軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第527話、カボチャ、カボチャ、カボチャ

ソウヤはエイタの案内でサフィロ号の船内を行く。

「カボチャだ」

山となっている黄色いカボチャ。

「本当にカボチャばかりだな……」

「カボチャなら、魔力と引き換えにいくらでも作れるからな」

エイタは自動販売機みたいな機械の前に立った。

「こいつが、自動カボチャ製造機。古代文明の遺産なのか、それとも異世界の渦に巻き込まれてきた異物かはわからん」

霧の海世界での航海の途中で、手に入れたのだという。

「色んなものが流れ着くんだな」

異世界の渦に乗ってやってきたエイタたち。ソウヤにはよくわからないが、そう異世界から色々来たりするのは、相当安定していない世界なのではないかと思った。

「このカボチャは食べても大丈夫なのか?」

「ああ。俺たちの主食だよ。できれば他のものが食べたいと思うくらいには、飽き飽きしている」

「じゃあ、うちで販売しよう」

いくらでも手に入るなら、仕入れに金は掛からない。

「食用のモノならいくらでも持って行っていいぞ。その代わり、他の食材をくれると嬉しい」

「手配しよう」

ソウヤたちは進む。エイタは言った。

「こっちが食えないほうのカボチャ」

「わぁ……」

ハロウィンのお化けカボチャがところ狭しと置かれた部屋だった。目と口の部分がくり抜かれた黄色いカボチャが、棚に並んでいて、さらに天井からもいくつかぶら下げられている。

「夜中に来たら、こいつら動き出しそう」

「戦闘時になれば、動き出すぞ」

エイタは腰に手を当てた。

「こいつらはうちの戦闘員だからな。パンプキンヘッド――陸戦要員だな」

「動くのか、これ?」

「ああ、うちのとある魔術で、頭から体と手足が出て、斧を手に敵船に乗り込む。人形みたいなものだから、いくらやられても平気な殴り込み要員だ」

「ホラーだな」

斧を持ったハロウィンカボチャなんて、スプラッターでホラーである。

「おや、お客さんかな」

奥から男の声がした。色白でひょろ長い男がフラリとやってくる。お化け屋敷で働けそう、と思ったソウヤだが、さすがにそれは言わなかった。

「ジャック。こちら銀の翼商会のソウヤだ。俺たちのスポンサーだぞ」

「そりゃどうも。ジャックでもジャッコでも好きなように呼んでくれ」

こんにちは――挨拶を交わし、握手はしなかった。ジャックは小さく首を振った。

「あんたは眩しい人だ」

「初対面でそう言われたのは初めてだ」

「あー、気を悪くしたら謝るよ」

「いや、そういうんじゃないから問題ない」

ジャックは、外に出ないのか肌が白かった。目元にくまができていて、あまり健康的とは思えなかった。背は高いが、痩せすぎな印象を与える。

「なあエイタ。ジャックさん、働かされ過ぎに見えるぞ。ちゃんと休ませてやっているのか?」

「これがデフォだよ。血色のいい彼は俺も見たことない」

エイタは肩をすくめた。

「戦闘時以外は、基本、船首でぼーとしている」

「あと、カボチャを作ったりとか」

ジャックは、彫りかけのカボチャ頭を取る。

「できれば、カブがいいんだがね。ここにはカボチャしかないんだ」

「カブ?」

「ハロウィンのカボチャの元祖はカブだってネタだよ。彼はオリジナルに忠実なんだ」

「何の話だ?」

エイタの補足は、残念ながらソウヤには理解できなかった。

「まあ、よかったじゃないか、ソウヤ。ジャックが眩しがるってことは、あんたは進むべき道がわかっていて、そこをしっかり歩いているってことだ」

「……さっきからよくわからないんだが」

「あんたにアドバイスはいらないってことさ」

エイタはソウヤの肩を叩いた。

「迷わず、そのまま進めってことさ。いや、そもそも迷っていないってことなんだろうな」

「……」

「そんな顔をするなよ。もし何をやればいいかわからなくなったら、ジャックに相談しろ。こいつは道を示してくれる」

その後、船内を見て回る。小さな食堂、クルーたちの船室、倉庫などなど。

「宝物庫?」

「海賊だからな」

エイタはしれっと言った。

「これまで襲った船で金になりそうなものを貯めてある。宝石、金貨、魔法の道具や希少な武具、財宝……。まあ、そんなところだ」

金目のものは宝箱にしまってある。それがいくつもあるのだから、相当な金額になるだろう。

「必要な物資を調達するために、換金するんだがね。……こっちの活動資金獲得のために、ソウヤんとこで処理してもらうことになるから、まあその後は好きに売って稼いでくれ」

「なるほどね。それで見せてくれたわけね」

要するに両替代行だ。

続いて、サフィロ号の武装を見せてもらう。メインとなるのは電撃砲。型は違うが、こちらの世界でも発掘飛空艇と共によく発見されているから、まったくのオーパーツというわけではない。

「船首には遠隔誘導魚雷の発射管が4門ある」

「魚雷って、あれだろ? 水の中を進むやつ」

「そうそう。地球じゃそうだった」

海の中を高速で進んで、敵船の船底に穴を開けて、浸水、そして沈没させる武器。

「霧の海世界じゃ、雷魚って魚をぶっ放すんだが――」

何でも、空を飛ぶ魚の一種で、硬い物体に体当たりする習性があるらしい。霧の海世界では敵船を攻撃する誘導兵器として使われていたという。

「さすがに動物を武器に、っていうのは俺の性に合わないんで、カボチャを飛ばすことにした」

「は?」

「要するに、パンプキンヘッドと同じさ。カボチャ頭を操るように魔術で魚雷を誘導して、敵船にダメージを与える」

エイタの説明に、ソウヤはなるほどと頷く。

遠隔で操作できる飛び道具。エイタたちの使うそれは、実質魔法だ。誘導が魔法という名の人力なら、魔術師にもできそうではある。

――まあ、うちの場合、ドラゴンさんがブレス吐いたほうが圧倒的に早いだろうけど。