軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第618話、恐るべき計画

ドラゴンを使った作戦を魔王軍がやろうとしている。

そう聞いて、黙っていられるミストではない。

「どういうこと? 知っていることを話しなさい!」

竜の威圧をナチュラルに発現させ、近くにいたカマルやリアハを震えさせる。魔王軍に対しては、敵意をまったく隠そうとしない霧竜。しかし、ダークエルフ魔術師のポエスは、ドラゴンの怒気にもまったく動じなかった。

「んー、私も詳しくは知らないが、この世界の北西の果てにある、とある島にいる、とあるドラゴンの集団に、ちょっかいを出したらどうなるのって言った奴がいてね……」

「……!」

ミストがギョッとしたような顔になった。

「まさか……正気?」

「おや、その反応、その島が何か知っているな? まあ、それはいいんだが」

ポエスは言った。

「要するにだ。伝説とも言われる古代竜のひとつ、ファイアードラゴンの巣をつついて、彼を怒らせようという寸法だ」

ファイアードラゴン――ソウヤもその名は聞いたことがある。魔王軍との戦いで、石化されてしまったレーラを助ける方法を模索している段階で耳にした。

時空回廊という時を戻す空間のある島をテリトリーにしているのが四大竜のひとつ、ファイアードラゴン。その性格は、戦闘狂であるミストでさえも、手のつけられないほどの好戦的かつ凶暴さだと言う。

その火のドラゴンに従う炎の眷属たちもまた、獰猛らしい。

「テリトリー侵犯に非常にうるさいドラゴンの中でも、暴れん坊で有名な炎の一族だ。そいつらが報復を叫び暴れ回れば、まあ大陸ひとつ滅ぼせるんじゃないのって話さ」

「冗談じゃない!」

ソウヤは声に出していた。暴徒の如くドラゴンとその眷属が暴れれば、文字通り、草も残さず全てを灰にしてしまうだろう。

「ガチで大陸が滅びるぞ……!」

「しかし――」

カマルが顔を引きつらせる。

「魔王軍が手を出せば、ドラゴンたちの報復は自分たちに来るのではないか? それでは意味がないのでは……?」

「普通に考えればそうだが、何も馬鹿正直に、魔族の姿で行かずとも、人間に化けるとか、あるいはどこぞの愚かな人間を放り込んで、火種にする手もある。というか、私だったらそうするね。それで人間のいる大陸を攻め滅ぼせば、楽に人類に勝てる」

「それはいつ行われる!?」

カマルが問い詰める。しかしポエスは肩をすくめた。

「いつも何も、検討されている、という話だけで、実際にその作戦が行われると決まったわけではないよぅ。……少なくとも、私は知らない」

「本当か!? もしや、すでに実行しているとか――」

「私の知らないところで実行されていることなど、答えようがないよ。……ただぁ、やるというのであれば、私のエルフの複製製造案は、採用されなかったんじゃないなぁ」

「どういうことだ?」

「どうせ滅ぼしてしまうんだから、複製なんか作らず、今いるエルフをさっさと誘拐してしまえば済む話ってことさぁ。わかるだろう?」

つまり、現時点で、ファイアードラゴンに喧嘩を売る案は実行されていない、するつもりがないということか。

「……でも、魔王軍なら、やるんじゃないですか」

リアハが絞り出すような声で言った。

「グレースランドの人間を魔物化して、周辺国の混乱と弱体化をさせようとしていましたし、ドラゴンでも利用できるなら、使ってくるかもしれない」

「どう思う、ソウヤ?」

ミストが聞いてきた。ソウヤは考える。

「もし、ドラゴンにちょっかいを出すとしたら、どのタイミングがベストだろうか、ってことだろ?」

人類を滅ぼす、というのなら、自分たちさえ無事なら、いつでも実行できる。ただし、人類や他種族を屈服させて、支配しようとするなら、ドラゴンによる絶滅焦土化は、旨みがなくなる。……つまり、その場合は、この手は没。

後者の場合、それでも実行するとしたら、魔王軍が追い詰められて、死なば諸共、もしくは起死回生の手として使ってくるかもしれない。

ただ、もしファイアードラゴンたちの行動をある程度制御することができるなら、戦術として組み込める。

たとえば人類との開戦劈頭に、ドラゴンたちを暴れさせ、人類側に大損害を与えて、弱体化ないし無力化。ドラゴンたちが引いた後に、魔王軍が悠々と占領――ということもできるわけだ。

「魔王が人類を滅ぼそうって言うなら、いつ使ってきてもおかしくない」

ソウヤの言葉に、周囲は絶句した。ポエスは口を開いた。

「しかし、ソウヤ。少なくとも、今の魔王軍はその手を使うつもりはないだろう」

使うなら、とっくに使っていただろうから。わざわざ大量の飛空艇を建造して、大艦隊を作る必要もない。

カマルは、口をへの字に曲げた。

「それを貴様の口から言われても、少しの気休めにもならない」

要するに信用がないのだ。魔王軍所属の魔術師の言葉を、どこまで信じられるのか。そもそもこの話さえ、こちらを混乱させるための手かもしれない。

「信じるわけではないが、一度そのファイアードラゴンのいる島を見に行って確かめたほうがよくないか?」

カマルは提案したが、ソウヤもミストも眉をひそめた。

「近づくのはお勧めできないわ」

「オレらが近づいて、かえって刺激することにならない?」

人類側の船が近づいたところで、魔王軍が仕掛けてきて、罪を人類側に被せるパターンとか。カマルは腕を組んだ。

「だが、監視は必要じゃないか? 可能性はゼロではないだろう?」

「それはそうだが……」

触らぬ神に祟りなし、という言葉もある。その時、プラタナムが発言した。

『お取込み中、失礼します。例の不審船を目視距離に捕捉しました』

追跡していた飛空艇に追いついた。さすが快速のプラタナム号。

「まずは、目先のエルフたちだな」

ソウヤは思考を切り替えた。ミストが視界を正面に向ける。

「まだエルフが乗っているって決まっていないわよね?」

「他に手がかりがないしな」

ポエスの言い分からすれば、一番可能性が高いが。

「プラタナム、飛空艇の側面につけろ。どんな船か見てやろうじゃないか」