軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第633話、魔王軍 VS 炎のドラゴン軍団

ファイアードラゴンとの追いかけっこを続けるプラタナム号。

短気なのだろうか、初対面からとても嫌われたものだと、ソウヤは思った。何が気に入らないのか、ファイアードラゴンはしつこく追いかけてくる。

ドラゴンはテリトリーに敏感だと聞いているが、ミストやアクアドラゴンたちが乗っているのを感じ取って、追いかけてきているのだろうか。

――それでこれとは、こりゃ話し合いもクソもないよな……。

まさしく問答無用である。ドラゴン同士でさえ、これなのだから、人間の話など聞きはしないだろう。

オペレーター席についているフィーアが振り返った。

「ソウヤさん、索敵装置が、巨大飛行物体を捕捉。おそらく魔王軍の浮遊城です」

「よしきた!」

ようやく魔王軍に追いついた。こちらの大陸を滅茶苦茶にしてくれたお礼をしなくてはならない。

「このままファイアードラゴンたちを引き連れる。派手に行こう!」

もう一息である。ソウヤは額にいつの間にか浮かんでいた汗を拭う。ファイアードラゴンのファイアーブレスの威力――もし直撃していれば、あっという間に全員蒸発だろう。さすがに緊張を隠せない。

プラタナム号はさらに加速。ファイアードラゴンの追撃スピードを上回り、引き離しにかかる。勇者飛空艇の速度は、風を司るクラウドドラゴンのそれと同等。ファイアードラゴンも、その速度には追いつけない。

・ ・ ・

魔王軍天空城。その観測所は、接近してくるドラゴンの集団を発見し、ただちに城内に通報した。

それはただちに、天空城の周囲を固める飛空艇艦隊にも知らされた。

魔王軍は、ファイアードラゴンとその集団が、追尾していることを知っている。追いつかれないように移動はしていたものの、足の早いタイプが現れるのは時間の問題だと思っていた。

だから魔族は、ただちに戦闘態勢に移行したが、現れたドラゴン集団の数に驚かされることになる。

「総数200」

玉座の間にいた魔王ドゥラークは、魔法によって映し出された映像を見やる。

「これは厄介だな」

天空城の周りにいる飛空艇の数は、そのおよそ半分。まともにぶつかれば、全滅は時間の問題だろう。

「どれ、この天空城を生み出した古代文明の力というものを、下等なトカゲどもに教えて差し上げよう」

ドゥラークは玉座に仕込まれた、制御球を手に取る。その上から手を起き、自身の魔力を流し込む。

すると仕掛けが働き、天空城の地盤である逆三角形の浮遊島から突き出している突起の先が、光を帯び始める。

「艦隊へ。天空城の前を開けよ」

味方を巻き込むつもりはない。ドゥラークが、接近する敵性集団への対処を進めていると、監視所から報告が飛び込んだ。

『高速移動体、急接近!』

ドラゴン集団より先行したのが移動物体がひとつ。あっという間に、魔王軍飛空艇艦隊に突っ込んできた。

「何だ……?」

白い飛空艇か。それは艦隊を突っ切り、急上昇すると天空城を通過、そのまま後ろへと飛び抜ける。

いったい何だったのか、ドゥラークにはわからなかったが、まずは目の前に迫る敵を排除しなくてはならない。

「古代の力よ。我らに刃向かうトカゲどもに死を与えよ」

制御球が光る。天空城の突起の先端が輝き、次の瞬間、電撃を放出した。それはさながら雷の竜だった。

それらがファイアードラゴンの眷属集団へと突っ切り、バタバタと撃ち落とした。強烈な電流に表皮は焼かれ、肉は砕け、炭となって落ちていく。

電竜の顎。古代文明兵器は、眷属たちを一撃のもとに屠った。その斉射で30から50のレッサードラゴンなど下級種が消えた。

しかし、次の瞬間、天空城を揺さ振るような強い念が襲った。ドゥラークも、その怒気に触れ、眉をひそめる。

「これは、ファイアードラゴンの念波か……?」

伝説の大竜の怒りの念。おそらく天空城のみならず、艦隊の魔族たちもこれに当てられ、恐怖を感じただろう。

『高熱反応、接近!』

巨大な熱線が、天空城に迫った。魔王軍飛空艇が何隻か巻き添えをくらい消滅。熱線――ファイアーブレスが、浮遊島の魔法障壁を直撃した。

『障壁魔力、半減!』

「ただの一撃で、そこまでの威力か。さすがは伝説のファイアードラゴン」

ドゥラークは口元に不敵な笑みを浮かべた。

天空城は再び電竜の顎を放つ。向かってきたドラゴンの眷属たちが撃墜される中、前衛の飛空艇艦隊に、彼らは飛び込み、猛威を振るいだした。

アラガン級飛空艇は、搭載する電撃砲を振りかざし迎撃。直撃した下級眷属が翼を焼かれて墜落するが、大抵の眷属はその爪や、口からのブレスで魔王軍飛空艇を引き裂き、そして焼いた。

マストを引き裂かれ、魔族兵が焼かれ――しかし魔族兵も反撃する。飛空艇からグリフォンやワイバーンに乗った魔族騎兵が飛び出し、それらと空中戦を仕掛けたのだ。

魔王軍が人類との戦いのために準備を進めていた飛行強襲部隊である。本来は空から地上の敵を攻撃するのが任務だが、敵飛空艇との戦闘も想定し、空中戦もこなせるよう訓練されていた。

装甲ワイバーンが、レッサードラゴンに食らいつき、お互いもつれ合う。ホークマンがクロスボウを用いるが、厚い鱗を持つドラゴン眷属に跳ね飛ばされる。

全体的に見れば、魔王軍は善戦していたが、ファイアードラゴンの眷属たちが個体性能差で押している印象だった。

ドゥラークもまた王座から戦況を見やる。双方入り乱れては、電竜の顎は使用が難しい。

「やはり、ファイアードラゴンを何とかせねばいかんな……」

赤い大竜が、再び炎のブレスを吐いて、敵味方問わず蒸発させながら、天空城の魔法障壁を削る。

――だが、そう簡単に障壁はなくならんよ。

制御球を持つドゥラークは、自らの魔力を流し込んで、天空城の魔法障壁を強化している。

一進一退。

だが、ここで異変が起こる。

何の脈絡もなく、唐突に、天空城とファイアードラゴンの眷属集団のいる一帯に光が広がった。

「この光は――!」

ドゥラークには覚えがあった。つい最近、これと同じ光を見たのだ。