軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第612話、緑の墓所・内部

外は奇抜だが、中は至って普通の石造りの建築物だった。黒ずんだ石の壁は、日に当たらないせいか、やけに冷たかった。

通路を抜けると、広い部屋に出た。

「何もないな」

ソウヤは思わず呟いた。だだっ広いが、棺や墓石もなく、ただただ空っぽの部屋だった。ミストは微笑した。

「棺があるのは、二階分下よ。で、アガタの棺があったとされるのは、さらに二階下だったはず」

「来たはいいですが、やはり誰もいないのでは?」

オダシューが首を傾げた。

「全部調べるんですか?」

「実はこの構造物のどこかに、エルフたちが隠れている、という可能性は?」

ここまで来たのだ。きちんと捜索した上で、それでも誰も見つからないなら帰るまでである。

ソウヤたちは進んだ。と、その時、通信機が鳴った。

「オレだ」

『プラタナムです』

エルフ集落の上空に待機しているプラタナム号からだった。

「何かあったのか?」

『外は何も。むしろ、勇者ソウヤ。あなたたちの方こそ大丈夫ですか?』

「というと?」

『シグナルがだいぶ小さくなっています。地下にいるようですが、それ以上潜ると、私でもあなたを捕捉できなくなります』

「つまり、通信もできなくなるってわけか。サンキュー、プラタナム。今のところ、オレたちは元気だよ」

やりとりの後、通信を終えてソウヤは先を急いだ。プラタナムが探知できないということは、エルフの人たちがここに隠れていてもわからないということだ。俄然、確認しないといけない。

下の階層へ下りる。基本一本道のようで、通路と大部屋を交互に繰り返しつつ、下への階段に辿り着く。

「何だあれ……」

通路の先に、奇妙なものが浮いていた。半円状のドーム頭に逆三角形の胴体という代物が、宙に浮いている。ドーム頭の真ん中には赤い目のような球形がついている。

「ゴーレムみたいだな」

カマルが言った。ソウヤは眉間にしわが寄る。

「ゴーレム? あれが?」

手も足もないゴーレムというのは馴染みがない。もっともカマルの見た感想だから、本当にそれがゴーレムかもわからない。

「ミスト、あれは何かわかるか?」

「さあね。前に覗いた時は、あんなものはなかったわ!」

――それって、敵かもしれないってことか。

それとも、本当にエルフたちが隠れていて、その防衛用に設置されたトラップの類いとか。

「気をつけろ!」

ドーム頭の目のような部分が光った。次の瞬間、赤いビームじみた魔法弾が飛んできた。

とっさに回避――!

メリンダが盾で魔法弾を防ぎ、レーラを守った。

「撃ってきた!」

「くそがっ!」

ソウヤはアイテムボックスから斬鉄を抜くと、それを思い切り投げた。豪腕をもってぶん投げられた大剣は、ドーム頭と逆三角形の胴体を真っ二つにして、スクラップにした。

「何だってんだ……」

ミストとフラッドが、すぐに壊れた浮遊物のもとに行ったが、それは塵のように消えた。

「何だと思う?」

「召喚生物、いや使い魔だったかもしれないでござるな」

フラッドは舌をチロチロと覗かせた。

「しかし、どうにもエルフが使うモノとは違うもののように感じるでござる」

「確かに。エルフらしくないわね」

ミストも同意した。よくわからないものだが、とりあえず撃破したようだった。そのまま次のフロアに行くと、空っぽの棺が等間隔に並んでいる大部屋に出た。ここは特に異常はなさそうだった。

道なりに警戒しながら進む。カマルが口を開いた。

「不謹慎かもしれないが……緑の墓所という割に、これといって緑の要素が皆無なのは気のせいだろうか?」

「石造りで、普通に遺跡っぽいもんな」

「種族的な意味合いじゃないでしょうか」

レーラが視線を周囲に向けながら言った。

「エルフにとって、緑というのは象徴の色だと聞いたことがあります。緑=エルフとして見れば――」

「なるほど、エルフの墓所か」

ソウヤは納得した。もちろん、エルフ本人から聞いた話ではないので、たぶんに憶測だが。

ソウヤたちは先を行くが、攻撃してくるものもなければ、不審物もなかった。ただ空っぽの棺ばかりと遭遇するのは、気分的に滅入ってくるものがある。

前回、遺体がなくなったということで、騒動になっていたが、どこへ行っても、空の棺ばかりぶつかる。

「この墓所の遺体、全部持ち出されたのか?」

「絶対まともじゃありやせんぜ」

オダシューが胸糞が悪いとばかりに顔をしかめた。

「しっ」

ミストが、静かにと指を上げた。

「何かいる。この奥に」

ドラゴンの気配察知が何かを感じ取ったのだ。

「エルフか?」

「わからない。ひとり……? いえ、これは!」

ミストが一瞬驚いた。

「どうした?」

「複数の生命を感じる。でも、眠っているのかしら? 動いているのはひとりだけみたい」

エルフが管理している墓所にいるとしたらエルフくらいだが、どうにも不可解だった。

ソウヤたちは踏み込んだ。

そこにいたのは、ひとりのダークエルフ魔術師と、虚ろな目で佇む無数のエルフたちだった。