作品タイトル不明
第502話、帰還、ゴールデンウィング二世号
魔力通信機が久しぶりに銀の翼商会からの声を届けた。
『あー、旦那。元気にしてるか?』
「ライヤーか。こっちは皆、元気に過ごしているよ。そっちは?」
ソウヤが答えれば、通信機の向こうでライヤーが笑った。
『まあ、大きな事故もなく、怪我人は……まあ、訓練中に馬鹿やった奴はいたけど、治療も済んでるし、問題はないな。欠員なしであります、商会長殿!』
「そいつは何よりだ。……こっちへ来ているのか?」
『ああ、間もなく到着する。で、着く前に確認しておこうってわけだ。もし今、そっちに魔王軍の飛空艇が来ていていたら、鉢合わせしないようにと思ってな』
「賢明な判断だ。少し前に連中の飛空艇が来た。今はもう出て行ったから、ダンジョンの中に敵の船はいない。……外は知らん」
『了解。魔力レーダーにも偵察でも、敵の反応はなしだ。じゃあ、そっちへ向かう。土産話に期待してくれ』
通信が切れる。
ソウヤは、隠れ家にいる面々に振り返った。
「間もなくゴールデンウィング号が来る。この隠れ家生活も、じきに終了だ」
「少し寂しいですね」
レーラは微笑した。
「でも、皆さんにまた会えるのはうれしいです」
「楽しかったー」
フォルスは相変わらずだった。祖父祖母の実家に帰省した孫みたいな感じかもしれない。
ミストと影竜は、魔王軍飛空艇の追跡を継続中。リアハとメリンダは捕虜の件で少々ピリピリしているが、今は魔王軍拠点のほうへ注意がいっている。
ソウヤは、ヴィテスを見た。
「爺さんと話をしないとな」
「うん……」
ヴィテスが年齢不相応に賢くなったこと。それがソウヤや影竜が知ったことを、ジンに伝え、今後の方針について整理しておくべきである。
本当なら、影竜とジンで話をつけるのが自然で、自分が出しゃばるものではないとソウヤも思うところもあるが――
「お父さんがそう言うなら」
これである。ヴィテスの今後の『お父さん』呼びに対しても、相談しておくべきだろう。
・ ・ ・
ゴールデンウィング二世号がダンジョンにやってきた。
隠れ家の上にあがって、降りてくる飛空艇を見やる。
外装に損傷の跡など見当たらず! 無事な船の姿にソウヤは安堵した。一週間程度離れていたが、愛着はあるもので懐かしき我が家に帰ってきた気分になる。
飛空艇に戻ると、商会の主な面々が出迎えた。
「お帰りなさい、ソウヤさん」
「ご無事で何よりでした、ソウヤ殿」
セイジやイリクが笑顔を向けてくれば、オダシューやカーシュ、カマル、フラッドも帰還を喜んだ。
「リアハー!」
ソフィアがリアハと親愛のハグを交わしていた。二人は親友らしいから、お約束かもしれない。
――親友っていいものだよな!
「お帰り、ソウヤ」
「待ってたぞー。今日は焼き肉パーティーだ!」
クラウドドラゴンとアクアドラゴンまで出迎えの列に加わっていた。……アクアドラゴンの目当ては料理のほうだったが。
ソウヤはクラウドドラゴンに頭を下げた。
「留守中、ありがとうございました。守護竜様」
「……誰から聞いた? いや、まあ影竜かミストだろう」
クラウドドラゴンはどこか決まり悪げに視線を逸らした。
「ソウヤがいない間、特に問題はなかった」
「それは何よりでした」
お礼は言っておく。何事もなく、仲間たち全員と再会できたことは喜ばしいことだ。いくら感謝しても悪いことはない。
「よう、旦那。お帰り!」
「ライヤー!」
船橋から降りてきたライヤーが手を挙げたので、ハイタッチをしてやる。すると様子を見ていたフォルスが「ボクもボクもー」と言うので、ライヤーはハイタッチしてやった。
「ソウヤ」
「爺さん、元気そうだな」
後から現れた老魔術師に、ソウヤは笑みを向ける。
「オレのいない間、商会を預けてすまなかったな」
「謹んで、君にお返しする。報告は山ほどあるが、君のほうはどうだね?」
「ミストと影竜の魔力眼が連中の飛空艇を追跡している。もうじき連中のアジトのひとつが明らかになる」
「それは素晴らしい」
「魔王軍のことも色々わかったことがある」
「それは興味深いな、ソウヤ」
カマルが話に加わってきた。さすが情報畑の人間である。
「ああ、お前もぜひ知りたいだろう話もある。……それで、爺さん、どっちから報告する?」
「私たちの方から先がよかろう」
ジンは顎髭を撫でた。
「業務報告をさっさと済ませて、魔王軍関連の話をしたいところだし」
「じゃあ、そうしよう」
ソウヤは頷いた。
・ ・ ・
アイテムボックスハウスに戻るのも久しぶりだった。
ソウヤがいない間、銀の翼商会の面々が使えないのは人数の観点から大問題なので、出入り口をゴールデンウィング号に固定しておいたのだ。
もっとも、ソウヤ自身、裏口を作ることは簡単だった。しかし隠れ家での生活があまりに快適だったので、慌てて戻る必要性を感じなかったのだ。
銀の翼商会側はジン、カマル、クラウドドラゴン。ソウヤのほうはレーラ、ミスト、影竜、ヴィテスが参加した。
「ルガードークの商業ギルドと、木材の販売契約を結んだ。こちらで手に入れたダンジョン木材の質のよさにだいぶ気をよくしてくれていた」
ジンの報告に、ソウヤは相好を崩した。
「そいつは何よりだ」
「さっそく飛空艇の建造を各造船施設で始めた。ただし、船の所有について君に言っておかねばならないことがある――カマル」
「魔王軍が大量の飛空艇を保有し、戦争準備をしている件をエンネア王国に報告した」
カマルは真面目な顔で言った。
「それを受けて、王国から銀の翼商会がルガードークに依頼した飛空艇を買い上げたいという打診があった」
「元々、君は船を王国に売るつもりだったが――どうするね?」
ジンはソウヤに確認した。