軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第552話、強襲、センペル号

飛空艇センペル号に衝撃が走った。艦長室で寝ていたコマンダー・カラガンは飛び起きる。

今の揺れは何か?

尋常なものではない。船が衝突したような振動だったが――

『敵襲ーっ! 敵襲ーっ!!』

外から聞こえてきた声に、カラガンはすかさず武器をとった。

秘密拠点が破壊されてから、生き残りたちの上級指揮官として処理をし、ようやく眠れると思った矢先だった。

「それにしても、敵とはいったい何者だ……?」

大陸侵攻軍の拠点を襲撃した組織だろうか。その正体は不明だったが、それがセンペル号を襲ってきたのか。

外に飛び出す。

甲板ではすでに敵兵が乗り込んでおり、戦闘となっていた。しかしそれよりも――

「なんだ、この霧は!?」

船の周りが真っ白であり、僚艦の姿も見えない。下手に動けば、衝突してもおかしくないほどの濃霧である。

これでは味方の援護も救援も不可能ではないか。見えるのはセンペル号とそれに接舷している飛空艇が1隻のみ。

「この霧の中で接舷戦闘を仕掛けてきただと!?」

あり得ないという思い。しかし現実に敵は乗り込んできている。

リザードマン兵やオーク兵が応戦する中、敵はカボチャの被り物をしていて――

「ふざけているのか!?」

パンプキンヘッドが襲いかかってくる。斧を躱し、とっさにそのカボチャ頭を掴むと船の外へと投げ飛ばす。……思ったより軽かった。

「むっ」

「お命頂戴!」

人間の女が、凄まじい殺気とともに片刃の剣で斬り込んできた。とっさに剣で防ぐが、意外と重い踏み込みに、体勢が崩れそうになる。

「人間……!」

カラガンは目の前の敵を睨む。

秘密拠点を攻撃してきたのは人間たち。どこの組織か知らないが、魔王軍に対抗する勢力の者だろう。

「貴様らはどこの者だ!?」

カラガンは声を荒げる。女剣士はにたりと笑った。

「海賊でござるよ」

女剣士――椿は再度、刀で突いてくる。

「お主らの敵でござるぅー!」

切っ先が、カラガンの手にしていた剣を引っかけたかと思うと、素早く振り払い、その手から剣をもぎ取った。

「指揮官殿とお見受けいたしたでござる。これで丸腰でござるなぁ……とっ?」

カラガンはもう一本剣を取った。予備を持ち歩く男なのだ。

「面白いでござるな」

「何がおかしい!?」

カラガンは椿から異様なプレッシャーを感じた。何故、この女は楽しそうなのか? おぞましく、そして気持ちが悪かった。

・ ・ ・

エイタの金棒が、巨漢のオークを殴打し、落下防止用の柵ごと破壊して船外へ弾き飛ばした。

「邪魔者は船から叩き出すに限る」

その手に持つ金棒からすると、エイタは小柄に見えてしまう重量武器である。常人では持って振り回すことができるか怪しい代物も、改造人間である彼には木製のバットを振り回すが如きである。

斬鉄でリザードマンを真っ二つにした豪腕勇者のソウヤは、唇の端を吊り上げた。

「学生時代は野球をやってたのか?」

「あいにくと帰宅部でね」

エイタはブリッジに乗り込み、まとめてかかってきたゴブリンを横薙ぎで一掃した。これはひどいホームラン。よくもまあ、船上で大物を振りまわせるものだ。

「意外に思うかもしれないが、小説を書いていた」

「意外過ぎる!」

ソウヤは操舵輪を握っていた魔族兵を睨む。その魔族兵は腰から下げていたショートソードを握ると、ソウヤに挑んできた。

――狭い船の上だから、大物は振り回せないと思っている?

突っ込んできた魔族兵に、斬鉄を突きの状態で突き出す。すると敵兵が自ら斬鉄の切っ先に突っ込み腹を打っている。

――振り回しにくいだろうが、突くことはできるんだぜ?

「うおおおりゃ!」

そのまま力任せに押し出せば、魔族兵は腹を突かれて吹っ飛ぶ。

「指揮官はどこだ!?」

「こいつじゃないか?」

エイタが、倒した魔族兵――いや艦長か、身なりの上等な魔族を金棒で床に押さえつける。

「艦長っぽいな。……だがオレたちが目星をつけた奴じゃないような……」

「ソウヤー」

ブリッジにひょいとミストがジャンプで乗り込んできた。彼女の持つ竜爪槍は、今日も魔族兵の血で濡れている。

「見つけたわよ。ツバキが指揮官を捕まえたわ」

「おう、上出来だ」

ブリッジには、動ける魔族兵はいない。甲板上の戦闘は、上陸班がほぼ制圧したようだった。

ソウヤはホッとする。エイタが口を開いた。

「――それで、お前さんは何のスポーツをやってたんだい、ソウヤ?」

「スポーツ?」

「お前さん、ガタイがいいからな。絶対何かやってたろ」

「よく言われるんだがね……。部活はやってなかった」

実際、筋肉がついて豪腕を自覚したのは、この世界にきて勇者を始めてからだったりする。

「嘘だろ」

「いいや。ひと通りできたんだけど、これってのがなくてな」

バスケもバレーも野球もサッカーも――と考え、チームスポーツばかりだったと思い至る。

その時、霧の中で雷鳴が轟いた。ソウヤは気配に気を配る。

霧中で、何かが起きている。