軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第616話、エルフたちはいない

カーシュが意識を失っている間に、ソウヤは一度、緑の墓所の外に出て、コレルと合流した。

「テンロウがニオイを嗅ぎつけたんだ」

大狼を撫でながら、コレルは言った。

「カーシュのニオイなら、こいつらもよく知っているからな。それを追っていったら、森の奥に洞窟があった」

カーシュはそこで倒れていたらしい。クルの森のエルフたちが依然行方がわからないこともあるので、ソウヤはその洞窟へ向かった。ミストにレーラ、リアハ、カマル、メリンダが続く。

コレルと従魔はすいすいと森の中を進み、しばらく歩いた後、その洞窟に到着した。

「洞窟……?」

「あるいは、避難所かもしれないな」

見た目は洞窟の入り口だが、入ればすぐに、遺跡のように人工的に加工したと思われる室内となっていた。

「緑の墓所と内装が似ているな」

「そうなのか?」

墓所に入っていないコレルは首を傾げた。

「まあ、見ての通り、中はかなり広い」

「避難所かも、って話だったな」

入ってすぐに、血の跡がついた床があった。その色合いからして、まだ新しい。

「ここか? カーシュが倒れていたのは?

「ああ。ここには彼しかいなかったが、従魔たち曰く、集落で嗅いだニオイがいっぱいだったらしいから、ここに集落のエルフたちがいたと思う」

「だが、今はいない」

「そう。おれたちが来た時、いたのは死にかけているカーシュだけだった」

「どういうこと?」

ミストが片方の眉をひそめる。

「エルフたちはどこに行ったというの?」

「いや、どちらかというと、消えてしまった、というべきかもしれない」

「消えた?」

「ああ」

コレルは渋い顔になった。

「従魔たちに探らせようとしたんだがな。集落からここまでのニオイはあるが、逆に、ここからどこかへ出たニオイがなかったんだ」

「つまり、ここを出ていないと?」

カマルが考える仕草をすれば、ミストが自身の腰に手を当てた。

「でも、いないわよエルフ」

「魔法か何か?」

メリンダが、思いついたように言った。カマルは眉を吊り上げた。

「適当に言ったろ、今」

「悪いか!」

言い返すメリンダ。彼女は深く考えての発言ではなかっただろうが、ここにいたと思われるエルフが、出た形跡もなく見つからないとなると、それもあり得るかも、とソウヤは思った。

姿を消す魔法、あるいは転移の魔法とか?

「リアハ、見張ってくれ」

ソウヤは、グレースランドの騎士姫に頼むと、アイテムボックスから、ダークエルフ魔術師を出した。

床に投げ出されるように魔術師は突っ伏す。ソウヤは彼を座らせ、カマルに目で合図する。何も言わずとも理解したカマルは、ダークエルフ魔術師の前にしゃがみ込むと、彼を覚醒させた。

「おはよう、ダークエルフ君」

「……ここは、どこだ? うぅ」

ソウヤに殴られた腹を押さえつつ、ダークエルフ魔術師は呻いた。カマルは言う。

「よーく、周りを見渡してみろ。ここがどこかわかるだろう?」

「…………ああ、つまりエルフたちは見つけられたわけだ。おめでとう」

その言い分だと、クルの森のエルフたちはここにいたようだ。

「ふざけるな。エルフたちは見つかっていない。ここから消えた」

「消えた?」

ダークエルフ魔術師は目を丸くした。

「魔法で眠らせたのだ。勝手に目覚めて、出て行ったとも思えないがぁ」

「じゃあ、どうしてエルフたちはいないんだ?」

「さあね。集落に帰ったとか?」

「ここへ来る途中、集落を通ってきたが、エルフは誰もいなかった」

「……つまり、家にも帰ってない、と」

うーん、と考え込むダークエルフ魔術師。ミストが一歩前に出た。

「しらばっくれるんじゃないわよ。殺すわよ?」

「どうぞ、ご自由に。どうせエルフたちが見つかったら、殺されるものと覚悟している」

ダークエルフ魔術師は、メリンダやリアハから剣を向けられていても、以前と変わらず冷めていた。

「ふざけるな――」

「待て、カマル」

ソウヤは諜報員である仲間を止めると、ダークエルフ魔術師の隣にしゃがんだまま移動した。

「そこの血痕が見えるか? エルフの集落にいた、たぶんひとりの人間で、オレたちの仲間だった男が刺されていた」

「あぁ、何故か集落にいた人間だな。覚えている。……お前たちの仲間だったのか」

ダークエルフ魔術師は頷いた。やはりエルフの集落に、人間がいたことが珍しかったのだろう。

「彼も眠らせていたが、刺されていた……?」

「お前がやったのか?」

「まさか。殺すつもりなら、ここへ運び込むなんて面倒はしない。だが……そうだな、もしかしたら――」

「何だ!?」

カマルが顔を近づけ、声を荒らげた。ダークエルフ魔術師は淡々と言った。

「もしかしたら、魔王軍が収穫にきたのかもしれないな。今日は何日だ? 墓所にこもっていると時間の感覚がなくなっていけない」

魔王軍が、エルフの回収にきた。このダークエルフ魔術師が、死体から再生エルフを作り出し、それを素材として運び出す算段が、回収しにきた魔王軍は、ここに眠らされていたエルフたちを約束の品として持っていってしまったと。

「くそっ……!」

魔王軍に、エルフたちは誘拐された。仲間たちの顔も強張る。ダークエルフ魔術師は言った。

「そう考えるのが自然だろう。お前たちのお仲間だけ刺されていたというのは、彼が人間だったからだ。魔王軍は、エルフを回収しにきただけで、人間はお呼びじゃないからな。気の毒に」

「何を……!」

カマルが、ダークエルフ魔術師のローブを掴んだ。

「お悔やみを言うよ。私は彼も死なせずに済まそうと思っていたのだが、亡くなってしまったことは残念に思う」

「貴様! カーシュはまだ死んでいないぞ! 勝手に殺すな!」

死にかけていたが、救助が間に合った。カーシュは一命を取り留めた。

「……ということは、エルフたちが連れ去られて、まだ時間は経っていないということか?」

ダークエルフ魔術師は言った。

「まだ、近くにいるかもしれないなぁ、それは」