軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談44話、ニアミスは続く

ソウヤドラゴンは飛ぶ。合わせた両の手の平の上に、横たわる石化フラッドと、それを支えに座るコレル。なおドラゴンの背にはフラムがへばりついている。

「一体どこへ連れていくつもりなんだ?」

風の中、コレルの声がしたが聞こえないふりをする。ソウヤドラゴンは、火山島――時空回廊を目指す。それで仲間たちの石化を解除するのだ。

フラッドは石化しているから何も言えないが、コレルはやたらとコミュニケーションをとろうとしてくる。

魔獣使いのプライドなのか、彼の魔獣に対するスタンスなのかは知らない。ソウヤとしてはドラゴン化した顛末を今、話すべきか考えあぐねている。

リハビリ中で、人間社会への復帰は力のコントロールができるようになってから、と考えていたから、それができる前に打ち明けるのは憚られた。

死んだとされている勇者が、実は生きていましたとなれば、かつての仲間たちはすぐにでも会いに駆けつけてきそうではある。その時、ちょっと触れただけで、相手を殺してしまうような状態であるソウヤだから、会いたいけれども会えないという微妙な状態なのだ。

フラムなどは、母親代わりのミストにベタベタで、ソウヤにもくっつくが、基本、フラムからくっつくようにさせていて、ソウヤから、彼女を抱え上げたり抱きしめたりはしていないのだ。……ついうっかり触れてしまうことがあるが、その直後にいつもヒヤヒヤしてしまっているソウヤだったりする。

――おとーたん、どこへいくのー? お島へかえらないのー?

口では喋らず念話で、と伝えたフラムが聞いてくる。ソウヤドラゴンも念話で返す。

――世界の果ての火山島だ。フラムの生まれ故郷でもある。

――こきょー?

言ってもまだ理解できないようだ。仕方ないところはある。

「なあ、聞いてもいいか?」

コレルが相変わらず何か言っている。

「お前と、そこ背中の子ドラゴンはどういう関係なんだ? お父さんとか言っていたみたいだけど? お嬢ちゃん?」

フラムに振っても駄目だぞ――ソウヤドラゴンは、娘を守る父親のようにコレルを睨んだ。

それで意味が伝わったか、コレルは手を挙げて『落ち着いて』のジェスチャーをした。失言だと理解はしたようだ。言葉を交わさずとも案外通じるものだ。

「お……何だ?」

風の音のせいで、コレルの呟きがよく聞き取れなかった。もっとスピードを出せるが、手の平に乗せている二人を落とさないに注意しているので、全力は出せない。いざ落とした時に掴みに行ったら、そのまま握り潰してしまう未来が見える……。

斜め下を中心にした視界を少しあげて、正面を見ると、飛行する物体が見えた。高度はほぼ同じか。

何かと思えば、飛空艇だ。しかもその形は見覚えがあって。

「ゴールデンウィング号!」

コレルが叫んだ。うわ、懐かしい――とか言っている場合ではないソウヤである。高度を上げて、衝突回避。

普段ならもっと前を見ているから、もっと遠方で気づくが、コレルとフラッドを気にし過ぎて、不注意だった。

ゴールデンウィング二世号のマストを掠めるように、ソウヤドラゴンは飛び抜ける。背中のフラムが『おふねー!』と歓声を上げた。

ニアミスを起こしつつ、今は荷物を抱えているので、そのまま飛び抜ける。かつての銀の翼商会のフラグシップ。懐かしさが込み上げ、皆元気だろうか、と哀愁を覚えるソウヤだった。

・ ・ ・

その急接近を、ゴールデンウィング二世号の魔力式レーダーは捉えた。フィーアは、船長であるライヤーに通報する。

『高速飛行物体1、左舷水平方向より急速接近中!』

「いったい何だ? 飛空艇か?」

伝声管を通じて、船橋のライヤーは怒鳴る。雲量はさしてなし。操舵輪を握りながら、左舷方向に視線を走らせる。

『この速度は、ドラゴン、もしくはワイバーン級。大きさからも飛空艇ではない模様』

「おいおいおい……」

ドラゴンかワイバーンだと?――ライヤーは目を凝らす。

ドラゴンが飛んでいることなど滅多にないし、いたとしても影竜の子供たちの可能性がある。しかしワイバーンとなると、途端に戦闘に突入だ。奴らは平然と攻撃を仕掛けてくる。

「! あれか!」

とっさに望遠鏡をとっても、見つけた点を凝視する。

「……ドラゴン?」

見たことがないドラゴンだった。影竜でも、その子供たちでもない。となると危険だ。基本縄張りにうるさいドラゴンである。テリトリー外だとしても、我が道を阻む者は容赦なく潰す、地上最強の生き物なのだ。

「戦闘――ん? 何だ?」

ライヤーは、そのドラゴンの飛行姿勢の不自然さに気づく。

――誰か……人を、運んでる?

『ライヤー、回避運動を!』

フィーアの声が伝声管から響いた。

『目標、衝突コース!』

「くそっ! 面舵っ!」

ライヤーは操舵輪を回す。ドラゴンのほうも、ギリギリになってゴールデンウィング二世号に気づいたか、高度を上げた。マストをかすめ、ドラゴンは飛空艇のそばを通り抜けていった。

『対象、本船を通過、離脱しつつあり――よかったですね、ライヤー』

事務的なフィーアの報告。ライヤーは、通り過ぎたドラゴンの後ろ姿を見やり、呆然とする。

襲ってきたわけではなく、ただ通過しただけだった? ――いやいや、そんなことより!

「何で、あのドラゴン、コレルを持ってるんだ……?」

望遠鏡で一瞬見えたそれが、かつての勇者パーティーの一員だったコレルだったような気がした。

――新しい従魔自慢? だったら、挨拶に戻ってくるよな?

そのまま通り過ぎていったことに違和感を覚える。何か知らないが、面倒に巻き込まれたのではないか?

ライヤーは操舵輪を回した。

「フィーア、ドラゴンの針路を教えろ! 追跡するぞ!」