軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第570話、交渉の順番

銀の翼商会はニーウ帝国を離れて、エンネア王国へと飛んだ。

王都ポレリアの王城で、ソウヤとジンは、さっそくアルガンテ王と会談。リッチー島傭兵同盟に加え、ニーウ帝国が保有する飛空艇を全て出して、ジーガル島攻略に参加する意向であることを報告した。

「王国が何隻船を動員してくださるかにもよりますが、もし主力である10隻を投入していただきましたら、総勢40隻を超える艦隊となります」

ジンが数字を出す。アルガンテ王は腕を組んだ。

「ふむ、それだけあれば、飛空艇の数としては不足はないか……」

「魔王軍の大陸侵攻軍は拠点を失っています」

ソウヤは事実を告げた。

「ここで兵器の建造拠点を叩ければ、人類側に必要な時間を稼ぐ助けにもなると思います」

「さらにこちらに有利な点があります」

老魔術師は付け加えた。

「ソウヤが言った大陸侵攻軍の拠点の壊滅を、まだ魔王軍が知らない可能性があることです。つまり、ジーガル島までの飛行ルートにおいて、魔王軍の妨害戦力が大きく削がれている」

「道中が手薄な今が、攻め時ということだな? ジン殿」

「はい。魔王軍もいずれ気づくでしょうが、充分な戦力を送ってくるにしても時間は掛かります。どうせ攻略するつもりのジーガル島です。早ければ早いほどよいでしょう」

「わかった。将軍たちを集め、すぐに会議を開く」

アルガンテ王は決断した。

「我がエンネア王国もジーガル島攻略に参加する!」

ニーウ帝国に続いて、エンネア王国の参加もほぼ確定した。何隻出してくれるかまだ決まっていないが、当初思い描いた戦力は近い数は揃うだろう。

詳細は、また後で詰めるとして、ひとまずアルガンテ王との会談は終了。

「ふたりともご苦労だった。……あぁ、それと、ソウヤと面談を求めているレプブリカとクイント王国の使者殿が待っている、話を聞いてやってくれ」

「承知しました、陛下。わざわざ我々のために会談の場を設けてくださり、感謝致します」

レプブリカとクイント王国は、ソウヤたち銀の翼商会はまだ訪れていない国である。そことの交流の伝手がなかったのだが、向こうからやってきてくれたのは話が早い。

しかも会談の場所まで提供してもらえたのだから、商人としては非常にありがたかった。

「貴様たちには世話になっているからな。それに、魔王軍とのことを考えれば、これは必要なことだ」

任せたぞ、とアルガンテ王は退出した。ソウヤとジンも場所を変える。

「さて、これは商談と見て、いいんだろうね?」

「まさか挨拶だけではあるまい?」

ジンはローブの袖に手を入れた。

「ビッグビジネスの予感がするね」

「飛空艇だろうな……。爺さん、リッチー島の工房で足りるかね?」

「そちらは心配しなくていい」

ジン・クレイマン王は微塵も不安がなかった。

「トルドア式の船にはまだまだ余裕がある。なければ作ればいい」

「あんたがいなけりれば、こうはいかなかった」

ソウヤはしみじみと言った。

「今頃、飛空艇を探して世界中を駆け回っていたか、銀の翼商会だけで魔王軍に挑んでいただろうな」

「なに、私も君の銀の翼商会があったからこそ、大昔の掘り出し物を国々に供給できるのだ。持ちつ持たれつ、だよ」

「そう言ってくれると気が楽になる」

ソウヤは心底そう思った。ジンは片方の眉を吊り上げた。

「何か気に病んでいたのかね?」

「いや、最初に飛空艇を大量に入手するために、爺さんのコレクションに頼ろうとした」

「お金を払って、だな」

「ああ。だが、爺さんはコレクションではなく、保管してあったトルドアの遺産を俺たちに提供した。支払うつもりだった金を俺たちは出すことなく、しかし船は普通に金を取っている」

ソウヤは口元が歪んだ。

「何か、いいのかなって」

「そんなことか」

くだらない、とジンは一笑に付す。

「ダンジョンで見つけた貴重品を売るのと一緒だよ。サルベージ屋とかジャンク屋のようなものだ。まさかダンジョン産のものをお金を出して仕入れてはいないだろう?」

「確かに」

「狩った魔物肉だって、お金を出したものではない。そこにいて、自分の手で手に入れたものだ。それをどうしようと手に入れたものの自由だと思うがね」

ジンは片目を閉じた。

「さっきも言ったが、君のおかげで、私はクレイマン王として軍を率いて介入しなくて済んで、助かっている。伝説のクレイマンの軍勢が参戦すれば、その莫大な財宝を求めて、人類側にも足を引っ張ったり、余計な策謀を巡らす者が現れるだろうからね」

「持ちつ持たれつ、か」

「お互いに利用しているんだよ。それでいいんだ」

さあ、行こう、と老人はソウヤの肩を叩いた。

・ ・ ・

「はじめまして、レプブリカの辺境伯ルス・ボラスです。勇者殿の噂はかねがね」

レプブリカ国の貴族であるルス・ボラスは、八の字ヒゲのダンディーな人物だった。三十代で中々スマートだ。

「クイント王国のジュメッリ伯爵である。勇者ソウヤ、まさか本当に生きていたとは驚きだ」

クイント王国の貴族であるジュメッリは、丸顔で、頭頂部がやや薄い。体つきはがっちりしている。こちらも三十代といったところか。

「ご確認しますが、お二方とも、国の代表として来られたと解釈してよろしいですか?」

個人的な都合で来たと国の代表で来たでは、だいぶ話も変わってくる。

「その通りです、ソウヤ殿」

ルス・ボラスは鷹揚に言った。

「単刀直入に言いまして、我が国にも飛空艇を売っていただきたい」

「左様。我がクイント王国もである!」

ジュメッリはきっぱりと言うと、ルス・ボラスを睨んだ。どちらが先に交渉するかで、牽制しているのだろう。

国の代表として来ているのだ。手ぶらでは帰れない。そして間違っても、他国は目的のものを得られて、自分の国が得られなかったという事態は、是が非でも避けなければならない。

しかし、国の機密にかかわることも含まれるから、他国の使者の前では交渉しづらいところもあるだろう。

両方同時というのは難しいが、一国ずつとなれば、どちらか先に交渉するかで揉めるパターンである。

先手を取られた結果、品切れで買えませんは洒落にならないから。どちらも自分が先に、と言ってくるに違いない。