軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談41話、ソウヤ、お遣いに行く

天を彷徨うクレイマンの浮遊島。

屋外に出て、ソウヤは、ひょいと石を掴んで持ち上げようとした。が、指で挟んだ途端、石が砕けた。

「――その分では、まだまだ先が長そうじゃのぅ、ソウヤよ」

「アースドラゴン」

仙人のような容姿の老人がやってきた。人の姿をしているが、世界四大竜の一角、アースドラゴンが変化した姿である。

「目が覚めたのですか?」

「うむ。わしのテリトリーに、何者かが入り込んだのを感じたのでな」

アースドラゴンのテリトリーと言えば、世界の果て、大地竜の島だ。鬱蒼とした密林が広がり、コカトリスやバジリスクなどの石化系の技を使う魔獣が多く生息している。

「そんな遠くにいるのに感じ取れるのですか?」

「左様。長く住んだ土地には我が大地竜の力が染みこんでおる。離れておっても、異変を感じ取れる」

仙人じみた眉を動かして、アースドラゴンは見た。

「ソウヤよ、ちょっと様子を見てきてくれぬか?」

「わかりました」

たまにお出かけもいいだろう、とソウヤは思う。日々、人化状態でのリハビリを頑張っているものの、これが中々捗らない。

早く仲間たちに生存報告できるくらいには回復したいのだが、ドラゴン化のデメリットの解消にはまだ時間がかかりそうだった。

――気晴らしで外の世界を見てくるのもいいだろう……。

何か含みがありそうなアースドラゴンの視線。おそらく気分を変えてこい、という気遣いと思おう。

「おとーたん」

ファイアードレイクの子供であるフラムが、とてとてとやってきた。

「お出かけするー?」

「おう、ちょっとひとっ飛びしてくるわ」

「フラムもいくー!」

幼女も外にお出かけしたいようだ。ソウヤは、アースドラゴンを見ると、老人はコクリと頷いた。

「よし、じゃあ行くか」

ソウヤがドラゴン化すれば、フラムはその背中に飛び乗ると、ファイアードレイク化してくっついた。ドラゴンの背中に別種の子ドラゴンが乗るという、あり得ない光景である。

ソウヤドラゴンは翼をはためかせて、空へと飛び上がった。クレイマンの浮遊島を離れ、雲海の下へ降下しながら、世界の果てを目指した。

・ ・ ・

大地竜の島に、侵入者があったという。

どこぞの冒険者かだろうか? それとも嵐か何かで流れついたのか? 凶暴な魔獣が跋扈する島に、好き好んでくる者など、この世界を探してもいないだろう。

――いや、一人、心当たりがあるな。

魔獣使いのコレル。かつての勇者パーティーで共に戦った男。珍しい魔獣なら、ドラゴンだって仲間にしたいと突っ込む変わり者だ。

『いや、しかし……さすがにあいつのわけがないか』

『あいつー?』

背中にしがみついているフラムが、竜の言葉で聞いてきた。同じくソウヤも竜言語で吼える。

『昔の知り合いだよ』

『しりあいー?』

あっという間に島の上空に到達する。森だらけの島だが、そこに潜む肉食系の魔獣は、揃って石化攻撃と縁がある厄介なものだらけだ。大地竜の加護で、ソウヤは石化無効だが、ファイアードレイクは別だ。

『フラム、用心しろよ。ヘビみたいな奴とは目を合わせてはいけないし、煙をもくもくする鳥は、もくもくに触ると石になるからな』

『石こわーい。おとーたんがバラバラにしちゃうー』

『……』

いつも石を砕いているのはオレです――ソウヤは口元が引きつる。砕きたくて砕いているわけではない。砕かないように努力しているのだ。

下から、切り裂くような悲鳴じみた報告が響いた。これは――

「もくもく鳥――コカトリスだな」

何やら争っているようなので、ダイブする。

『いた』

コカトリスが、軋むような声をあげる先には、人の姿があった。しゃがみ込んで動いていないが、まさか石化ブレスで半身をやられたか?

・ ・ ・

「くそ、オレもヤキが回ったもんだぜ……!」

霧と思って油断した。コレルは動かなくなった右足を見下ろし、向かってくる巨鳥――高さ3メートルほどのニワトリの胴体に蛇を尻尾に持つコカトリスを見上げる。

相棒のフラッドは、石化ブレスにやられた。それがなければ、コレルも気づくことなく石にされてしまっただろう。すでに体にブレスが浸食され、少々手遅れだったが。

せめてもの救いは、従魔たちをここに連れてきていなかったことだ。あいつらを残して死ぬのは心残りではあるが、逆にあいつらが石化されて、コカトリスの餌食にならなくてよかった。

コレルが完全に石化していないせいか、こちらにコカトリスが近づいてくる。完全に石になったら、食われるのは自分が先かフラッドが先か。

と、その時だった。

巨大な咆哮が轟いた。この重々しく、力強い声は――

「ドラゴン……!」

頭上をかすめ、ドラゴンが低空を掠め飛んだ。大地竜――?

コレルは怪訝に思う。思ったよりドラゴンが細いような気がしたが、それよりも気づいたのは、そのドラゴンの背中に鱗の色が違う子供ドラゴンが乗っていたことだ。

わけがわからなかった。