軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第500話、捕虜尋問その2

ソウヤは、ズィトンと名乗った魔族士官と向き合う。

「あんたは話ができそうだな」

「どうかな。私は所詮、下っ端士官に過ぎん。大した情報は持っていない」

「いや、そういう意味じゃなくて、普通に会話できそうだって意味だ」

ソウヤが訂正すると、ズィトンは表情を変えず、じっと見つめてくる。

「君は落ち着いているな」

「そうかい? オレにはあんたも、かなり落ち着いているように見えるぜ?」

「この顔は生まれつきだ。コルドマリン人は表情が変わらないとよく言われる」

「コルドマリンっていうのか、あんたら」

「……」

ズィトンは口を閉じた。ソウヤは言った。

「いいな。時間はある。もっと話してくれ」

「……」

だんまりか――ソウヤが思った時、またもズィトンの視線が隣のヴィテスに向いた。

彼は小さくため息をつく。

「わかったから、そう、頭の奥に念話圧縮を掛けないでもらえないか、お嬢さん」

「ヴィテス、お前何かやってる?」

「脳に直接呼びかけている」

ヴィテスは淡々と言った。無表情なのは、彼女も負けていない。

「しかも大音量でドンと来る」

ズィトンの表情がここにきて曇った。

「ただの人間ではなさそうだが……そういえば先ほどドラゴンも見た。あれはお嬢さんか?」

「違う」

ヴィテスはそれっきり口を噤んだ。ズィトンはソウヤに向き直った。

「それで私は何を話せばいいのか?」

「魔王軍の情報。アジトや攻撃の計画。お前たちの指揮官が、どう人類と戦っていくかなどなど」

「そう簡単に話すと思うのか?」

「……話してくれれば手荒なことをしなくて済む」

後ろで音がしたので、振り返ればリアハが刺すような視線でズィトンを凝視していた。

「そちらの娘は、私への敵意が凄まじいな」

「魔族を憎んでいる人間は多いってことさ。あんたたちだって人間を憎んでいるだろ?」

「そうだな。人間は魔族と見れば問答無用に襲い掛かってくる。野蛮で好戦的な種族だ」

「それはあなたたちの方でしょ!」

リアハが激昂した。

「人と見れば襲いかかって、奪い、殺していく残忍で冷酷な悪魔っ!」

「……」

「――まあ、互いにそういう感情を抱いているし、リアハの言うことは間違っていないし、あんたの言うことも多分そうなんだろうと思う」

ソウヤは腕を組む。ズィトンは僅かに首を傾けた。

「否定しないのか? そこの娘のように、はっきり拒絶するかと思ったが」

「間違っていないからな。オレだって、武装した魔族兵を見かけたら、まずぶっ倒すことを考える。端から見れば野蛮に見えるかもしれない。もっとも、あんたもあの野営地の周りで人間を目撃したら、襲うか捕まえようとしたんじゃね?」

「……否定できないな」

ズィトンは視線を彷徨わせた。

「意外だ」

「何が?」

「人間と、こうして話していることがだ」

ズィトンは考え深い顔になる。

「我々の間では、こう言われている。人間は残忍であり、囚われたならば四肢を切り刻まれ、なぶり殺しにされる」

「うわぁ、否定できんな。その認識はたぶん、間違ってないと思う」

ソウヤは頭を掻いた。そういう残忍な尋問の場は、何度か目にしている。戦闘後で殺気立っているということもあれば、自分や仲間を殺そうとした相手に怒りをぶつけてしまうということもある。

「しかし、貴殿はそうはしなかった。理性的に、私と対話しようとしている」

「暴れないなら、オレはそんなことはしないさ」

ソウヤはリアハへと視線を向ける。

「な? しないよな」

ぐっ、と彼女は唇を引き締めた。ソウヤがいなければ、手荒な復讐ももしかしたらしていたかもしれない。尋問の形も剣で殴るなど、暴力もあったに違いない。

「まあ、本音を言うと、オレが本気で殴るとたぶんあんたを殺してしまうから、かな」

「ほう……」

「パワーだけは自慢だからな。オレが殴っても無傷で居られたのは、魔王くらいなもんだろう」

「偉大なる魔王様を例に出すか。まるで勇者ソウヤのように言うのだな」

「そう、オレがその勇者だったソウヤだ」

「貴殿が勇者?」

「そう名乗っただろ?」

「……てっきり偽名かと」

ズィトンは目をパチパチと瞬かせた。

「勇者は魔王様と相打ちになったと聞いた。貴殿ら人間の社会でもそうではないのか?」

「一般にはそうなっていたらしいな。オレは十年ほど寝ていただけさ。……それで偽名かと思ったのか?」

「魔族には本名を名乗る必要はないから、ハッタリの意味も込めて、勇者の名を名乗ったのかと思った」

本名を名乗ったのに、嘘と思われていた。ソウヤは首を振り、レーラは忍び笑いを浮かべる。

「まあ、いいや。そろそろ本題と行こう。魔王軍の話をしようじゃないか」

「……」

「お前たちは飛空艇でやってきたが、どこから来た?」

「……」

ズィトンは黙り込む。

魔王軍の情報は渡さないつもりなのだろう。腐っても現地指揮官である。そうベラベラと軍の情報は明かさない。

「さっきまでは話してくれていたのにな」

「敵に情報を売るとでも? 貴殿にこちらの内情を話せば、それを利用して攻めてくるだろう?」

「そうだな。おたくら魔王軍が人類に攻撃を仕掛けようとしているんだ。阻止するために先んじて潰そうって考えるのも自然なことだろう?」

「……」

「なあ、ズィトン。話をしよう。どうぜ、時間はたっぷりあるんだ」

ソウヤは手を広げた。

「本当のところを話してくれたら、釈放してやるからさ」

「!?」

「ソウヤさん!」

リアハが叫んだ。ソウヤは彼女に手を向けて黙らせながら、ズィトンに言った。

「オレに今話さなくても、後からやってくる仲間が、あんたが恐れているような尋問で、無理矢理情報を引き出そうとするだろう。……まあ、たぶんそこであんたは死ぬだろう。人間たちはあんたが言うように敵に対してはとことん冷酷になれるからな」

吐いて楽になれ。