軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第601話、魔王軍艦隊、現る

「ジーガル島が攻撃されている、だと?」

魔王軍ラトロー艦隊司令官、シャスワスト将軍は眉をひそめた。

デーモン・ジェネラルであるシャスワストは、灰色肌の老人の姿をしているが、その目は鋭く、周囲の屈強な魔族兵たちさえ畏縮させる。

「大陸侵攻軍への増援と向かわされてみれば、それどころではないのではないか? ん?」

ここ最近、大陸侵攻軍から音沙汰がないことが魔王軍の上層部にも伝わり、問題となっていた。

それまでの報告では、侵略準備は順調。人類側は反撃態勢すら整っていない、だった。だが、それが突然パタリとやんで、連絡が取れないのはさすがに放置もできない。

非常時の魔法通信機は繋がらず、二度ほど確認に連絡船を送ったが、こちらも行方不明となった。

偶然にしては出来すぎていると、シャスワスト将軍は思っていた。

魔王軍は、大陸侵攻軍に何かあったとみて、ラトロー艦隊を増援という名目で派遣を決定した。

何もなければよし――前後の状況を考えれば、何かあったのは間違いないが、ここで大陸侵攻軍を叩かれたなどは想像したくない状況だった。

――その万が一に備えて、わしの艦隊が送られたのだ。

想像したくない云々は、現実の前には無情である。あり得ないが、何もなかったなら、そのまま大陸侵攻軍を増強するだけで済む。

魔王の魔族統一が時間の問題となった今、大陸侵攻軍を強化するのは、布石となるだけで何の問題もないのだ。

「ジーガル島がやられているということは、人間どもの動き、こちらの予測を遥かに超えているのではないか?」

すでに人類側は、魔王軍と戦える状況になっているのではないか?

――ドゥラーク閣下が立たれるのが遅かった……。

いや、魔王不在の間、魔族も一枚岩でなかったのが原因か。それがなければ、敵に先手を取られることもなかった。

「将軍閣下! 如何いたしますか!?」

ラトロー艦隊旗艦プルプレウス号の魔族艦長が姿勢を正した。シャスワスト将軍は口を動かした。

「まずは、ジーガル島をやった連中を血祭りに上げる。全艦、上空の敵船へ突撃を敢行せよ!」

・ ・ ・

「魔王軍だと!?」

レッドグループ旗艦『グローム』。グニェーブ将軍は望遠鏡を目に当てる。

「むむっ! かなりの数がおるぞ! 全艦反転! 応戦だー!」

「しかし、閣下! 敵船はざっと4、50隻は――」

「構わん! 魔族どもを叩き潰すのだ!」

ニーウ帝国艦隊12隻が、針路を魔王軍艦隊へと向ける。

ゴールドグループの旗艦であるプラタナム号で、ソウヤは状況を確認する。

「敵は50隻」

『識別によれば、敵は標準型クルーザーです』

プラタナムは報告した。表示されたデータによれば、ここのところお馴染みのアラガン級クルーザーである。

というより、これ以外のタイプを、ソウヤたちは見たことがなかった。

ミストが口を開く。

「ソウヤ、もちろん――」

「こいつらと戦うぞ!」

ソウヤは即断した。フィーアが確認する。

「よろしいのですか? 敵は有力な艦隊のようですが」

優勢な敵勢力との交戦。数の上では、数隻の差で人類軍が上回っているが、敵クルーザーより小型のフリゲートや輸送船を含めてなので、決して有利とはいえない。

正面からぶつかれば、相応に被害はでるだろう。戦いはまだ初戦だ。ここで損害を多く出してしまうと、今後の戦いにも影響を与えかねない。だが――

「こちらには、元々、戦う以外の選択肢はないんだ」

何故なら、島に攻略部隊が上陸してしまったから。地上が壊滅状態だから、人類軍上陸部隊は、その占領地域を広げている。

ここで撤退を選択するならば、上陸部隊を引き上げさせる必要があり、その時間稼ぎのため、結局、艦隊は戦わなくていけない。

飛空艇艦隊が、ここで戦う以外の選択――逃げるを選ぶなら、上陸部隊を見捨てることになる。それで艦隊が生き残っても、人類国家間の結束は崩壊。指揮をとったソウヤの信用は地に落ちるだろう。

「フィーア、連合各グループに伝達。レッド、ブルーグループは、敵艦隊を挟み込むように機動し、砲撃。ゴールドは、敵正面を引き受ける!」

「了解」

「グリーングループは、ブルーグループの援護。イエローはレッドの援護だ。シルバーグループは上陸部隊を援護」

矢継ぎ早に指示を出しつつ、ソウヤはプラタナム号の操縦桿を握った。

「プラタナム号は、敵艦隊に突っ込んでかき回す! ミスト、甲板からブレスを撃つ仕事があるけど、頼めるか?」

「まっかせなさい!」

戦いを楽しんでいるところがあるミストである。魔族への怨恨のある彼女に、この手のお願いは積極的に聞いてくれる。

「プラタナム、指揮のサポートをよろしく。オレは操縦に集中するわ」

『了解』

「さあ、行くぞ――!」

プラタナム号は加速した。人類側飛空艇で最速の勇者遺産、その白銀の船体を煌めかせて、魔王軍艦隊へと突進した。

・ ・ ・

「ゴールドグループ、敵艦隊へ反転!」

「こちらも続くぞ。全艦、対艦戦闘用意!」

ブルーグループ、エンネア王国艦隊旗艦『ヒエレウス』号で、ハングマン提督は指示を出した。

すでにレッドグループは動いていた。人類連合艦隊の指揮を取る、勇者ソウヤも、出現した敵艦隊との戦闘を選んだ。

そうとなれば、この劣勢にも見える戦場も戦わないといけない。

「初戦だ。大きな損害を出したくないのだがな……。敢えて真ん中を行く、か。勇者らしいな」

勇気と無謀を履き違えてはいけない、とよく言うが、勇者にとっては、こういうのは日常茶飯事だったのだろう。10年前、わずかな戦力で魔王軍に立ち向かい続け、そして生き残った男。

「……まったく。頼もしいじゃないか」