をした。あの空間にいたら、知覚できないからそうなる。クラウドドラゴンが鼻をならした。

「たかが四日。四の五の言わない」

ドラゴンにとってはささいな時間。十年ぶりに復帰したランドールやカーシュの話を聞かせようか、とソウヤは思った。それとも、そこにいるコレルとフラッドから話を聞いたほうが早いか。

「それはそれとして――」

クラウドドラゴンが、アクアドラゴンからソウヤに向き直った。

「ソウヤも、時間経過無視空間の範囲にいたけど、結果としてどこかは飛ばされてしまったみたいだけど、あれはどういうことかしら?」

「オレにもよくわからないですけど、もしかしたらアイテムボックスの安全装置が働いたんじゃないかって……」

「安全装置?」

「オレのアイテムボックス、収納のために時間経過無視空間が作れるんですけど、それが万が一、周囲に漏れ出したとか、誤作動で持ち主が止まって動かなくなるのを防ぐために、自動で空間から距離を取るようになっていたとか……?」

「そう都合よくいくかのぅ」

アースドラゴンが顎髭をいじる。

「単に想定外の力と反応して、吹っ飛ばされただけではないか?」

それが安全装置なのでは、と思ったが、それで虚無空間に飛ばされた身としては、イレギュラーが重なってああなった、と考えるほうが自然かもしれないとソウヤは思った。

「まあ、それでいいです」

ソウヤは深く考えるのをやめた。考えても推測はできても、正解かどうかはわからないと思ったからだ。虚無で出会った師匠と居た影響である。

気を取り直して、アイテムボックスのリストを見やる。

「時間経過無視空間に捕らわれた魔王軍残党が十数名いるんで、彼らを尋問すれば、何を使ってきたかわかるかもしれません。他にも、残党の情報とか」

「……む? 何故、私を見た?」

訝るアクアドラゴン。遺跡の魔族を皆殺しと言わんばかりに、大怪獣攻撃をやった水の大竜である。敵を全滅させてしまい、最悪、捕虜がとれない可能性だってあった。

「それで」

またもクラウドドラゴンが突っ込んできた。

「この四日間、ソウヤはどこにいたの?」

「……」

やたらしつこい気がするのは何故か? バローク遺跡にいたはずなのに、世界の果ての火山島にいた理由を知りたいのだ。

クラウドドラゴンは気ままな風のドラゴンだが、関心が深くあると割としつこい性格だった。

――土産話には事欠かないか。

ソウヤとしても貴重な体験だった。前半の虚無の世界の話はともかく、後半の神竜と会った類いは、相当驚くのではないか。

ただ――

「信じてもらえるかなぁ……?」

かなり荒唐無稽な内容が含まれている。周りがそれを聞いて、何を思うのか――

「ワタシも聞きたいわ」

ミストが、そばに座った。その膝の上をフラムがよじ登る。

「ぜひ聞かせてちょうだい」

「ききたーい!」

「上手く話せるかなぁ」

ソウヤは少々照れくさくなる。改まって言われると、どう話したものか考えてしまう。普通に考えて順番に話すのがいいのだろうが、それはつまり、得体の知れない虚無空間と、そこで会った謎の人物『師匠』の話となる。