軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談49話、割れた卵と覆面の人物

フラムとコレルは、岩陰に砕けた卵を発見した。

ソウヤたちが現場に行けば、確かにそこにはドラゴンの卵らしきものがあって、中からドロリとした液体が少し漏れ出ていた。中身はほぼなくなっていた。

「何かに襲われた跡、だな……」

「しかも、これまだ新しいでござるよ」

検分したフラッドが言った。以前来た時は気づかなかったが、思えばフラムも、卵で発見されていたわけで、この火山島に、他にも火属性ドラゴンやその眷属の卵が残っていてもおかしくはない。

「この島にも生き物が戻ったと喜ぶべきところ、なのかなぁ……」

この不毛な大地に、ドラゴンの卵を食べてしまうような奴がいるようだ。自然的には歓迎すべきことかもしれないが、この島にいる者、これから生まれようとしているモノにとっては、喜ばしくはないかもしれない。

「やっぱり、火属性のドラゴンかなぁ」

ドラゴンの卵を食べるということは、そういうことなのだろうと思える。

「ドラゴン!」

コレルが反応した。従魔契約できるかも、と期待しているような顔である。

――どうだかな。

火属性のドラゴンというのは、ドラゴン族でも大変、短気で気性が荒いという。フラムのような和気あいあいとした環境で育ったならともかく、荒々しい火属性ドラゴンの環境となると、凶暴なモノが特に多いと聞いている。

「なあ、ソウヤ。卵食いの犯人を特定しよう!」

コレルは言う。

「ここでこいつが、この島に残っている卵を全部食ったら、火属性ドラゴン種は絶滅してしまうかもしれない!」

ソウヤはフラムを見た。少なくとも、絶滅はしないと思う。ドラゴンは単独でも子供を作れる。

「そもそも、卵を食った奴もドラゴンかもしれないぞ」

自然界では、よくあることだ。人間が横からしゃしゃり出るものでもない。

「まあ、ちょっと探してみるだけでもよいでござらんか?」

フラッドが呑気な声を出した。

「相手の正体を確かめてから判断してもよいでござる。自然界にとって良し悪しを見定めてからでも、遅くはないでござる」

「……フラム、帰るか?」

「やー。まだここにいるー」

フラムはこの火山島にもう少しいたいようだった。それならば、コレルたちに少しばかり付き合ってもいいだろう、とソウヤは思った。ここで彼女が帰りたいといえば、即終了だったのだが。

何事も子供優先になりつつあるソウヤである。

コレルは相好を崩すと、フラッドを見た。

「それで、犯人の手掛かりは?」

「某の見立てでは、ワイバーンか、ドラゴン、それ系でござるな」

フラッドはしゃがみ、地面に残っている比較的新しい大きな足跡を指す。

「あまり足跡がないところからして、ここへ飛んでやってきて、同じく飛んで去っていたったのでござろう」

「空を飛んでいるのか……」

ソウヤは腕を組む。それならば、島の周りを飛んでぐるっと周回すれば、見つけられそうな気がする。

「どっちへ行ったかわかるか?」

「こっちから、向こうへ踏み出したようでござる」

足跡の深さなどを比較して、フラッドが推測した。火山島の南西側、時空回廊のある神殿の南方向である。

「追いかけてみるか」

ソウヤはドラゴンの姿になった。

・ ・ ・

少し飛んでいたら、犯人らしきそれを視認した。

ワイバーン種と、その背中に乗った覆面の人物――

「何だあいつは!?」

ソウヤドラゴンの背に乗るコレルが叫んだ。

「ひょっとして、あいつがドラゴンの卵を割ったのか?」

「それはわからんでござるが……。先の足跡も、だいたいあのワイバーンのような感じだったでござるな」

ソウヤドラゴンの手の上に乗っているフラッドが言った。

「じゃあ、あいつが犯人じゃないか! とっ捕まえよう!」

『何で?』

まだ足跡が、あのワイバーンのものと確定したわけではない。それっぽい、というだけで犯人扱いしていいものかどうか、ソウヤには判断がつかなかった。もっとも、ほぼ無人で、成人ドラゴンもいないこの島にいるというだけで、怪しくはあるのだが。

ワイバーンと乗っている覆面が、ソウヤドラゴンに気づいた。覆面の人物は、ワイバーンを下りると、背中の槍を左手に保持しつつ、開いた右手を振ってきた。

『友好的そうだな』

一瞬、密猟者かとも思ったが、ひょっとしたら冒険者かもしれない。こちらがドラゴンであるのは見えたはずだが、人が乗っているのを見て、すぐに手を振るあたり、犯罪者や、後ろめたい者ではないだろう。

「一応、警戒はしようぜ」

コレルが言った。ソウヤドラゴンは、手を振る覆面の人物とワイバーンの近くに降りた。両手で乗せてきたフラッドが下り、コレルもドラゴンの背から飛ぶ。

「こんなところで人と出会うとはな。冒険者……か?」

覆面の人物――声からして男が、幼女を見て首を傾げる。こんな危険な火山島に子供を連れてくる時点で、疑問に思うのも無理はない。コレルが口を開いた。

「なに、ファイアードラゴンがいなくなった火山島がどうなっているのか見にきた口さ」

「ひょっとして、あんたの国でも、火属性ドラゴン狩りでもやってるのかい?」

覆面の男の言葉に、ソウヤドラゴンは目を見開く。コレルも眉をひそめた。

「火属性ドラゴン狩り? なんのこった?」

「違うのか。……いやなに、俺の国がファイアードラゴンとその一族に滅ぼされてしまってね」

男は言った。

「その生き残りが、復讐のために、火属性ドラゴンを根絶やしにしようと、奴らの卵を探してぶち壊して回ってるわけだ」